028 鉱山の町『グリムロック』
町の中央を進むと、一際でかい、石造りの屋敷が見えてきた。
その重厚な造りから、おそらくあれが町長の家だろう。
屋敷からも、カンカンと規則的な鉄を叩く音が鳴り響いている。
門をくぐり、玄関で声をかけると、奥さんらしき小柄な女性が出てきた。
「あら? うちに何か用かい?」
ミナトが依頼書を見せ、用件を伝えると、女性はにこやかに頷いた。
「ああ、冒険者さんたちかい! すまないね、今、亭主は工房にこもっててね。少し家に上がって待ってておくれ」
案内されたのは、職人の手が込んだ重厚な造りの家だった。
玄関から廊下、そして客間まで、全てが頑丈な石と木材でできており、所々に武具や鉱石の結晶が飾り物として置かれている。
この家全体が、この町の特色を物語っているようだった。
しばらく客間で待っていると、奥から作業服をきた、がっしりとした体格のドワーフの男が現れた。
顔には無精髭を蓄え、その手にはまだ熱を帯びたハンマーを握っている。
「すまないな、待たせた。私がこのグリムロックの町長、バルドだ。依頼の件で来たんだろう?」
バルド町長はそう言うと、豪快な笑みを浮かべた。
ミナトが依頼書を差し出すと、町長はそれを一瞥し、すぐに本題に入った。
「うむ。実はな、この町のすぐ裏手に例の鉱山があるんだが、奥まで掘り進めていたら、急に開けた空間に出ちまってな。そこで、アイアンゴーレムに遭遇してしまったんだ」
アイアンゴーレム。ストーンゴーレムよりも遥かに手強い、Cランクでも上位に位置する魔物だ。
「そいつのとりまきに、ストーンゴーレムも3体ほどいたんだが、なにかを守ってるかのように、こちらが近づかなければ動き出さないため、幸い、採掘員に怪我人こそ出なかったが、そこの採掘場が完全に止まってしまっていてな。このままでは、町の主要な収入源が断たれてしまう。だから、取り急ぎ討伐を求める、というわけだ」
町長は深刻な顔で説明した。
「まあ、すぐにでも討伐してほしいところだが、お前さん方も長旅で疲れているだろう。今日はゆっくり休んで、明日でも構わない。宿は手配しておこう、明朝また俺のところへきてくれ」
町長の配慮に、ミナトたちは感謝した。
確かに、早馬に乗ってきたこともあり、旅の疲れは溜まっている。
このまま突入するよりも、万全の態勢で臨む方が良いだろう。
「ありがとうございます、町長。では、お言葉に甘えて、今日は宿を取らせていただきます」
ミナトが礼を述べると、町長は満足げに頷いた。
時間があまったので、三人は町を見て回ることにした。
まずは昼食を済ませるため、食事のできるところを探す。
中央の商店街の方に、活気のある食堂があった。三人はそこで昼食をとることにする。
「いらっしゃい!」
食堂の女将が明るい声で迎えてくれた。
席につき、名物だという山鳥の煮込み料理を注文する。
運ばれてきた料理は、鉱山で取れた石を切り出して作ったという、重厚な器に入っていた。
熱々の山鳥の煮込み料理は、疲れた体に染み渡るような優しい味で、三人の食事は進む。
「これ美味しいわね!熱々のスープとごろごろのお肉が最高だわ!」
「ああ、俺の故郷にも似たような料理はあるが、初めて食べる味付けだ。」
(石焼みたいなものか……昔、コウキとよく食べていたな……。召喚されてもう一月ほどか。あいつは今どこを旅しているのだろうか)
ふとコウキのことを思い浮かべ、懐かしさに浸る。
「私もこの味好きです。鳥と野菜の旨味が染みでていて、少し塩味が足されてる感じで、うまく味がまとまっています」
セイラは味を分析し、料理を堪能していると、そこに気さくな女将が話しかけてきた。
「お、嬢ちゃん鋭いね!その料理には鉱山で取れた岩塩を、隠し味に入れてるんだ。鳥もここの山で取れた新鮮なやつだから、ここでしか食べれない味付けだよ」
女将の言葉に、セイラはなるほど、と頷く。
その後料理を食べ終え、女将に挨拶し、店をあとにした。
店を出て少し歩くと、工房がそこらじゅうにあることに気づいた。
金属を叩く音が絶えず響き、武具や鉄器類の食器など、様々な金属製品が多数展示されている。
この町が、いかに鍛冶に特化しているかがよく分かった。
また、山ということもあり、温泉も湧き出ているらしい。
ミナトは、そのうちの一つの武器店へと足を踏み入れた。店内には、様々な種類の剣や斧、鎧などが所狭しと並べられている。
「へい、いらっしゃい!」
奥から、ドワーフの店主が現れた。
ミナトの隣に立つシスカの剣を見ると、店主は目を輝かせた。
「ほう、嬢ちゃん、上等な剣を持ってるじゃねえか! こいつはいい仕事をしてる!」
店主はシスカの剣を褒め称える。
次にミナトの腰の剣に目をやると、店主は眉をひそめた。
「おいおい、兄ちゃん。そんな安もんの剣使ってたら腕が鈍るぞ」
店主の言葉に、ミナトは苦笑した。
やはり、この世界の職人たちは、良いものを見抜く目を持っているらしい。
「何か俺に合ういい剣はないかと探しているんですが……」
ミナトが尋ねると、店主は腕を組み、ミナトの体格や構えをじっと観察した。
「ふむ……。お前さん、魔法の得意属性なんかは?」
「すみません、俺、魔法が使えないんです」
ミナトが正直に話すと、店主は少し驚いた顔をした。
「なに!? 魔法が使えねぇのかい。そりゃあ珍しい。ふむ...じゃあ、魔力を込めやすい鉱石で作った剣なんてのはどうだ?」
店主はそう言って、店の奥から一本の剣を取り出した。それは、鈍い銀色の光を放つ、シンプルな直剣だった。
「これはアダマンタイトを素材として使ってるから値は張るぞ。それと重たい上に、使用者の魔力が剣に流れてっちまうから、扱いが難しい剣だ」
店主の言葉に、ミナトは剣を手に取った。
その剣は、見た目以上にずっしりと重く、しかし、不思議と手に吸い付くような感覚があった。
そして、体内の魔力が、まるで剣に吸い込まれるかのように、自然と流れ込もうとするのを感じた。
「これは……!」
ミナトは驚いた。これなら、剣閃の鍛錬が格段に進むかもしれない。
しかし、店主が告げた値段は、ミナトが今持ち合わせている金貨では到底払える金額ではなかった。
「……すみません。今回は遠慮しておきます」
ミナトは剣を返し、苦笑した。
やはりいい剣はそれなりの金が要るというわけだ。だがアダマンタイトで鍛えた剣は、想像以上にミナトの手に馴染むようだ。
惜しみながらも店を後にし、今度は宝具店へと向かう。
そこには、魔法の威力を上げてくれる指輪や、様々な効果をもたらすアクセサリーが並んでいる。
どれもこれも、煌びやかで、冒険者の心をくすぐるようなものばかりだ。
どれも高価だが、いつか手に入れたいと思うようなものがたくさんあった。
ミナトは、いずれまた足を運ぼうと心に決めた。
町を探索し終え、三人は宿へと戻った。
明日のストーンゴーレム討伐に備え、早めに休むことにする。
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