022 依頼完了と帰還
激しい戦闘を終え、洞穴にはワイルドボアたちの死骸と、ミナトとシスカの荒い息遣いだけが響いていた。
「やったわね、ミナト!」
シスカが興奮したようにミナトに駆け寄る。
その顔には、疲労と達成感が入り混じっていた。
「ああ、シスカもな。助かったぜ」
ミナトも頷き、互いの健闘を称え合った。
初めてのパーティー戦闘だったが、二人の連携は想像以上にスムーズだった。
「それにしても最後の一撃、すごい破壊力だったわね。離れていたけど地面が揺れるのを感じたわ」
どうやら最後の一撃は離れた場所にいた、シスカのところにも衝撃が届いてたらしい。
「あのリーダー格は、他のやつの比べ物にならないくらい皮膚が固くて、決め手がなく、その場で咄嗟に思い付きで放った技だよ。自分でもあそこまで威力がでるとは思わなかった」
ミナト自身も正直驚いていた。
刻付、飛速、2つを掛け合わせ、そこに高い地点からの重力加速も加わるとここまでの威力になるということは、今後の戦闘にも役立つことだろう。
「さて、魔石を回収しましょう。死骸の処理は、町の自警団に任せればいいわ」
シスカは手慣れた様子でワイルドボアの死骸から魔石を取り出し始めた。
ミナトもそれに倣う。
「ワイルドボアの魔石は、そこまで高値にはならないけど、それでも依頼報酬とは別に入るから、馬鹿にはできないわね。魔物によっては、素材が高く売れるものもいるのよ」
シスカが説明しながら、次々と魔石を回収していく。
ミナトは頷きながら、この世界の冒険者稼業の現実を学んでいく。
全ての魔石を回収し終えると、二人は洞穴を後にし、来た道をたどってリンウッドの町へと戻った。
町に到着すると、二人はまっすぐ酒場へと向かった。
店の中は夕食時とあって賑わっており、香ばしい料理の匂いが漂っている。
「店主さん、ただいま!」
シスカが威勢よく声をかけると、恰幅のいい店主がカウンターから顔を出した。
「おお、昨日の冒険者さんかい! 無事だったかい? ワイルドボアの群れは……」
店主は不安げな表情で尋ねたが、ミナトが回収したワイルドボアの魔石をテーブルに置くと、その顔は驚愕に染まった。
「こ、これは……!? こんなにたくさん!?」
店主は目の前の魔石の山を見て、依頼にあった推定10匹どころではない数に目を見開いた。
「ええ、予想より数が多かったので、全て掃討してきました」
シスカが淡々と告げると、店主は感極まったように声を上げた。
「おお、本当にありがとう! これで町も安泰だ! 今日のお代はいい、好きなだけ食べていってくれ!」
店主の厚意に、ミナトとシスカは顔を見合わせた。
激しい戦闘で疲労困憊の体には、何よりの言葉だった。
二人は遠慮なく、温かい料理を堪能した。
日が完全に沈み、夜の帳が降りる頃、二人は酒場に併設された宿で部屋を取った。
明日の朝、王都へ戻ることにする。
翌朝、二人はリンウッドの町を後にした。
街道に出ると、酒場の店主が手配してくれた王都行きの行商人の馬車が待っていた。
行商人も快く同乗を承諾してくれた。
馬車での移動は、昨日のような長距離の走り込みとは違い、体を休めることができた。
道中、時折現れる低級魔物を二人が手際よく処理すると、行商人は安堵の表情を浮かべ、感謝の言葉を述べた。
数時間後、王都の巨大な門が見えてきた。
門をくぐり、行商人に別れを告げると、二人はそのまま冒険者ギルドへと向かった。
カウンターには、いつものようにリビアが座っていた。
「リビアさん、ただいま戻りました。依頼達成の報告です」
ミナトがそう言って、店主のサインが入った依頼書を差し出す。
リビアは依頼書を受け取ると、その内容を確認し、満面の笑みを浮かべた。
「お帰りなさいませ、ミナトさん、シスカさん! ワイルドボアの群れ討伐、見事達成ですね! これで今回の依頼は無事終了です!」
リビアの言葉に、ミナトとシスカは安堵の息を漏らした。
初のパーティーでのDランク依頼、無事に終えることができ、二人の胸には確かな達成感が満ちていた。
「では、報酬をお渡ししますね。依頼報酬がDランクで金貨10枚、ワイルドボアの魔石が22個で銀貨22枚、それと特別手当てで金貨5枚が上乗せされております。なので合計で金貨17枚と銀貨2枚になります」
「特別手当て?」
ミナトはなんのことかわからず思わず口にする。
「今回の依頼、推定10匹という話でしたが、どうやら実際は22匹居たとのことで、依頼主さんから追加で払ってもらうよう、先ほどの依頼書に書いてありましたのでその分ですね」
リビアはそう説明し、ミナトもまた納得した。
(たしか討伐する前に、シスカが報酬も増えるとかいってたような気がしたな)
リビアは手際よく金貨と銀貨を数え、二人に手渡した。
ミナトは初めて手にする異世界の金貨の重みに、冒険者としての実感を改めて噛み締めた。
「ミナト」
報酬を受け取った後、シスカが少し真剣な顔でミナトに声をかけた。
「今回のクエスト、あなたとの連携は想像以上にやりやすかったわ。あなたの武術と魔力纏い、それにあの『飛速』。私の雷魔法との相性も抜群だった。どうかしら? もしよかったら、私と正式なパーティーを組まない?」
突然の提案に、ミナトは少し驚いた。
「正式なパーティー、ですか?」
「ええ。私は今まで、基本的にソロで活動してきたの。他のパーティーの穴埋めをしたり、クエスト次第で何人かと即席のパーティーを組んだりすることはあったけど、特定のパーティーに属したことはないわ」
シスカはそう説明した。
ミナトもまた、この世界に来てからパーティーを組んだのは今回が初めてだ。
「もちろん、俺は構いません。シスカのような高ランクの冒険者から誘ってもらえるなんて、願ってもないことです」
ミナトは素直に答えた。
自分より経験も実力も上のシスカとの正式なパーティーは、今後の成長にとって大きなプラスになるだろう。
「ありがとう、ミナト! それと、正式なパーティーを組むには、ギルドの規定で最低三人居なければならないの。だから、私たち二人の間では『パーティー結成』という認識だけど、正式にギルドに登録するには、もう一人仲間を見つける必要があるわ」
リビアが二人の会話を聞いていたのか、笑顔で補足説明をしてくれた。
「そうですね、正式なパーティーになれば、パーティー名も決めて登録しなければなりません。それまでは、今回のようにお二人で即席のパーティーとして依頼を受ける形になります」
ミナトは頷いた。
(パーティ名か……。まだ先の話になるだろうが、少し楽しみだ)
「まずは、二人でDランクの依頼をこなしながら、もう一人、信頼できる仲間を探しましょう」
シスカの言葉に、ミナトは力強く頷いた。新たな目標ができた。
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