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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
序章 光の勇者と異端な勇者

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001 招かれざる転移

※現在大幅修正中です

 放課後の賑やかな喧騒が嘘のように、ミナトとコウキが通う武術道場には、木剣がぶつかり合う乾いた音と、胴着の擦れる音が静かに響いていた。


 二人の息を詰める気配が、道場を満たしていた。


「はぁ……はぁ……もう一本!」


 コウキの荒い息遣いが道場に響く。額から汗が滴り落ち、道着はびっしょりだ。対するミナトは、僅かに息を弾ませる程度。

 コウキは体重を極限まで乗せた渾身の一撃を繰り出すが、ミナトは一瞬にしてその意図を見抜き、振り下ろされる剣の側面に剣先を軽く当て、その一撃の重心をずらす。


 ドンッ!


 重心をずらされたコウキの一撃はそのまま地面へと叩き込まれる。

 すかさずミナトは、体勢を崩したコウキの眼前に剣先を構えると、全身の力を抜き一歩下がる。

 どうやら勝敗が決したようだ。


 武術に精通し、師範代すら凌駕する技量のミナトにとって、親友でありライバルでもあるコウキとの稽古は、高校生活の大部分を占めていた。


 互いの技をぶつけ合い、高め合う。そんな日々が、ミナトの身体と精神を鍛え上げていた。


「もう終わりだぞ、コウキ。時間だ」


 ミナトが冷静に告げると、コウキは悔しそうに顔を歪めた。


「くっそ、ミナトにはなかなか勝てねーな!」


「コウキも十分強いさ、相手が悪いだけだよ」


「それ自分で言っちゃうのかよ!」


 軽い冗談を交わしながら着替えを済ませ、道場を出た二人は、他愛もない会話をしながら夕暮れの通学路を歩いていた。


 沈みゆく太陽が彼らの影を長く伸ばし、今日という一日の終わりを告げていた。


 いつもの帰り道、いつもの風景。


 しかし、そのいつもが、次の瞬間、脆くも崩れ去る。


 突然、足元から眩い光が溢れ出した。地面に描かれた、見慣れない複雑な魔法陣のような模様が、みるみるうちに輝きを増していく。


 同時に、空間が歪むような、雷鳴にも似た轟音と、不快感が全身を襲った。


「な、なんだこれ……!?」


 コウキが驚愕に声を上げる。

 ミナトもまた、これまでにない異常事態であることを感じていた。


 抗おうにも、身体は痺れたように動かない。

 体の表面が焼けるような熱を帯び、細胞一つ一つが無理やり引き伸ばされるような激しい痛みが走った。


 光は瞬く間に二人を包み込み、視界は真っ白に染まった。まるで世界がひっくり返るような浮遊感に襲われ、激しい吐き気と共に意識が遠のく――。


 目を覚ますと、そこは先ほどまで居たはずの通学路ではなかった。


(ここは……?)


 ミナトは石造りの床にうつ伏せに倒れていた。

 その床からは微かに熱が伝わってくるのが感じられる。重い体を無理矢理に起こし、視線を上げる。


 巨大な石造りの広間。天井は遥か高く、床にはミナトを中心に、通学路で突如として現れた魔法陣と酷似した模様が描かれている。

 壁には燃え盛る松明が等間隔に並べられ、パチパチと音を立て、この空間を照らしていた。


 そして、ミナトの目の前には、豪華な装飾を身につけ玉座に座る初老の男と、ローブ姿の複数の人物が立っていた。


 ミナトは困惑しながらも、自分の身体に異変が起きていることに気づいた。体内に、今までに感じたことのない、途方もない何かが満ちている。


 それは、かつて武術で感じたことのある、微かな『気』のようなものとは比べ物にならないほど巨大な、制御不能で、暴れ出しそうなエネルギーの塊だった。


 その力は、ミナトの集中力を阻害し、体内の血管を圧迫しているかのようだった。


 しかし、それを形にしようとすればするほど、胃の奥からこみ上げるような吐き気と、頭を締め付けられるようなめまいに襲われる。


(なんだ、この力は……。そして、この吐き気は……!?)


 ミナトは迫り来る吐き気と目眩にふらつき倒れそうになるが、歯を食いしばり持ち前の精神力で意識を保つと、周囲の状況を理解しようと努める。

 すると、同じく転移したであろうコウキが目を覚まし、ゆっくりと起き上がる。


「ミ……ミナト?ここは……?」


 コウキもまた辺りを見渡し、状況を確認する。

 先程までと変わり果てた景色に、驚愕の顔を浮かべながらも、冷静さを保とうとしている。

 様子を見る限り、コウキはふらついたりせず、気分も悪そうには見えなかった。


「俺も今目が覚めたばかりだ。ここがどこで、どういう状況なのかは……聞くしかないようだな」


 ミナトは未だ消えない吐き気と目眩を必死に堪えながらも、玉座に座する人物へと向き直った。

 しかし、歓迎の言葉はなかった。


 玉座の男は、引きつった笑みを浮かべ、隣に控えるローブの側近に鋭い視線を投げている。側近もまた、青ざめた顔で何かを王に耳打ちしていた。


(何だ……? 何かがおかしい)


 不穏な空気が張り詰める中、男は一つ大きく咳払いをすると、無理やりに作った威厳ある表情で、眼下の二人を見下ろし、口を開いた。

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