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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
勇者 第二章 テラヴェルト連邦編

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105 コウキの旅路8

 コウキはまず兵士にリサーチを行った。

 得意武器、魔法、あらゆる情報を聞き込み、それをもとにいくつかのグループに分け、訓練内容を紙に記しはじめた。


 その紙をライカに見せると、まるで頭に雷でも落ちたかのような、驚愕とも言える顔で声を荒げる。


「こんなんで良いわけがないだろう!なんだこの軟弱な訓練内容は!」


「いいや、これでいい。これが魔力と体力の効率を考えたグループごとの訓練だ」


 コウキの記したいくつかの紙のひとつにはこう書いてあった。


『魔力纒いによる走り込みを体力、もしくは魔力が半分程度消費するまで続ける。その後そのどちらかが八割ほどまで回復したらまた、どちらかが半分程になるまで同じことをし、あとはそれの繰り返しにより、基礎を作る。基礎ができ、安定してきたら自身の得意とする魔法や武器の技術を磨く訓練を行う』


 以降の内容はグループごとに別れているみたいで、この紙には共通の訓練内容が記されていた。


「仮にそれでいいとして、半分程度で休憩なんかしてたら、どれ程の時間がかかるというのだ!魔王復活までそう時間はないんだぞ!?」


 ライカは眉をひくつかせ、怒りというより焦りの表情を浮かべ、依然として声を荒げる。

 時間が無い中で、悠長な訓練を行おうとしているコウキへの苛立ちだ。


「体力や魔力というのは五割を下回ると急激に回復力が衰えるんだ。もちろんパフォーマンスも急激に落ちる。体に余裕がなくなるんだ。逆にいえばそのラインをキープできれば、消費した体力もすぐに回復し、訓練に復帰することが可能だ」


