026 夕食と新たな仲間探し
定食屋の温かい明かりの下、三人はテーブルを囲んでいた。
女将が運んできた熱々の料理を前に、グレンは豪快にミナトのDランク昇格を祝った。
「ガハハハ! 改めてDランク昇格おめでとう、ミナト! この短期間でよくやったもんだ」
「ありがとうございます、グレンさん。これもグレンさんの指導と、シスカの協力のおかげです」
ミナトが素直に礼を述べると、シスカも嬉しそうに頷いた。食事をしながら、他愛もない話や、今後の冒険者としての目標について語り合う。
「そういえば、試験はオーガの討伐だったわよね。よく物理攻撃で倒せたわね」
シスカが感心したように言った。ミナトも頷く。
「皮膚が固くて剣も弾かれるから、この間のワイルドボアの時のような、一撃を意識したんだ」
ミナトの言葉に、グレンはニヤリと笑った。
「ガハハハ! そうだろうな。オーガはな、確かに体は頑丈だが、魔法耐性は低いんだ。だから、魔法使いからすれば、そんなにたいした相手じゃない。だが、魔法の使えないお前には、ちとキツかっただろうな」
グレンはそう言い、豪快に笑った。
「魔法を使えることを前提に試験は組まれているからな。お前の場合、敵次第ではDランクの試験がCランク……下手したらBランク相当に感じることもあるだろうよ。ギルドランクは、あくまでギルドの基準だ。自分の実力と、魔物の相性をしっかり見極めるんだな」
グレンの言葉に、ミナトは改めて自分の置かれた状況を理解した。この世界の常識では測れない、自身の異端な魔力。それが強みであると同時に、時に予想外の困難をもたらす。
「それとその最後の一撃ってのはどんな技なんだ?」
グレンが興味本位に聞き出し、ミナトはそのときの状況や魔力の流れをこと細かく話す。するとグレンはハッとした顔になる。
「刻付を維持しながら魔力を一部に集めるってのは、かなり難しいはずだが……。それを自己流でやれちまったのか!?」
グレンは少し声をあらげるが、ミナトはそれに頷く。
「全くお前ってやつは...。だがそれはいい兆候だ」
少しあきれたような、だがその眼は期待に満ちている。
「さらに鍛練を積み、扱える魔力の出力をあげ、それを凝縮し、また魔力を集め、また凝縮する。それを繰り返すことにより、大気を唸らせるほどの魔力を体の一部に纏うことができる。それはゆらゆらとした魔力ではなく、バチバチと今にも爆発しちまいそうな魔力の塊だ。それを纏って放つ技が『極壊』だ」
(極壊...以前講習でグレンが話していた技か...)
「グレンさんは使えますか...?」
「うむ...。使えるには使える...。だが発動まで時間がかかりすぎて、とても実践では使えんな。だがミナト、お前は魔力の扱いに関しては、正直俺が知る限り、誰よりも筋がいい。いずれ使いこなせる日がくるだろう」
ミナトはその言葉に気持ちが高ぶり、自身がみなぎった。グレンほどの実力者に、自分のことを正当に評価してもらった上での言葉だ。熱くならないわけがない。
「はい!必ず!」
魔物討伐もそうだが、いずれ魔王やその配下と戦うことになるだろう。来る日まで鍛練をたやさず、少しでも力をつけなければならない。それに信頼できる仲間もだ。ミナトがそう思っていると、シスカが口をひらく。
「それにしても、そろそろパーティーメンバーも見つけないとね」
シスカがふと、そう切り出した。
「私たち、どちらかというと前衛タイプだし、後方支援ができる魔法使いが一人いると、もっと安定すると思うのだけど……グレンさん、何か心当たりのあるソロの魔法使いはいないかしら?」
シスカの問いに、グレンは顎に手を当てて考え込んだ。
「うむ……そうだな。この間、講習生で一人いたな。なかなか筋のいい魔法使いが。名はたしか、セイラだったか」
グレンの言葉に、ミナトの脳裏にあの日の光景が蘇った。最終講習の実技で、グレンを唸らせるほど完成度の高い中級魔法「アクア・サイクロン」を放った女性だ。
