019 シスカとの依頼
最後の講習が終了し、講習生たちは皆、グレンの圧倒的な実力に打ちのめされながらも、その指導に心から感謝していた。
「ギルドマスター、ありがとうございました!」
「おかげで、自分の甘さがよく分かりました!」
口々に感謝の言葉を述べながら、講習生たちは訓練場を後にする。
ミナトもまた、痛む体を起こしながら、グレンの元へと向かった。
「グレンさん、ありがとうございました。本当に、色々なことを教えていただきました」
ミナトが深々と頭を下げると、グレンは豪快に笑った。
「ガハハハ! 気にするな。お前は筋がいい。教え甲斐があったぜ」
グレンはそう言いながら、ミナトの肩を軽く叩いた。
その視線は、ミナトの成長を喜んでいるようにも、また、何かを見据えているようにも見えた。
「それで、今後の稽古についてなんだが」
グレンは少し真剣な表情に戻った。
「今までは講習前だから毎日来ていたが、これからは討伐依頼などで泊まりがけになることも多くなるだろう。毎日来るのは難しいはずだ」
ミナトは頷いた。
確かに、Eランクに昇格し、討伐依頼も視野に入れれば、王都を離れる機会も増えるだろう。
「新しい技や、魔力纏いの応用については、俺もアドバイスはしてやる。だが、ある程度教えたら、あとはお前自身の反復練習あるのみだ。俺が必要だと感じた時、あるいは、お前が必要としてる時に声をかけろ。その時は、いつでも稽古をつけてやる」
グレンの言葉は、ミナトに自立を促すものだった。
「己自身で強くなることを忘れるな。他人に頼りっぱなしじゃ、いつか限界が来る。お前には、この世界の常識を覆すだけの力がある。それをどこまで伸ばせるかは、お前次第だ」
その言葉は、ミナトの胸に深く刻み込まれた。
グレンは、彼に道を示し、背中を押してくれている。
「はい! ありがとうございます、グレンさん!」
ミナトは力強く返事をした。
グレンは満足げに頷くと、そのままギルドの奥へと歩いていった。
ミナトは、グレンの言葉を胸に刻み、改めて自身の進むべき道を見つめ直した。
グレンとの話を終え、まだ時間もあったため、ミナトは早速Eランクの依頼を受けにリビアのもとを訪ねた。
「リビアさん、依頼を受けにきました」
「はい、ミナトさん。Eランクの依頼ですね。どれになさいますか?」
リビアはEランクの依頼リストを差し出した。
Fランクの時とは違い、討伐依頼が目立つ。
ミナトはどの依頼が良いか、依頼内容を読みながら悩み始めた。
その時、背後から聞き慣れた声がした。
「ミナト...くんだったよね?討伐依頼にいくの?」
振り返ると、そこにいたのはシスカだった。
彼女は訓練着のままだが、その瞳は好奇心に満ちている。
「あっ、シスカさん!はい、Eランクにあがったばかりなので、どれがいいか悩んでまして。」
ミナトが答えると、シスカは一歩近づいた。
「よかったら私と一緒にいかない?あなたの剣技と体捌きに興味がある。それに、あなたの魔力纏いも間近で見てみたい」
突然の申し出に、ミナトは少し戸惑った。しかし、リビアのアドバイスを思い出す。
パーティーを組むことの重要性。
そして、シスカはBランクの冒険者だ。
初めての討伐依頼で、経験豊富な彼女が同行してくれるのは心強い。
「ぜひおねがいします!あ、あの……それと、シスカさんって、もしかして、俺と同い年くらいですか?俺は18です。」
ミナトがふと尋ねると、シスカは少し驚いた顔をした後、小さく笑った。
「私も18歳よ。なら敬語は無しでいきましょう。ミナトって呼ばせてもらうね! 私のこともシスカって呼んで」
「はい! よろしく、シスカ」
ミナトも快活に頷いた。
リビアも二人のやり取りを見て、笑顔で口を挟んだ。
「シスカさんが同行してくださるなら、安心ですね。ギルド規定では、パーティーメンバーの平均ランク以下の依頼を受注できます。ミナトさん(Eランク)とシスカさん(Bランク)なら、Dランクまでの依頼が受注可能になりますよ」
Dランク、Fランクから一気に二段階も上の依頼を受けられることになる。ミナトはシスカと顔を見合わせた。
「どうする? Dランクの依頼を受けてみる?」
シスカの問いに、ミナトは迷いなく頷いた。
「せっかくの機会だし、そうしよう。」
二人はリビアと共にDランクの依頼掲示板へと向かった。
いくつか候補がある中で、シスカが指差したのは、最近王都の郊外でワイルドボアが群れをなしているという情報だった。
「これにしよう。近隣の町に被害が出る前に討伐をしてほしいとの依頼だ。推定10匹程度らしい」
リビアが依頼書を確認しながら付け加えた。
「ワイルドボア自体はEランク相当の魔物なのですが、これほどの数が群れをなしているとなると、Dランクの討伐依頼に格上げされます。群れをなした魔物は非常に危険ですから、お二人ともくれぐれも油断なさいませんよう」
ワイルドボア、レッサーラットやゴブリンよりも手強いだろうが、シスカがいれば問題ないだろう。
「承知しました。では、この依頼でお願いします」
リビアは手続きを済ませ、二人に依頼書と、ワイルドボアの生息域を示した地図を手渡した。
「では、お二人とも、お気をつけて」
ミナトとシスカは、互いに装備を確認し、王都の門へと向かった。
初のパーティ結成。そして初のDランク討伐。
ミナトの胸には、緊張感よりも新たな挑戦への高揚感が満ちていた。
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