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蒼緋伝〜蒼と緋色の忘却  作者: Shing
蒼と緋色の忘却
41/44

Oblivion Episode 41 神野

混沌の渦の先。

そこは、自分達と暮らす世界と外見上は変わらない、しかしはっきりと空気感が違う異世界が広がっていた。

無造作に数多の武器が散らばり、または大地に突き刺さっている辺り、ここはかつて戦場にもなったのだろうか。

曇り空が不穏さを醸し出す中、岩壁に囲まれた平原の中心に、謎の男が佇んでいる。

シルエットそのものは今まで対峙してきた敵のどれとも当てはまらなかったが、その圧倒的な覇気から、誰しもがこの大戦を引き起こした張本人であることは明らかだった。


??「来たか…【比翼の蒼緋】と謳われし公国の双璧、並びに勇名轟かせし【白銀の翼】。」

蒼の公子「貴方が皇帝…」


虚だった玉座の主であるその男だが、未だ謎が多い。

連合軍は、ウルノ帝国の皇帝のことを名前すらも何ら把握はしていない。

【七星】を束ねること以外情報がなく、シングをはじめとした斥候で探らせても全容が掴めずにいた。

緊迫した場面ですら玉座が空位だったのだ、そもそもほとんどアークトゥルス城には居なかったと考えるのが自然だ。


??「お初にお目にかかる。ウルノ帝国皇帝グランシャリオ。直属の手足である【七星】を束ね、異世界との接触を図る者、それが俺だ。」

蒼の公子「アリエル公爵家嫡男___・アズル・アリエル。皇帝グランシャリオ…まさか、今日まで戦場で邂逅することがなかったとは、思わなかったです。」

グランシャリオ「殆ど玉座を空けていた上に、他所に活動拠点を設けていた所為だな。ある意味、皇帝らしくもないだろうな。」


グランシャリオが自嘲気味に内情を明かすが、圧倒的強者感は顕在だ。

よくよく見ると、その装束も皇帝というよりかは歴戦の勇者とも呼ぶべき風格で、あの【七星】達をまとめ上げていると初めて聞かされたとしても何ら不思議ではない。


グランシャリオ「初めてと言えばそこのリーヴェの民…実物を見るのは2人目だが、なるほど、実力は申し分ない。」

緋色の少女「私以外の、どなたかと…?」

グランシャリオ「ああ誤解しないでもらいたい。何も手にかけたわけではない。」

蒼の公子「皇帝グランシャリオ…我が国や周辺国に侵略したのは、何のためか?貴方は4年もの間、今までどこで何をしていたのですか?」

グランシャリオ「良いだろう。どの道最後だ、疑念は取り払って戦いたいものな。」


緋色の少女を背後に下げ、蒼の公子が前に出てグランシャリオに問いただす。

すると思いの外応じた彼を前に、蒼の公子は仲間に臨戦態勢を解除させる。

これまでの動向が、彼の口から明かされる。


グランシャリオ「端的に答えるのであれば、俺もお前達と同じように、各地を転戦していた。時には痕跡すら残さないように連合を蹴散らし、時には戦略的撤退により情報すら残さないように。お前達に情報が何一つ届かなかったのは、そのためだろう。」

蒼の公子「何故俺達の前に姿を現さなかった?それ程の力を持ちながら、帝国の劣勢、耳に届かなかったはずがないだろう?」

グランシャリオ「尤もだ。だが、俺にとって連合軍との戦いに勝つことが最終目的ではなく、別にあったということだ。俺の行手を阻まない限りは好きに泳がせるのが最良と考えた。遠からずお前達との戦いは避けられなかったかもしれないがな。」

蒼の公子「目的…?」

グランシャリオ「我々の世界の各地に点在する異界の門の存在は、ご存じか?」


白銀の翼と無碍に出会さなかったのは意図的だったことがここで判明する。

さらにあまりこの戦いの果て、勝敗にはそこまでこだわっていなかったことも告げられる。

勝利よりも重要だとされる、各地に佇む異界の門の存在は、蒼の公子も知るところである。


蒼の公子「我が国にも一つある。そして、ここへ来る直前にも。」

グランシャリオ「そう。この世界には5つ存在する。アリエル公国の他に、草原部族キルリス領、魔導の国エクノア、飛竜の国ノーレ、そして、今し方お前達が通ってきた我が国の物で全てだ。俺が各国に戦を仕掛けて秘密裏に推し進めたのは、各異界の門にある仕掛けを施すこと。狙いが門そのものであると悟られないようにな。」

緋色の少女(…!)


