021 ワイルドボア討伐依頼2
二人が洞穴の奥へと踏み込んだ瞬間、ワイルドボアたちが一斉に顔を上げた。
彼らの小さな目が、侵入者であるミナトとシスカを捉える。
「グオォォォォ!」
群れの中から、一際大きなワイルドボアが咆哮を上げた。
それを合図に、十数頭のワイルドボアが牙を剥き出し、地響きを立てながら突進してきた。
「ミナト、散開よ!」
シスカが叫ぶと同時に、彼女は剣を抜き放ち、雷魔法を発動させた。
青白い稲妻が彼女の剣に宿り、全身を包み込む。
「ライトニング・スラッシュ!」
シスカが横一閃に剣を振るうと、雷光を帯びた斬撃がワイルドボアの群れへと放たれた。
先頭の数頭が感電し、動きを止める。
その隙を逃さず、シスカは雷光を纏った身体でワイルドボアの群れへと飛び込んだ。
バチバチッ! ドンッ!
彼女の剣は速く、正確だった。
雷を纏った剣がワイルドボアの急所を的確に捉え、次々と地面に倒していく。
ミナトも負けてはいない。
全身に魔力纏い・刻付を発動させると、その姿は一瞬で透明な膜に覆われたかのように変化した。
腰に携えた剣を抜き放つ。
(まずは数を減らす!)
ミナトは足裏に魔力を集中させ、地面を蹴ると同時に一気に放出する。
「飛速!」
ズンッ!
ワイルドボアの群れの中を、まるで弾丸のように駆け抜ける。
その速度は、ワイルドボアたちが反応する間もないほどだった。
ミナトは、加速の勢いを乗せたまま、剣を振るい、次々とワイルドボアに斬撃を叩き込んでいく。
ザンッ! ドォンッ!
飛速による加速を利用したミナトの剣は、ワイルドボアの頑丈な皮膚と筋肉を容易く切り裂き、その巨体を吹き飛ばし、戦闘不能に追い込んだ。
「ミナト、左から!」
シスカの声が飛ぶ。
ミナトは瞬時に反応し、左から突進してきたワイルドボアを、武術で培った体重移動で、グレンを投げ飛ばしたときのように、軽く宙に投げ飛ばす。
そこへすかさずシスカは連撃を叩き込む。
二人の連携は、初めて組んだとは思えないほど洗練されていた。
シスカが雷魔法でワイルドボアの動きを止め、ミナトがその隙に懐に飛び込み、剣で仕留める。
あるいは、ミナトが群れの中を駆け巡り、ワイルドボアの注意を引きつけ、シスカが後方から魔法で追撃する。
戦闘は激しさを増していく。
ワイルドボアたちは、その巨体と数を活かしてミナトとシスカを追い詰めようとするが、二人のスピードと攻撃力は、彼らの予想を遥かに超えていた。
ミナトは、ワイルドボアの突進を躱し、その勢いを逆利用して背後へと回り込む。
そして、渾身の力を込めた剣をワイルドボアの側頭部に叩き込んだ。
ガァンッ! ザンッ!
ワイルドボアは呻き声を上げ、そのまま地面に倒れ伏した。
その時、一際大きく、体格の良いワイルドボアが、ミナトの死角から突進してきた。
それは群れのリーダー格なのだろう。
他のワイルドボアとは明らかに違う、威圧感を放っていた。
ミナトは咄嗟に反応し、その突進を体捌きでいなそうとする。
しかし、そのワイルドボアの突進は、これまでの個体とは比べ物にならないほどの重みと速度を持っていた。
(さすがにでかすぎる……!)
他のワイルドボア同様、突進の勢いを利用し、投げ飛ばそうと試みたが、刻付による身体強化とミナトの武術を掛け合わせても力が足りなかった。
ワイルドボアは一瞬体勢を崩すも、すぐに建て直し、またこちらへ突進してくる。
(ならば勢いを利用し斬るしかない!)
ミナトは剣を構え、突進してくるワイルドボア目掛けて振り下ろす。
ところが次の瞬間、鋭い牙がミナトの剣を捉え、剣は宙を舞った。
「しまった……!」
ワイルドボアは武器を狙うことで、ミナトの戦力をそぎおとしたと思っているのだろう。
鼻をならし、余裕の雰囲気を出している。
だがミナトは素手の方が戦い慣れていて、武器を失ったことがなんの足枷にもなっていないということを、ワイルドボアは知る由もない。
ワイルドボアは牙を剥き出し、再び突進してきた。
ミナトは突進を紙一重で躱し、その巨体の下へと潜り込む。
そして、魔力を右拳に集中させ、ワイルドボアの腹部に渾身の打撃を放った。
ドォンッ!
すさまじい衝撃がワイルドボアの巨体を大きく揺らし、その動きが鈍る。
ミナトは追撃をかけるべく、素早く体勢を立て直す。
武術で培った連撃の型の構えをとる、刻付を纏った拳と蹴りを、ワイルドボアの急所へと連続で叩き込んだ。
ズガンッ! ドスッ! バキッ!
硬質な皮膚と筋肉が、ミナトの打撃によって徐々に破壊されていく。
ワイルドボアは苦しげな咆哮を上げ、抵抗しようと暴れるが、ミナトの連撃は止まらない。
やがてワイルドボアは動きが鈍くなり、最後の一撃を加える。
ミナトは空中へ大きく跳躍し、飛速による加速を最高速に乗せる。
その勢いそのままに、刻付を極限まで集中させた踵を、ワイルドボアの頭部へと叩き込んだ。
ドォンッ!
その一撃は凄まじい威力を帯びていた。
頑丈な頭部はぺしゃんこに潰れ、地面にはヒビが入っていた。
ワイルドボアは、断末魔の叫びを上げる間もなく、その巨体を地面に横たえた。
洞穴には、ワイルドボアたちの死骸と、ミナトとシスカの荒い息遣いだけが響いていた。
Dランクの討伐依頼、ワイルドボアの群れ、全頭討伐完了だ。
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