「セイラさんですか! 確かに、彼女なら遠距離の魔法攻撃も、状況によっては支援も任せられそうです」
ミナトもその名前に心当たりがあったため、思わず声を上げた。
「ほう、お前も覚えていたか。だが、あいつがパーティーに入ってくれるかは本人次第だ。うまく交渉してみな」
グレンはそう言って、ニヤリと笑った。
ミナトとシスカは顔を見合わせた。確かに、Bランクのシスカでもソロ活動が主だというのだから、セイラもまた、固定パーティーに属していない可能性は高い。
「よし、明日の朝、ギルドで探してみましょう!」
シスカが意気込むと、ミナトも力強く頷いた。新たな仲間、そして固定パーティー結成への第一歩。ミナトの胸は、期待に高鳴っていた。
翌朝、ミナトはシスカと共に、例のセイラという少女を探しにギルドへと顔を出した。
ギルドに着くと、依頼掲示板の前に、一人の少女が腕を組み、難しい顔をして依頼書を眺めていた。セイラだ。長い黒髪が背中で揺れ、その細身の体からは想像できないほどの魔力の気配をミナトは感じ取った。
「あの……セイラさん?」
ミナトが声をかけるが、彼女は気づかないようだ。よほど考え事をしているのだろう。
「セイラ!」
シスカが少し大きめの声で呼びかけると、セイラははっとしたように肩を震わせ、こちらに気づいた。その瞳には、警戒と少しの戸惑いが浮かんでいる。
「あ……何か、御用でしょうか?」
セイラは控えめな声で尋ねた。ミナトとシスカは、いきなり固定パーティーの話をするのもどうかと思い、まずは彼女の状況を探ることにした。
「いや、悪い。声をかけても気づかないようだったから。何をそんなに考え込んでいるんだ?」
ミナトが尋ねると、セイラは少し躊躇した後、俯きがちに話し始めた。
「その……私、ギルドにはCランクで登録されたんです。魔力量が高いから、と。毎日鍛錬も欠かさずに、魔法の実力はついてきているとは思うのですが……いまだに討伐依頼を受注したことがなくて」
セイラの声は、次第に小さくなっていく。
「自分でいうのもなんですけど、少しばかり臆病な性格で……魔法による遠距離攻撃も、なるべく魔物に近づいて戦いたくないから覚えたんです。だから、一人で討伐に行くのは少々不安で……でも、声をかけて手伝ってもらえるような知り合いもいなくて、どうすればいいか困っていたんです」
セイラの言葉に、ミナトとシスカは顔を見合わせた。なるほど、魔力は高くても、実戦経験と精神的な部分で踏み出せないでいるのか。
「そう。なら、ちょうどいいわ」
シスカがにこやかに口を開いた。
「私たち、今からCランクの討伐依頼に行こうと思ってるんだけど、試しに一緒に受けてみない? あ、ちなみに私はシスカ、Bランク冒険者よ。こっちはミナトで、Dランク冒険者、あなたさえよければだけど」
突然の誘いに、セイラは目を見開いた。
「え……私と、ですか?」
セイラは少し考え込む。ソロでの不安と、目の前の二人の実力。そして、初めてのパーティーへの戸惑い。様々な感情が彼女の表情を巡る。しかし、彼女は意を決したように顔を上げた。
「……はい! ぜひ、お願いします!」
セイラの瞳に、決意の光が宿った。
「よし! じゃあ、パーティーを組むわよ」
シスカがリビアのいるカウンターへと向かう。ミナトとセイラもそれに続いた。
「リビアさん、この三人でパーティーを組んで、Cランクの依頼を受けたいんだけど、何かパーティー向けの良い依頼はないかしら?」
シスカが尋ねると、リビアは笑顔で頷いた。
「はい、承知いたしました! シスカさん(Bランク)、ミナトさん(Dランク)、そしてセイラさん(Cランク)のパーティーでしたら、ギルドの規定でCランクまでの依頼が受注可能になりますね。ちょうど今、Cランクでパーティー向けの依頼がいくつか来ていますよ」
リビアは手際よく掲示板から依頼書を取り出した。
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