032 坑道のダンジョン
翌朝、ミナト達はバルドの屋敷をたずねる。
すると屋敷の前にはすでにクレイグたちの姿があった。
「今日はよろしく頼んだぞ。追加依頼の件と新ダンジョンについては、王都のギルドに私から手紙を出しておこう」
「これ、お弁当もっていって!じゅうぶんに注意するんだよ」
バルドも奥さんも快く送り出してくれた。
クレイグも加わり再び四人で昨日のゴーレムのいた広間を目指す。
鉱山へ入り、坑道を進む、しばらくたつと彼らの視界に広大な空間が広がった。
昨日、アイアンゴーレムとストーンゴーレムたちが鎮座していた大広間だ。
しかし、そこにゴーレムたちの姿はもうない。
ただ、巨大な空間の中央に、ぽっかりと口を開けた、地下へと続く階段が残されているだけだった。
その先からは、微かながらも、これまでとは異なる魔力の流れが感じられる。
四人は息を呑んだ。ここが、未登録のダンジョンの入り口。
「ここからが、本番ね」
シスカが静かに呟き、一歩を踏み出した。
ミナト、セイラ、クレイグもそれに続く。
『地下1層』
一歩足を踏み入れると、そこは坑道の無機質な雰囲気とは全く違っていた。
薄暗い通路ではなく、一本道がまっすぐに伸びている。
壁には松明のようなものが等間隔に設置されており、魔力によって灯りが点っているようだ。
足元は滑らかな石畳で、清々しい空気が漂ってくる。
魔物の気配は感じられないが、四人は警戒を怠らず慎重に進んだ。
「このダンジョンは、古代の魔法で作られているはず。魔物の気配がなくても、油断は禁物よ」
シスカが先導しながら注意を促す。
だが不思議なことに、罠らしきものは確認できず、ただただ歩くだけであった。
しばらく進むと、通路の先に巨大な扉が見えてきた。
重厚な石造りの扉は固く閉ざされ、開くことができない。
扉のすぐ横には、古びた石板のようなものが設置されており、そこには見慣れない文字が刻まれている。
「これは……」
クレイグが石板に近づき、刻まれた文字を読み解こうとする。
ドワーフの血を引く彼には、古代の文字にも多少の心得があるのだろう。
クレイグが石板に刻まれた文字を読み上げると、三人は腕を組み、深く考え込んだ。
「『地より生まれ、火に鍛えられ、身を守り、時に命を奪う。雨に濡れれば、赤き涙を流すもの、我はなんぞ?』……何かの素材?」
シスカが首を傾げる。セイラもまた、石板をじっと見つめている。そこには鉱石が埋め込まれたスイッチのようなものが3つあった。
「『地より生まれ』だから、鉱物か何かでしょうね。そして『火に鍛えられ』……鍛冶に関係するものでしょうか?」
セイラが分析する。ミナトもまた、その言葉に頷いた。武具店で見た、熱気を帯びた工房の光景が脳裏に浮かぶ。
「『身を守り、時に命を奪う』……ということは、武器や防具に使われるもの、か?」
ミナトが推測する。剣や鎧が、まさにその役割を果たす。
「そして、『雨に濡れれば、赤き涙を流すもの』……」
シスカが呟いた瞬間、クレイグの目が大きく見開かれた。
「分かった! これは……鉄だ!」
クレイグが声を上げた。ミナト、シスカ、セイラの三人が、驚いたようにクレイグを見る。
「地中から採掘され、火で鍛えられて武器や防具になる。そして、雨に濡れると錆びて、赤茶色の涙を流す……間違いない、鉄だ!」
クレイグの言葉に、ミナトは納得した。確かに、全ての条件に当てはまる。
「さすがね、クレイグさん! 鉱山の町の人だから、その手の知識も豊富なのね」
シスカが感心したように言うと、クレイグは少し照れたように笑った。
クレイグが石板に手を触れ、鉄が埋め込まれたスイッチを押す、その瞬間、石板が淡い光を放ち、巨大な扉からゴゴゴゴ、と重々しい音が響き渡った。
