表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第一章 冒険者講習

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/115

010 『刻付』の片鱗

 グレンとの稽古の約束を胸に、ミナトは宿に戻った。


 全身を支配する疲労感は、心地よいものだった。

 武道家として長年鍛え上げてきた身体も、この魔力と結びつくことで、まだ見ぬ高みへと到達できる予感があった。


 簡単な夕食を済ませ、一息ついたミナトは、ベッドに腰を下ろした。

 疲労困憊の体ではあったが、休む前にどうしても試しておきたいことがあった。


 魔力抑制の指輪を外す。

 とたんに訪れる吐き気や頭痛。だがミナトは堪えながら、魔力の制御に集中した。

 意識を体内に流れる魔力へと集中させる。


(あの感覚……)


 指輪のサポート無しに、自身で魔力を制御し、この魔力に順応できるか試す。

 するとどうだろうか。徐々に吐き気や頭痛は収まりはじめた。


「できた……」


 指輪による抑制された状態ではなく、解放された状態での魔力コントロールを会得した。


 そして、そのまま魔力纏いの鍛錬にうつる。


 拳から、そして腕から、微かな光が皮膚の下で脈打つように感じられる。

 今度は無理に動かず、ただその感覚を全身へと広げていった。

 魔力が神経の隅々まで行き渡り、肉体と一体になるような感覚。


 昨日の講習で得たこの『魔力纏い』は、とてつもない集中力を必要とする。

 まだ習得したばかりのミナトには数分纏わせるのが限界だった。


「はあ……はあ……」


 だが、繰り返していくうちに、少しずつ纏える時間が長くなっているのを感じる。


「だいぶ馴染んできたな……。今日はこのくらいにして明日に備えよう」


 ミナトは静かに、来るべき明日の稽古に備えた。

 

 翌朝、言われた通り8時にギルドの訓練場に到着した。

 既にグレンが腕組みをして待っている。


「昨日とオーラが違うな。……ほう、指輪を外したのか。どうやら補助なしでの魔力コントロールがうまくできたみたいだな。まあいい、始めるぞ!」


 グレンはそう言うと、ミナトに数種類の基本的な訓練を命じた。


「まずは魔力纏いの状態での走り込みだ。全身に魔力を薄く纏わせ、その感覚を体に馴染ませろ」


 ミナトは言われた通り、全身に微量の魔力を纏わせた。

 身体がわずかに軽くなり、地面を蹴る力が強まるのを感じる。

 昨夜、自分なりに特訓していたとはいえ、実際に魔力纏いの状態で動くというのは、なかなかに難しい。


 それでも、最初は訓練場を一周も走れば魔力纏いが途切れてしまっていたが、繰り返していくうちに、二周、三周と続けられるようになり、体が魔力を纏った状態で動くことに慣れていくのが分かった。


「筋がいいな。魔力纏いの時間といい、その状態でそこまで動けるとはな」


 次に、グレンは跳躍訓練を指示した。


「次は跳んでみろ。ただ跳ぶだけじゃない。跳躍の瞬間に、足裏に魔力を集中させろ。どれだけ高く跳べるか試してみろ」


 ミナトは重心を落とし、地面を蹴り上げる瞬間に足裏に魔力を集中させた。

 ズン、と全身に重いような、それでいて反発するような感覚が走り、通常の何倍もの高さまで体が宙を舞った。


 バランスを崩し、背中から落ちるが、その直前、とっさに背中へ魔力を集中させた。


 ドンッ!衝撃こそあったものの、体はほとんど痛くない。


「ほう……。咄嗟に魔力で防御したか」


 グレンはミナトの動きをじっと観察し、時折短い指示を飛ばすだけだったが、その目は彼の急激な順応性を見抜いているようだった。


 ミナトは武道家としての卓越した身体能力と、異端な魔力、そしてグレンの的確な指導により、驚くべき速さで魔力纏いの感覚を体になじませていった。


「よし!そこまで!この後は講習だ。ちゃんとうけていけよ」


 そう言い笑いながらグレンは講習室へと向かった。


 ミナトは一時間の稽古とは思えないほどの疲労を感じたが、同時に身体の底から充実感が湧き上がってくるのを感じていた。



 午前9時になると、ギルドの講習が始まった。

 この世界の魔物について、あるいは冒険に出る際に役立つ道具についてなど、基本的な知識を学ぶ。

 グレンは教卓に立ち、昨日の座学の続きを淡々と説明していった。


 そして再び午後の実技の時間になると、訓練場へと移動した。

 グレンは他の参加者の魔法の指導に時間を割くため、ミナトの訓練はほとんど自主練のような形になった。

 しかし、ミナトは構わなかった。

 朝のグレンとの稽古で掴んだ感覚を忘れないうちに、ひたすら魔力纏いの精度を高めることに集中した。


 拳に、足に、全身に魔力を纏わせ、素早く動く。

 仮想の敵を想定し、魔力を込めた打撃を放つ。

 その度に、体内の魔力がよりスムーズに流れ、肉体との一体感が増していくのを感じた。


「そこまで!今日は終いだ」


 講習の時間はあっという間だった。

 軽い挨拶を終え、受講生が帰ったタイミングで、ミナトはグレンのところへ駆け寄る。

 グレンも待っていたと言わんばかりに待ち構えていた。


「グレンさん!この魔力纏い、昨日より格段に上達したと思います!みてください!」


 ミナトはそう言い、自分自身の今纏える限界の量の魔力を体全体に纏った。

 体から溢れ出る魔力は、ゆらゆらとオーラのようなものとして知覚でき、とてつもない大きさを放っていた。


「凄まじい魔力量だな……。おい、その魔力を凝縮させることはできるか?魔力の放出は止めずに、溢れている魔力を体内に引き込むイメージだ」


 ミナトはグレンの指示に戸惑いつつも、魔力の放出は止めず、溢れ出した魔力を再び内側へ引き込むイメージを試した。


「はぁっ、はぁっ……」


 次第に白くもやっとしていた魔力は体の周りにピタッと張り付き、透明度を増していく。

 先ほどまで見えていた魔力が見えなくなった。

 だが確かにそこには、凝縮された魔力があるという感覚はあった。


「それは、魔力纏いの錬度を極限まで高め、凝縮した魔力を肉体に完全に一体化させる技術、『魔力纏い・刻付こくふ』だ。体と一体になった魔力は、纏っていることすら意識させないほど自然な第二の皮膚となる。まさか、それをこうも容易くやってしまうとはな」


 グレンは少し笑いつつも、鋭い眼光でミナトを観察していた。

 そこにはミナトに対する期待と、師としての責任があったのだろう。


 確実に、ミナトは強くなっていた。

 グレンによる指導とミナト自身の潜在能力によって、とてつもない速さで成長していく。

作品を読んでいただきありがとうございます。


少しでも「面白い」「続きが気になる」

と感じていただけたら下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いします!


ブックマークをいただけると本当に嬉しいです。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