緋色の少女はハッとする。

蒼の公子はキルリス族との国交を結ぶ際足を運んでおり、異界の門の存在は把握していた。

緋色の少女もまた、エクノア王国に門があることは知っていたが、グランシャリオの狙いがそれであったということは、ある仮説が浮上した。


グランシャリオ「キルリスとノーレは最終的には陥落こそできなかったが、干渉には成功した。中立国のエクノアには乗り込むことが難しく、留学生を派遣して間接的に接触的を図った。残るはアリエルの門、そこに干渉できれば、俺の目的は果たされる。」


グランシャリオが今日に至るまで白銀の翼と相対しなかったのは、人知れずキルリス領とノーレ帝国を相手取り戦線を開いていたことが明かされた。

さらに、正式な手続きを踏まなければ他所者の侵入が困難なエクノア王国には、留学生として派遣したフォーマルハウトとレグルスに密命を与えることでこの難問をクリアすることに成功した。

残るアリエルの物は、比較的流転の街【オラクル】が領都ファルタザードに地理的に近いため後回しせざるを得なかったという。

4年もの月日があって、なぜ一度も他の戦線で皇帝の出現が報告に上がらなかったのか疑問が晴れる。

あくまで彼の狙いが異界の門への干渉であれば交戦は最小限、敵を全滅させれば報告に上がらず、或いは配下の【七星】が中心となり暗躍していたとなれば、その存在を知るには困難だっまかも知れない。


蒼の公子「全ての異界の門の起動…貴方はその先に、何を望んでいる?」

グランシャリオ「…フフフ。」


グランシャリオは蒼の公子の問いに対し、不適な笑みを浮かべると共に後方に広がる雄大な草原、聳え立つ岩壁に視線を移す。

そもそもというもの、ここは一体どこなのだろうか。

伝承に謳われる異界の門の向こう側という以外、蒼の公子達は明確な答えを持っていない。

グランシャリオが目指した世界。

その正体が、彼の口から告げられる。


グランシャリオ「見よ、扉の先に広がっていたこの世界を。お前達も我々のいた世界と然程変わらないと思っただろうが、ここは紛れもなく違う世界。扉の向こう側には名前の通り異なる世界に繋がっていると伝わっていたが、伝承は本当だったのだ。」


グランシャリオが大剣を地面に突き刺し、誇らしげに語った。

今まで各地に点在する物言わぬオブジェだった物が、何らかの方法で彼の手により伝承を真実とし今この場所にいる現実に、異論を挟む余地はなかった。


グランシャリオ「だが、我々のいるこの地だけは一際違う。確かに違う世界だが、ここはかの【天空の国 リーヴェ】の加護を受けていることが判明した。お前達は知っているか?リーヴェの民は…」

緋色の少女「!やめてください…!」


緋色の少女がグランシャリオの言葉を制止した。

リーヴェの民である彼女が知るところであり、なおかつ今この場にいる仲間達に知られたくないと悟ってのことだろうか。


緋色の少女「今その話は、無関係なはずです。」

グランシャリオ「…当事者だものな。よかろう、他人を巻き込んだ秘密を暴露する趣味はない。」


グランシャリオは解説を取り下げたが、緋色の少女の表情は焦燥感に満ちていた。

余程の重要な秘密なのだろうか。

だが、この場でグランシャリオと彼女の他にその秘密を彼女の口から明かされた者が一人いる。


レティシア(___様…)


今この場で明かされては確かにまずかった。

グランシャリオが思いの外物分かりが良い人物であることが、この瞬間に限り救いであった。


グランシャリオ「5つの門のうち4つの干渉に成功し、不安定ではあるが扉を通じて両世界の行き来をできるに至った。かつてはその不安定さが災いし、こちら側の住民が我々の世界に迷い込んだこともあったという。俺の部下にもいるが、中には自ら飛び込んでくる無謀な人物もいたとか…」

アイリ「!」

蒼の公子「まさか…」


蒼の公子の視線がふとアイリに向けられる。

グランシャリオの指摘に、蒼の公子は4年前に訪れた【流転の街 オラクル】で住民から聞かされた逸話を思い出す。

オラクルに佇む門から、光が漏れ出したという老人の逸話。

どことも知れぬところからやってきた物が流れ着くか多い。

物に限らず、人や動物も流れ着くのだとしたら…

そして、自ら乗り込んできた人物の存在に、心当たりがある。


蒼の公子「アイリ、【月明かりの修羅】、【無垢なる凶星】、シング…?」

グランシャリオ「ほお、その小狐もか。そういえば【月明かりの修羅】と【無垢なる凶星】は何かを探していたようだな。何でも、故郷で祀られていた狐の行方を追っていたとか。」

