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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
序章 光の勇者と異端な勇者

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002 二人の勇者

「……勇者よ、よくぞ参られた」


 国王と思しきその男の言葉に続き、ローブ姿の者たちが次々と頭を垂れる。

 しかし、彼らから感じ取れるのは『歓迎』より『疑心』、もしくは『不安』だった。


 国王の視線はコウキとミナトを忙しなく行き来している。

 その表情からは疲労も感じ取れた。


「神託に記されしは、ただ一人の勇者。かの世界より選ばれし者がこの地に降臨すると……」


 国王は、戸惑いを隠せない声で語った。

 神聖な儀式によって招かれたはずの勇者が、なぜか二人いる。

 どうやらこのイレギュラーに彼らは戸惑いを隠せないようだ。


 国王は重々しく口を開いた。


「……儀式は成功したはずだ。だが、なぜ二名いる?」


 国王は側近たちに鋭い視線を向けた後、再び二人を見据えた。


「答えよ。貴様らは何者だ? どちらが『勇者』なのだ?」


 その問いは、明らかにミナトとコウキに向けられたものだった。

 コウキが慌てて口を開こうとするのを、ミナトは片手で制する。


「それはこっちが聞きたいことだ。ここはどこなんだ。勇者とはなんだ」


 ミナトは、湧き上がる吐き気を抑え込みながら、努めて冷静に答えた。

 敵か味方か分からぬ状況で、弱味を見せるわけにはいかないという、彼なりの判断だろう。

 そして彼の言葉は、この世界の言語に変換されて伝わっているようだった。


「国王様……どうやら二人とも勇者であることに間違いは無いようです」


 水晶のようなものを操る女は、国王に告げる。


「なに、勇者が二人だと?鑑定の結果に誤りはないのか?」

「はい、紛れもなくこの水晶は二人を勇者であると指し示しています。ただ……」


 女は少し顔を歪めながら話を続ける。


「あちらの方からは光を彷彿とさせる輝かしい魔力を放っているのに対し、もう一方からは、世界の理と反発するかのような魔力が感じ取れます」


 女が最初に視線を向けたのはコウキだ。そして次にミナトを見た。

 おそらくこの体の不調はその反発する魔力とやらが原因なのだろう。

 そしてその言葉に国王はさらに驚きを隠せないかのように、玉座から立ち上がり女を睨む。


「世界の理と反発する……だと?」


 周囲に構える衛兵等はミナトという、異物に恐怖を抱くかのように、一歩後ずさる。

 国王がミナトを見る目も歓迎ではなく、監視をするかのようだった。


「し、しかし、勇者であるのは間違いありません!神託とは異なりますが、勇者である以上無下にはできないかと……」


 女の言葉に国王は頷くと、暫くの沈黙の後、ミナトとコウキを見定め、ゆっくりと口を開いた。


「うむ……。ならば一先ず二人とも勇者として出迎えるとする。部屋を案内させる、そこでしばらく待たれよ。だが……」


 国王はミナトを睨み付け、言い放った。


「問題を起こさぬようにな」


 異物であるミナトに釘を刺した。

 想定外の『イレギュラー』が混じり込んだ事実に対する、苦渋の判断なのだろう。

 一先ず受け入れてもらえたようだが、事情を把握できるまでは警戒は緩められない。


 国王の言葉通り、二人は衛兵に促され、広間から続く長い廊下を進んだ。

 豪華な絨毯が敷かれ、壁には見事な装飾が施されている。

 王城の中なのだろうが、どこか現実離れした空間に、ミナトもコウキもただ黙って従いながらも、視線は周囲を探っていた。


 やがて、たどり着いたのは、広々とした一室だった。

 調度品はどれも見たこともない上質な木材で作られ、窓からは見慣れない植物が生い茂る庭園が見える。

 ここが日本ではないということを改めて突きつけられた気分だった。


 衛兵が去り、扉が閉まると、途端に張り詰めていた空気が緩んだ。


「な、なんなんだよこれ……!」


 コウキが呆然とした表情で呟いた。

 普段の冷静な彼からは想像できないほど取り乱している。無理もない。

 少し前まで当たり前だった日常が、一瞬にして消え去ったのだから。


 ミナトはまだ胃のむかつきと微かなめまいを感じていたが、先程と比べればずいぶんとましになっただろう。

  まずは状況を整理しなければならない。


「落ち着け、コウキ。まずは現状を把握しよう」


 ミナトは部屋の中を一通り見回し、それからコウキに向き直った。


「さっきの国王の言葉からすると、俺たちは『勇者召喚』ってやつでここに連れてこられたんだろう。おそらくだが、本来は一人の勇者が召喚されるはずが、なぜだか二人召喚されてしまったことに国王たちは戸惑っているのだろう」


「勇者召喚……」


 コウキは俯き、自分の手のひらを見つめていた。

 その手からは、確かに温かな光が微かに放たれているのが見て取れる。


「俺、身体中に力が漲ってるのが分かるんだ。なんだか、今までと全然違う。これはなんだ……?」


 コウキが不安げに尋ねる。

 ミナト自身も体内に感じるなにかの存在には気づいているが、なんなのか説明がつかない。


「さっき水晶を持った女が言っていたが、魔力……というものだろう。俺も気とは違う魔力というものを感じるが、それを意識しすぎると吐き気がする」


 ミナトは正直に現状を伝えた。コウキは驚いたように顔を上げた。


「俺はむしろ心地いいというか、力がみなぎってくるというか……」


「お互いの体の状況はちがうみたいだな。とりあえず、この部屋にあるもので何か情報がないか見てみよう」


 二人は部屋の中を調べ始めた。

 机の上には、見慣れない文字のはずだが、なぜか意味を理解できる書物や、奇妙な形をした道具が置かれている。

 窓から見える景色も、全く知らないものばかりだ。


「ここがどんな場所で、何がどうなっているのか、何もかもが分からないな」


 コウキが壁にかけられた地図のようなものを指差した。

 そこには、複雑な地形と、いくつもの国の名前のようなものが書かれている。

 そして、北側に連なる山々を記した所から上部は真っ黒に塗りつぶされていた。

 そして小さく魔族領と書かれている。


「勇者……魔族……まさか俺達に魔王を倒せってか?」


「勇者召喚というからには、その可能性が高いだろうな。だが、言葉や文字が通じるだけで、それ以外の情報は皆無だ。ひとまず国王からの呼び出しを待つしかないな……」


 ミナトとコウキは、困惑しながらも目の前の状況と向き合おうとしていた。

作品を読んでいただきありがとうございます。


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