表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼緋伝〜蒼と緋色の忘却  作者: Shing
蒼と緋色の忘却
33/50

Oblivion Episode 33 森時

季節は移ろい、アリエル公国と国境を接するウルノ帝国領南部、昴の街、【アルデバラン】。

【ファルタザードの戦い】から【アミアンの戦い】、そして今日に至るまで、アリエル連合軍は快進撃を続けていた。

そしていよいよウルノ帝国領に入り、帝都【カーラネミ】への足がかりを得るべく、ついに連合側の逆襲が始まった。

迎え撃つウルノ帝国軍も、随所で【七星】を投入し、そしてこの戦いで3人を投じて来た。


烈風「塵風の唸り、【ウインドガスト】!!」

緋色の少女「真紅の戦槍、【スカーレットランス】!」


【七星】が一人、【烈風の神槍】が繰り出す暴風の渦を、緋色の少女の投擲した赫く燃える槍が掻き消す。

そのまま術者を目掛けて貫こうとするも、ここで未知なる力に阻まれる。


樹海「荊の壁、【ソーンウォール】!!」


【樹海の番人】が使役する、地面から棘の張り巡らされた棘が壁状に隆起し、【烈風の神槍】を護る。

属性の相性で言えば火属性に分があるが、未知の力を前に苦戦を強いられていた。


緋色の少女「草木の力を操る使い手…エクノアでも見たことがありません。」

レティシア「初見の魔法は対処を間違えると命取りです。気が抜けません!」


どこからともなく木や草、根を顕現させては、それを変幻自在に攻撃手段に用いてくる。

これ程の森の力を操るその力量に加え、何と彼は斧を携えた前衛型なのだから手強いはずだ。

その彼と双璧を成す、風を操る槍の達人、【烈風の神槍】の2人に加え立ちはだかるもう一人の【七星】。


魔女「強いね。【鳳翼】と【虚空】ばかりか、【凶星】と【修羅】に至っては二度も撃退しているだけはある。」


【烈風の神槍】と【樹海の番人】とは対照的に、後衛に徹し前衛の2人をサポートするその人物こそが、【七星】の中で最も特異とされていた【時の魔女】である。

後になって【無垢なる凶星】もまた相当な曲者であり負けず劣らずと判明したが、【虚空の伝道者】と【樹海の番人】が異端の魔法を、そして【鳳翼の剣】と【月明かりの修羅】、【烈風の神槍】が前衛型であると同時に卓越した魔法を扱うことから、【七星】は超越集団であると疑いようがなかった。