固く閉ざされていた扉が、ゆっくりと内側へと開いていく。
扉の奥には、さらに下へと続く階段が伸びていた。
その先は、これまでよりも一層深い闇に包まれている。
「よし、開いたわね! さすがクレイグさん!」
シスカが笑顔でクレイグを称賛する。セイラも安堵の息を漏らした。
「さぁ、気を引き締めていきましょう」
シスカが先導し、開いた扉の奥へと足を踏み入れた。
ミナト、セイラ、クレイグもそれに続く。
地下2層へと続く階段が、彼らを新たな試練へと誘っていた。
『地下2層』
地下2層に足を踏み入れると、空気はさらに重く、静寂に包まれていた。
1層のように松明のようなものが等間隔に設置してあり、魔物の気配は相変わらず感じられない。
だがその静けさがかえって不気味さを増していた。
「魔物の気配がないのは助かるけど、この静けさは逆に不気味ね」
シスカが警戒しながら周囲を見回す。
ミナトも頷いた。この静寂の奥に何か潜んでいることを告げているかのようだった。
セイラは索敵魔法を発動させ、周囲の魔力の流れを探るが、異常な反応はない。
クレイグは足元に注意を払いながら、慎重に進む。
しばらく進むと、通路は再び巨大な石造りの扉で塞がれていた。
1層の扉と酷似しており、その横にはまたしても古びた石板が設置されている。
「また謎解きか……」
クレイグが石板に近づき、刻まれた文字を読み解こうとする。
「今度も鉱物に関するものかしら?」
シスカは尋ねた。クレイグは石板に触れ、集中する。
「はい……今度も謎解きのようです。読み上げます」
クレイグはそう言うと、石板に刻まれた文字をゆっくりと読み上げた。
「『赤き肌持ち、熱を伝え、
雷の道となり、命を繋ぐ。
されど、剣にはなれぬ、
我は何ぞ?』」
謎解きを読み終えたクレイグは、腕を組み、深く考え込んだ。
ミナト、シスカ、セイラもまた、それぞれの知識と経験を総動員し、その謎に挑む。
「『赤き肌持ち』……赤い鉱物、かしら?」
セイラが呟いた。
「『熱を伝え』て、『雷の道となる』……ということは、電気を通す素材ね。魔法の伝導体としても使われるものかしら?」
シスカが、雷魔法を扱う者ならではの視点から推測する。
彼女の言葉に、ミナトも頷いた。確かに、電気を通す金属はいくつか思い当たる。
「『命を繋ぐ』……これは、何かの動力源になったり、生活に欠かせないもの、という意味だろうか?」
ミナトが問いかける。その言葉に、クレイグの目が大きく見開かれた。
「分かったぞ! これは……銅だ!」
クレイグが声を上げた。その顔には、確信の色が浮かんでいる。
「地中から採掘され、赤みがかった色をしている。熱や雷をよく通すから、魔道具の回路や、生活に必要な道具にも使われている。しかし、剣や防具の主要な素材としては、鉄ほど硬くない上に重すぎる……間違いない、銅だ!」
クレイグの言葉に、ミナト、シスカ、セイラの三人も納得した。
全ての条件に完璧に当てはまる。
クレイグが石板の、銅が埋め込まれたスイッチをおす。
その瞬間、石板が淡い光を放ち、巨大な扉からゴゴゴゴ、と重々しい音が響き渡った。
固く閉ざされていた扉が、ゆっくりと内側へと開いていく。
扉の奥には、さらに下へと続く階段が伸びていた。3層への階段だ。
四人はさらに奥へと進んでいく。
作品を読んでいただきありがとうございます。
少しでも「面白い」「続きが気になる」
と感じていただけたら下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いします!
ブックマークをいただけると本当に嬉しいです。
よろしくお願いします。




