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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
勇者 第二章 テラヴェルト連邦編

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102/115

102 コウキの旅路5

 アストロム王国を出発した勇者コウキ一行は、新たな英雄、ティオ=アークスと共に、テラヴェルト連邦へと向かっていた。

 馬車に揺られ、景色の変わらない街道を数ヵ月も進み、テラヴェルト連邦への往路は順調そのものであった。


「はぁ……、なんかこう手応えのある魔物とかは出てこないのか?」


 ため息をつき、退屈そうにするコウキは、座席に深く腰を掛け、首筋を軽く叩く。

 道中遭遇する魔物がどれも下級や中級の魔物ばかりで、今の彼の実力には物足りないようだ。


 英雄との合流という使命がある以上、魔物目当てにダンジョンに潜るという選択肢がとれない上に、基本的には街道を通るため、魔物そのものに遭遇すること自体があまりないのだ。


「街道沿いを進んでいるので仕方ないですよ。こんなところで上級の魔物なんて出てきたら大問題です」


 エリスは外を眺めながら、冷静に答えた。

 彼女の言うとおり、行商人や貴族が使うこの街道に、上級クラスの大型魔物が出現すれば、物流に大きな問題が生じてしまう。


 万が一にも、そのような情報があれば、ギルドや関係者を通じて彼らの耳に入るはずだ。


「そんなことより、そろそろテラヴェルト連邦の首都グランルーツが見えてくる頃です」


 マリアは地図を見ながら言うと、ティオが魔道具の手入れをしながら、外を確認する。


「さ、さっきからあの大きな木に向かっているばかりで、景色なんてかわらないですよ……」


「その大きな木、それを中心に出来た街が、首都グランルーツなんですよ」


 マリアはティオの言葉に微笑みながら、答える。

 ティオは頬を赤くし、魔道具をぎゅっとにぎりながら、少し恥ずかしそうにする。

 一方コウキとエリスはマリアの言葉を聞き、再度その巨大な木に目を向ける。


「確かにでかいとは思ってたけど、あの下に街があるなんてな」


「ええ、想像もできませんでしたね。一体どれほどの大きさなのでしょうか?まだ遠くて、サイズ感がわからないですね」


 馬車から身を乗りだし、すっかりグランルーツに興味を持ってしまった二人に、マリアは説明を続ける。


「グランルーツにはあと五日程で到着の予定です。到着したら、まず獣人種の代表の方に挨拶をしておきましょう」


 テラヴェルト連邦は国王が存在せず、各種族の代表による、評議会制の国営を行っている。

 そして、英雄を抱える獣人種がそのなかで一番影響力を持っているみたいだ。


「あと五日だってのに、あんなにはっきりと見えるってことは……富士山か!なるほど……いやでかすぎだろ!」


 コウキは一人で手をポンッと叩くと、なんとなくのサイズ感が想像できたみたいだ。

 その言葉にエリスは腕を組み、グランルーツを見定めながら反応する。


「富士山……というのは知りませんが、確かに山のようですね」


「別名、世界樹とも呼ばれているようです。あの木が枯れるとき、世界は滅ぶ……という伝承があるほどに、とても神聖な木らしいですよ」


 資料を片手にマリアは補足すると、コウキは頭の後ろで手を組みながら口を開く。


「世界樹か……。ほんとマリアは物知りだよな」


「前にもいいましたけど、私は案内役ですからね。戦闘は最低限しか出来ないので、その分知識で皆さんを導かないといけませんから」


「知識が武器、とはまさにこの事だな。さすがだよ」


 にやっと笑いかけるコウキに、マリアは少し照れ臭そうに、指先で髪をすくい、耳にかける。

 戦闘では役に立てないと自覚した上で、知識に関しては役に立てているという実感を得て、少し嬉しかったのだろう。


「そ、そんなことより、しっかり周りを警戒してくださいよ!」


 マリアは咄嗟に話を切り替え、胸の高鳴りを押さえ込む。

 その後も会話を交えながら進み、時折魔物との遭遇はあるものの、英雄二人と勇者という戦力には、なんの障害にもなり得なかった。


 それから五日程が経ち、予定通りにテラヴェルト連邦、首都グランルーツが目の前に見えてくる。


「あと数刻で到着します。準備をしておいてください」


 マリアは荷台で休憩をとっている皆に声をかける。

 その声に反応し、各々が荷物をまとめ、すぐに降りれるように計らう。

 準備が終わったコウキは、外を見るなり、目の前の全てを覆いつくす光景に驚愕する。


「あ、あれが世界樹!?そしてこれがグランルーツ!?」


 コウキが驚くのも無理はない。

 目の前にそびえ立つのは、植物という概念を超越した、世界の柱とでもいえる巨大な大木であった。


 幹の太さは直径一キロを優に越え、そこから延びる葉や枝は十数キロにも及ぶだろう。

 そしてその傘のした、決して光など届かないスケールの大木にも関わらず、葉が太陽のように発光し街全体を淡く照らし続けていた。


「話には聞いていましたけど、想像以上ですね」


 普段冷静なエリスも、このスケール感には驚きを隠せないのか、立ち上がり、一心に世界樹を見つめる。


「あ、あの葉の光……、気になります!どんな理屈で発光しているのですかね!?」


 魔道具を専門として扱うティオは、世界樹の葉が街を照らしていることに、興味津々のようだ。


「世界樹が気になるのも無理はありませんが、到着したら、まずは獣人種の長に挨拶にいきますよ」


 マリアが皆を諭し、目の前の目標を明確にする。

 その言葉に皆は頷き、一行は街の入り口へと到着する。

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