014 Eランク昇格と新たな準備
ゴブリンの魔石を回収したミナトは、遺跡から王都への道を急ぐ。
刻付を維持したままの移動は、往路よりも格段にスムーズになっていた。
魔力の消費も以前より抑えられているのが肌で感じられた。
グレンの指導と実戦の成果が、着実に身体に刻み込まれている。
王都の門をくぐり、冒険者ギルドの扉を押し開ける。
カウンターには、いつものようにリビアが座っていた。
「お帰りなさい、ミナトさん! 試験はいかがでしたか?」
リビアはミナトの姿を認めると、期待に満ちた表情で尋ねた。
ミナトはゴブリンの魔石を差し出す。
「はい。ゴブリンの討伐、完了しました。討伐証の魔石、五つです」
リビアは差し出されたゴブリンの魔石を一つ一つ確認し、その表情を喜びで輝かせた。
「間違いありません! お見事です、ミナトさん! これでEランク昇格試験、合格です!」
リビアは満面の笑みでミナトのギルドカードを更新し、新しいランクが記されたプレートを手渡した。
Fランクの文字が消え、そこに「E」の文字が刻まれているのを見て、ミナトの胸に確かな達成感が込み上げた。
「Eランク、おめでとうございます! これで受けられる依頼の幅も大きく広がりますよ」
リビアはそう言って、Eランクの依頼掲示板を指差した。
Fランクの採取依頼とは異なり、そこには魔物討伐や護衛といった、より危険を伴うが、その分報酬も高い依頼が並んでいた。
「Eランクからは、討伐依頼が増えてきます。討伐依頼は素材採取などと比べてギルドポイントが多く獲得できますので、早くランクアップしたいのであれば、討伐依頼がおすすめです」
ミナトは頷いた。
Sランクという目標を考えれば、積極的に討伐依頼をこなしていく必要があるだろう。
「それと、討伐依頼を受けるのであれば、いくつかアドバイスがございます」
リビアは少し真剣な表情になった。
「単独での討伐は危険を伴います。可能であれば、他の冒険者とパーティーを組むことをお勧めします。また、ミナト様は素手で戦われるようですが、魔物の中には物理攻撃が通りにくいものや、特定の属性に弱いものもいます。万が一に備えて、武器を調達されることもご検討ください」
パーティーを組むこと。武器を調達すること。
どちらも、ミナトにとっては新たな課題だ。
たしかに、周りを見渡せば、冒険者で何も武器や道具を持たない者はいない。剣、盾、槍、弓、大杖……。
それぞれが異世界での戦いに適した装備を整えている。
「ありがとうございます。参考にさせていただきます」
ミナトはリビアに礼を言い、ギルドを後にした。
まずは武器屋へ行ってみるか。
王都の賑やかな大通りを進み、ミナトは武具屋の看板を見つけた。
店の中に入ると、ずらりと並んだ剣や槍、斧、盾などが目に飛び込んでくる。
どれもこれも、見慣れないデザインだが、職人の魂が込められているのが感じられた。
店主の許可を得て、ミナトはいくつかの剣を手に取ってみた。
重さ、バランス、柄の握り心地。剣道で竹刀や木刀を握り慣れた手には、本物の剣の感触はどこか懐かしさのようなものを感じさせた。
(素手での戦いは極めるとして、いざという時のために、一本くらいは持っておくか)
ミナトは最も安価で、手になじむ一本の剣を選んだ。
装飾のないシンプルな直剣だが、その刃は鋭く研ぎ澄まされている。
「これをください」
剣を購入すると、ミナトは次に道具屋へと向かった。
討伐依頼では、予期せぬアクシデントも起こり得る。
店の中には、様々な小瓶や袋、奇妙な道具が並んでいた。
ミナトはリビアのアドバイスを思い出し、いくつかのポーションと、日持ちのする携帯食料を購入した。
これで、いざという時の備えはできた。
宿へ戻ると、ミナトは購入した剣を部屋の隅に立てかけ、ポーションや食料を整理した。
今日の出来事を改めて整理する。Eランクへの昇格、そして新たな課題。
(パーティーか……。それに、この剣も使いこなせるようにならないとな)
明日からのグレンとの稽古に、剣術の訓練を加えるべきだと、ミナトの頭の中は今後の修練計画でいっぱいになった。
簡単な夕食を済ませ、新しい剣を横に、彼は深い眠りを迎えた。
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