表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第三章 Sランクへの道のり 中編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/115

100 シスカの兄

 シスカに引っ張られギルドを出ると、クレイグが待機していた。

 ギルドの壁に寄りかかり、朝日を見上げている彼は、二人の気配に気付く。


「ど、どうしたんですか?」


 クレイグは、ミナトを引っ張っているシスカを見て、何事かと顔を歪める。


「はあ……。別になんてこと無いわ。ミナトが兄さんと長話をしているから、切り上げてきたのよ。それより待たせて悪かったわね」


 シスカは大きくため息をついたあと、クレイグに謝罪した。


「いえ、大丈夫ですよ。それよりお兄さんも冒険者の方なんですね。今度機会があればわたしも挨拶をしておきたいです」


 クレイグの邪気の無い笑顔に、シスカはミナト以外には打ち明けていなかった、兄の名前を告げることにした。


「構わないけれど、あまりおすすめはしないわよ。私の兄は、ルナ=ノクト。王都最強の冒険者で、わたしが越えるべき存在よ」


 その事実にクレイグは驚きを隠せず、言葉がでないみたいだ。


「兄の名前を出すと、その存在が故によく比べられてしまうのよね……。それもあって兄を越えるまでは、あまり話さないようにしていたのだけれど……仲間に隠しておくのも良くないわよね。セイラとメリアにも帰ってきたら伝えるわ」


 シスカは少し視線を落とし、今まで隠していたことに、少し卑屈を感じているようだ。

 その様子をみたクレイグはシスカの肩にそっと手を置く。


「シスカさんはシスカさんです。わたしからすればノクト家のシスカ、ではなく零閃の狼煙の……わたしたちの仲間のシスカさんです!比べるもなにもありませんよ!セイラさんもメリアさんも、きっと打ち明けたとしても、同じように言ってくれますよ」


 クレイグはにこっと笑い、シスカを励ましていた。

 シスカもその言葉が嬉しかったのか、口角があがり、自然と笑みがこぼれている。

 落ちていた視線も上がり、しっかりとクレイグを見定め、口を開く。


「そうよね。仲間よね!なんかもう吹っ切れたわ!ありがとうクレイグ!」


「いえいえ、仲間なんですから、一人で抱え込まずにいつでも相談してくださいね」


 クレイグの言葉に、シスカは再度笑顔で頷く。


「さあ、じゃあそろそろ出発しましょうか!」


 シスカはいつもの調子に戻り、ミナト、クレイグと共に城へむかうのであった。

 城へと近づくにつれ、活気のあった喧騒は次第に静まり返り、厳かな雰囲気を帯びていく。

 道中、ミナトはギルドでのルナとの会話を振り返り、シスカに話しかける。


「ルナさん、実際話してみると口調が穏やかで、細かい気遣いもできるいい兄さんじゃないか。シスカのこともすごく気にかけてくれていたぞ」


 その言葉にシスカは少し誇らしげに、しかしどこか寂しそうな顔をして口を開く。


「そうよ。私の兄は完璧ですごい人なの。だからこそ、常にその存在が立ちはだかってきた。そんなすごい兄をもってしまった私は不幸ものよ。なんでも兄さんと比べられ、落ちこぼれだなんだと散々言われてきたわ。兄さんが私を気にかけてくれているのも知っているけれど、そんな兄さんに甘えてしまったら、私の見下し計画が台無しよ」


 ミナトは納得したかのように頷きながら話す。


「てっきりシスカは、ルナさんのことが嫌いなのかと思っていたけど、そうではないんだな。よかったよ。たしかに越えるべき相手と、手を取り合ってしまえば、越えることは難しいだろうね」


 シスカとルナの関係は、ミナトとコウキの関係に似ている。

 ただ決定的に違うのは、シスカが兄への敬愛を押し殺し、自ら孤立することで越えようとしている点だ。


 互いに手を取り合うのではなく、常に競い合う道を選んだのだった

 その結果が今の彼女の強さを体現しているのだ。


「ところで、シスカはルナさんのパーティー、アストラ・エンブレムについては知ってるのか?」


 シスカは首をかしげ、少し考え込む。


「そこまで詳しくは無いのよね……。確か六人構成で、兄さんの他に、三人Sランクの冒険者がいて、あと二人はAランクだったはず。それがどうかしたの?」


「いや、ルナさんの仲間に、俺と似たような戦闘をする人がいるって聞いて、今度話を聞きに行こうと思ってるんだ。どのような人なのか気になってね」


 ミナトの言葉に、シスカは腕を組み、答える。


「なるほどね。確かに同じ戦闘スタイルの高ランク冒険者ってのは、いい手本になるわ。ちょうど、セイラとメリアも試験で居ないし、明日にでも会ってみたらどうかしら?」


 シスカは意外にも、ミナトがルナの仲間と会うことに抵抗は無いようだ。


「ああ、じゃあそうさせてもらうよ。二人はどうする?着いてくるか?」


 その言葉にクレイグがまず反応する。


「ルナさんへ挨拶も兼ねて、同行させてもらってもよろしいでしょうか?単純にSランクパーティー、というのにも興味があります」


 ミナトは頷くと、次にシスカが腕を組み直し、しばらくの沈黙の後、静かに口を開く。


「わたしは……今回は遠慮しておくわ」


 どうやらルナのパーティーへの興味と、兄への意地が彼女の心の中で葛藤しているのか、視線が宙を彷徨っている。

 だがもの惜しげな顔をしつつも、今回は同行しないことに決めたようだ。


「わかった。じゃあ明日、クレイグと一緒にルナさんのところへ行ってくるよ」


 その後も会話を交えながら歩き続けると、城門が見えてくる。

作品を読んでいただきありがとうございます。


少しでも「面白い」「続きが気になる」

と感じていただけたら下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いします!


ブックマークをいただけると本当に嬉しいです。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