緋色の少女「…!」


今までの謎が、点と点とが全て繋がっていく感じがした。

アイリの故郷はこの世界であり、神聖な存在として崇められていたこと。

そのはずが、12年前に何かの拍子でオラクルに通じる異界の門を通じてこの世界に迷い込んだこと。

【月明かりの修羅】と【無垢なる凶星】の本来の目的はアイリを連れ戻すこと。

シングは自分達の世界に迫る危機を察知し、それを未然に防ぐために、やがては黒幕に加担する同郷の現【七星】を討伐するためにこの世界に乗り込んだこと。

異なる世界でありながら、【天空の国 リーヴェ】の加護を受けるこの地に、グランシャリオの真の狙いがある。


グランシャリオ「古よりリーヴェの民と盟約を結ぶ一族がこの世界に住まうという。5つある異界の門は尽くがこの場所に繋がる。全ての扉を掌握した時、この地に【天空の国 リーヴェ】へと続く扉が出現する。そしてこの世界には、これら全ての扉の開放に有効となる秘宝、リーヴェの民がこの地の民に託したとされる【マスターキー】が存在する。お前達を倒し、アリエルを手中に収め、天使の加護を受けた神の名残ある平野、【ヴァルハラ】と名付けたこの地を礎に、リーヴェの民を超越し、俺は双世界の覇者となる!!」


グランシャリオの野望が、明らかになる。

2つの世界を跨り、彼は幻の【天空の国 リーヴェ】への足掛かりを得ようとしていた。

リーヴェの民がどれ程強大か、緋色の少女とのやり取りから知っている口振りだった。

彼の行動は、そのリーヴェの民すらも恐れるどころか標的にしているとも捉えられる。

そしてシングとアイリはこの地の出であることが示唆された。

同郷と思われる【七星】の【月明かりの修羅】と【無垢なる凶星】は、どこまで把握していたのか。

疑問は尽きないが、彼の野望には緋色の少女のルーツであるリーヴェの民、シング、アイリ、そして、両世界の住民の存亡が脅かされている。

グランシャリオを止めるべく、蒼の公子は決意を新たにする。


蒼の公子「違う空間に繋がったかと思えば、アイリとシングの故郷が関わるとは思いもよらなかった。この戦いで、多くの生命が失われた。そしてその先に臨む貴方の野望には、リーヴェの民、俺達の世界とこちらの世界の住民と、より大勢の人達の生活が危機に晒される。両世界の頂点に立ち何を望むのか、計り知れませんが…」


もはや問答は不要であった。

蒼の公子が携える剣に手をかける。

それを合図に、仲間達も各々が臨戦態勢を取る。

強大なリーヴェの民すらも巻き込もうとする彼を前にしながらも、恐れはなかった。


蒼の公子「ウルノ帝国皇帝グランシャリオ…今ここで、貴方を止める!!」

グランシャリオ「そう来なくては!我が精鋭集団、【七星】を尽く退けたその力、俺に見せるが良い!!だがその前に…こいつが相手をしよう!!」

蒼の公子「!?」


グランシャリオが白銀の翼との交戦を前に、突如異様な魔法陣を中央に展開する。

光と闇の奔流が渦巻き収束した渦の中心に、何者かが立っていた。

その正体は、緋色の少女が出会ったのを最後に、その後行方がわからなくなっていた、変わり果てた同志の姿。


緋色の少女「そんな…」


その眼差しに既に生気は宿っておらず、もはや操り人形と化していた。

最悪は想定していた。

今まで約定や期限を破ったことがなかったからこそ、戻らなかった場合敗死した可能性も軍を率いる者として無論脳裏にはあった。

その最悪を、遥かに凌駕する事態が、目の前に立ちはだかっていた。


蒼の公子「どうしてここに…シング…!」

シング?「…」


蒼の公子の呼び掛けに、その人物は何の反応も示さない。

【異邦の反英雄】。

グランシャリオとの決戦を前に、後に記録でそう呼ばれるようになるシングと思わしき男との戦いを強いられることになった白銀の翼。

忘れ得ない悲しき戦いの序章が、幕を開ける。

・白銀の翼

緋色の少女…戦乙女 Lv49

蒼の公子…ノーブルロード Lv49

アイリ…上忍 Lv40

ユーリ…勇者 Lv40

レティシア…ミスティックナイト Lv44

オルランド…ソードマスター Lv44

オリヴェイラ…グレートナイト Lv43

フォアストル…スナイパー Lv42

モージ…ビショップ Lv43

シャール…パラディン Lv44

テュルバー…ウォーリアー Lv43

チャルデット…遊牧騎士 Lv42

ダノワ…槍戦将 Lv42

ナモ…ファルコンナイト Lv39

ジラール…ドラゴンマスター Lv43

ライノルト…賢者 Lv43

サロモン…ソーサラー Lv43

フロリマール…ホーリーナイト Lv40


・異邦の国

【異邦の反英雄】…アサシン Lv56


・天を目指す者

グランシャリオ…オーバーロード Lv??

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