 コウキはライカの目をしっかりと見定め、迷いのない、絶対的な確信を宿した視線で最後の一押しをする。


「一回一回の訓練は短く見えるかもしれないが、総合的にみればこのやり方が、より長い時間最良の状態で訓練にあたることができる!」


 ライカは先ほどとは違う衝撃の雷が落ちたかのような驚愕の顔を浮かべると、大きく頷き納得したようだ。


「私の訓練は体が動かなくなるまでやるから、次の日は休みにせざるを得ないが、これなら毎日できる……確かに総合的にみれば効率がいいかもしれない!コウキさすがだな!」


「あとはライカの信頼のおける人物だが……心当たりはあるのか?」


 ライカは即答した。それだけライカからの信頼が厚い人物なのだろう。


「そうだな、私が信頼を置いているのは、オーランだが、あの歳じゃ無理だろう。代わりに、オーランが選んだ人物になら任せてもいいと思う」


 その人物はまさかのあれだけ言い合っていたオーランであった。


「なんだオーランさんか!なら都合がいいな。ちょうど長達で集まって話し合っているんじゃないか?そこにいってみるか」


 ライカは歯を見せるかのようににこっと笑うと、迷わずに頷いた。

 一連の話を聞いていたマリア達もそれを了承し、一行はライカの案内のもと、長達の集う評議の場へと向かうのであった。


 程なくして到着すると、そこは世界樹の一部をくりぬいたかのようにして出来た空間であった。

 壁から天井まで根そのものが張り巡らされ、所々凹凸のある床からは世界樹のエネルギーなようなものを感じ取れる。


 中からは協議をする声が聞こえてくるが、ライカはノックも無しにドアを勢いよく開けた。


「おいオーラン!話があるぞ!」


 ライカの言葉は、協議をする声と、木製扉を打ち砕くような轟音にかき消され、広間に響き渡った。


 中にはオーラン含む、人族、エルフ族、ドワーフ族の四種族の長が集まり真剣な会議をしていたが、ライカの悪気の無い獰猛な笑顔が場の空気を凍りつかせた。


「ライカ……全くお前ってやつは」


 オーランは深く息を吐き、頭を抱える。

 ドワーフは腕を組みながらライカに視線を向け、エルフは瞳を閉じながら微動だにしない。


「皆々様方、うちのライカが何から何まで迷惑をかけてすまない。あとで重々きつくしかっておくゆえ、今は許しておくれ」


 その言葉にドワーフの長は労いの言葉を掛けると同時に、後ろに控えるコウキ達に視線を送る。


「がはははは!ライカが手の掛かる子だだってのは皆承知の上さ!それより後ろのがきんちょはさっき話してた勇者パーティーか?」


 その言葉に長という威厳さを微かに感じ、自然と背筋を伸ばしながら答える。


「はい、勇者としてライカさんを迎えに来ました、コウキと申します」


 コウキの自己紹介に応じるように、ドワーフの長も名乗る。

 それにならい、エルフ族、人族の長も自己紹介をはじめる。


「俺はドワーフ族のバルガンだ!よろしくな!」


 バルガンと名乗る髭面のドワーフは豪快な笑顔をみせる。

 がっちりとした筋肉に貫禄のある顔つきと、どこか頼りがいのある親父のような雰囲気の男性だ。


「私はエルフ族の長、サリオスと申します。どうぞお見知りおきを」


 礼儀正しく挨拶する彼女は、透き通るような白髪に特徴的な尖った耳と、整った顔立ちながらしっかりと貫禄の感じられる顔つきの女性だ。


「わたしは君たちと同じ人族だ。名はアルベルトと申す。此度勇者殿と会えたこと、とても嬉しくおもうぞ」


 お辞儀をしながら挨拶を交えるのは、コウキ達と同じ人族で、年齢こそ若くはないがまだまだ現役の剣士とも言える体つきと、魔物にやられたとおもわれる隻眼が印象的だ。


 三人の自己紹介が終わると、マリア達も軽く自己紹介を済ませ、コウキは話を切り出す。


「オーランさん!ライカは信頼のおけるあなたに、指導者を推薦してもらいたいみたいです。そうすれば俺たちの旅に同行してくれると話が付いてます。誰か推薦できる方はいませんか?」


 コウキが簡潔に述べると、目を丸くし、驚いたかのように声を震わす。


「な、なんじゃと!?ライカ殿の説得にもう話がついたのか!?」


 その言葉にコウキは頷くとライカに視線を送りことの顛末を話すよう促す。


「コウキは私の知識では考えられない訓練内容を提示してくれた。その内容には納得した。あとは完璧な指導者がいる!誰か心当りはないか!?」


 ライカの言葉に反応するかのように長達は頷くと、すぐに話を切り出した。

 どうやらすでにライカに代わる指導者の協議をしていて、話がまとまっていたようだ。


「ならばわたしが引き受けよう」


 名乗りを上げたのは人族の長、アルベルトであった。

 彼は立ち上がると、ライカの元へと向かい、隻眼の目でしっかりと見定めながら話を続ける。


「わたしはこう見えても昔は冒険者として、数多くの魔物と対峙してきた。この目の傷ゆえ引退を余儀なくされた。だが、指導者としてならわたしの持っている技術、知識、そしてコウキ殿が思案してくださった訓練の内容も取り入れることにより、ライカ殿が納得出来るような訓練をすることも可能だろうが、どうだろうか?」


 ライカはアルベルトの言葉をしっかりと聞き取り、大きく頷くと言葉を返す。


「確かにアルベルト程の適任はいないな!オーランもそれを了承しているのだろ?なら私はそれで構わない!よろしくたのむぞ!」


 アルベルトは腕を組みながら頷く。

 これにより、ライカの自国の防衛力という懸念点が無くなり、共に魔王討伐へと赴く事が可能となった。


「じゃあライカは俺たちの旅に同行してくれるってことでいいのか?」


「ああ、手間をかけて悪かったな!でも助かったよ!これからよろしくな!」


 ライカは笑顔で拳を突き出し、コウキもそれに答えるようににこっと笑うと、拳を軽く交える。


「ふぅ……今回少し焦りましたけど、コウキのおかげでどうにかなりましたね」


 マリアは安堵するかのように目を閉じ、胸に手を当てゆっくりと息を吐いていた。

 ティオとエリスも事が済んだことに安堵の顔を浮かべる。


 問題こそあったものの、ついにライカと合流が実現した。

 ライカの自国の防衛力という懸念が、コウキの知識によって解決されたことで、勇者の旅路はまた一歩先へと力強く進むことができたのだった。

作品を読んでいただきありがとうございます。


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