烈風「悪い、風の使い手としては、あの女には相性的に不利だ。」

樹海「燃え盛る焔の操り手、それも火属性を使わせたら右に出る者はいないとされる伝説のフィーニクス家の出と聞く。流石は次期当主の懐刀だ。」

魔女「じゃあ、真っ先に叩くべきは…」

樹海「言うまでもない。」


【月明かりの修羅】と【無垢なる凶星】との戦いでも見られた、相槌だけで作戦を共有する、長きに渡り苦楽を共にしてきた間柄でしか発揮できない意思疎通。

【七星】の3人が仕掛ける。

まず【烈風の神槍】が白銀の翼の選抜隊に切り込む最中、【樹海の番人】と【時の魔女】は留まる。


魔女「言霊の戯れ、【スピードスペル】。いくよ、お兄様。」

樹海「ああ。」


2人は兄妹。

意外な関係性に驚く暇もなく、妹の【時の魔女】が兄の【樹海の番人】に何かを施す。

詰まるところ【烈風の神槍】は牽制。

これを邪魔させないべく、【烈風の神槍】が前に出たのだ。

【時の魔女】の支援を受けた大斧を地面に突き刺し、大地に手を当てる【樹海の番人】。

次の瞬間、どこからともなく現れた木の根が緋色の少女の足首に巻き付く。


緋色の少女「!?」

蒼の公子「___!!」


直後、巻き付いた片足ごと緋色の少女を上空に放り投げ、さらに追撃とばかりにその真上から木槌を模った森を司る魔法が彼女を叩き落とそうと立て続けに繰り出されていた。


樹海「森霊の戦鎚、【ウッドハンマー】!」

蒼の公子「(馬鹿な…撃つまでの間隔が早過ぎる…!)させるものか!真空の太刀、【ウインドカッター】!!」


片足に絡まった根を振り切れないでいる緋色の少女を救うべく、蒼の公子が無数の風の刃で切断を試みる。

しかし根を抉るように命中したとはいえ、切り離すにはあと一歩のところだ。

巨大な木の斧が振り下ろされるまで時間がない。


蒼の公子「アイリ!頼んだ!!」

アイリ「はぁぁぁ!」


そこにタイミングを見計らっていたアイリが根に飛び掛かり、巧みな短剣捌きで強靭さが損なわれた根を斬り刻み緋色の少女の救出に成功した。

空中で体勢を崩されたままの彼女だったが、すぐさま翻し距離を取った。

緋色の少女を解放したアイリの身軽さに、【樹海の番人】も苛立ちを隠せない。


緋色の少女「アイリ、ありがとう!!」

樹海「ちょこまかと…!大樹の一鉾、【アイヴィーストライク】!!」

レティシア「雷光の軌跡、【チャージブラスト】!!」

アイリ「!!」


標的をアイリに定めた【樹海の番人】の攻撃を、レティシアの雷魔法が相殺する。

【七星】にも引けを取らないその魔法の質、エクノア魔導学院の一期生第三席の肩書きは伊達ではない。


樹海「エクノアの魔導騎士か…!」

レティシア「私(と___様)の___様をよくも…!!我が雷鳴が貴方を貫きます!!」

烈風「勇ましいな!だが後衛が前線に出過ぎだ!!」

レティシア「!?」


馬上から【樹海の番人】を牽制するレティシアだったが、【烈風の神槍】の接近に気付かず懐寸前まで攻め入られてしまった。

その窮地を、仲間が救う。


烈風「!?」

ユーリ「では、僕が出る他ありませんね!【七星】を前に後ろで控えているわけにもいきませんから!」

オルランド「よく言った!まあでも殿下は程々にしてくださいよ!特に貴方の身に何かあってはことですから!」


敵味方が入り乱れるこの戦場において、白銀の翼選抜隊は巧みに【七星】を相手に立ち回っていた。

頼もしい味方が奮闘する傍らで、蒼の公子はその洞察眼で敵の分析を急ぐ。

【樹海の番人】は、【虚空の探究者】や【無垢なる凶星】、【時の魔女】同様に未知なる魔法、自然の力を操る使い手であると見て間違いないだろう。

木を由来とする攻撃を繰り出して、その他にも草花を模した力を奮い、加えて斧を自在に操ってくる。

そして【時の魔女】が使用した【スピードスペル】。

【樹海の番人】を対象に【時の魔女】が手掛けた直後、【樹海の番人】の魔法が緋色の少女が対処に遅れる程の速さを見せつけた。

おそらくは一定時間魔法の詠唱を破棄できる性質を持つと見て差し支えない。

これまで【時の魔女】を脅威に捉えていたのは、自身や相手を他所に飛ばす空間を操る類の性質を操る魔法の使い手と見てきたからである。

もし空間のみならず、【スピードスペル】のような時間をも操る性質を併せ持つとするならば…


蒼の公子「【時の魔女】のサポートを止めよう!魔法の詠唱を加速させる!!」

烈風「それをさせないのが俺達2人だ。」

樹海「俺の妹に指一本触れられると思うなよ…!」

オルランド「上等だ!!絶対にこじ開けてやんぞ!!」


昴の街【アルデバラン】で激突する【七星】が三人、【烈風の神槍】、【樹海の番人】、【時の魔女】と、迎え撃つは蒼の公子、緋色の少女、アイリ、ユーリ、レティシア、オルランド。

自然の力と時空の力を操る兄妹に加え、風の槍を携え立ちはだかるウルノ帝国の精鋭達。

【比翼の蒼緋】含め数では勝るとはいえ、緋色の少女が一度は不覚を取った。

今この場にいる面々で、着実に手数で攻めて追い込む。


蒼の公子「いくぞ…!」

烈風「来い…!」


ウルノ帝国への逆襲の一歩となる前哨戦。

【七星】三人を擁する帝国軍に、アリエル連合軍が挑む。

・白銀の翼

緋色の少女…戦乙女 Lv43+

蒼の公子…ノーブルロード Lv43+

アイリ…上忍 Lv34

ユーリ…勇者 Lv34

レティシア…ミスティックナイト Lv38

オルランド…ソードマスター Lv38


・七星

【烈風の神槍】…槍戦将 Lv42

【樹海の番人】…ウォーリアー Lv41

【時の魔女】…賢者 Lv39

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