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008, 異質な冒険者


「到着しました!」


 出発から七日目、夕暮れ時俺等は酒の町ララグリーナへ足を踏み入れた。


 この町は国王陛下も足を運ぶ程栄えた町であり、敷地へ入るには厳重な警備を潜る必要があった。


 国籍証明を持たない俺は最初焦りはしたが、多彩なシャルロットのお陰で偽造した証明書を用いて町へ入る事ができた。


 シャルロットが作った証明書は警備の方も偽造を見破れない程、忠実に再現されていた。


 もし偽造がバレたら危うく死罪になり兼ねないと町の門を抜けた際耳打ちされ、宿所を定めるまで生きた心地がしなかったが。


 宿屋の主人は気前が良く、軽く事情を説明すると賃金は帰りでまとめて受け取ると快く迎えてくれた。


「荷物も預けた事ですし僕は仕事を探したいと思いますが、シャルロットさんはどうされますか?」


「私の手持ちも心許ないのでご一緒致します」


 宿代は一人一泊20ダリン、不思議とこの国の字を読み書きする事も出来ていた為、サインの際にも手間が掛からなかった。


 シャルロット曰く20ダリンという金額は風呂付きの宿屋にしては破格らしく、自分なりにも町の出店の看板等に目を通し物価の相場を理解した頃、良心的な宿屋であると再び感じた。


 日本円で例えるのであれば1ダリンが200円程の価値を持つ硬貨である。


 この町での金の稼ぎ方は大きく分けてニつで、商業人と冒険者、冒険者とは主に魔獣の討伐を生業とする職業で命を懸けている分報酬は弾む。


 シャルロットという心強いパートナーがいるので俺達は迷わず冒険者を選択した。


「では、冒険者としての初期ステータスを計らせて頂きます。数値に応じて適正なランクが与えられます。ランクが高い分高難易度の依頼が受けられますよ。勿論、戦績に応じてランクの昇格は認められております」


 数人の若者と説明を受けた後、各々個室へ案内されていく。


 ランクはE〜A、基本的に新人はEランク冒険者として門出を迎えるそうだ。

 Sランクという異例も存在するそうだが在籍しているのは現在4人と極小数であり、その内3人は何処を拠点に活動をしているのかも不明で、謎の多い人達だそうだ。


 先に個室に案内されたシャルロットが姿を現した。


「どうでしたか?」


「Cランクでした、期待の新星なんて評されてしまいました」


 照れる彼女を前に、この先の自分の結果が手に取る様に分かる。


 ーー幸か不幸か、最後まで残ってしまった。


「えっと…… マサ、ムネさん?」


「はい」


 自分の番が回って来た。

 とはいえ、残されたのは自分一人なのだが。


 過度な期待は初日に全て捨ててきている、どんな結果でどんな皮肉を吐かれても無心を突き通すのだ。


「失礼します」


 部屋の中は薄暗く奇妙な空気に包まれていて、視線の先には輝きを放つ水晶を前に鎮座する老婆の姿があった。


 老婆は片目でこちらの顔を伺い、座る様に指示した。


「……お主、人間か?」


 口を開いた老婆はそう俺に問いた。


「えっと、それはどういう意味でしょうか?」


 僅かな沈黙が流れた後、老婆は再び口を開いた。


「歳は12といったところか。お主からは魔力を一切感じ取ることができぬ、その歳で魔力を持たぬ人間など異例じゃ、気味の悪い」


 シャルロットも俺の魔力量が少ないと口にしていたが、この老婆は一切と断言した。


「魔力が……ない……?」


「さあ質問に答えろクソガキ。お主は人間か、そうでないか」


 俺に向けた眼差しからは怒りの情を感じ取れる。

 この地雷を踏み抜けば死。


 固唾を飲み込み、質問に答えた。


「僕は紛う事なき人間です」


 老婆はそうかと一言、そして退出を命じた。


 冒険者の資格を取得出来るか不安が生まれた。

 退出した後は受付で冒険者の証明書となる冒険者カードを交付させる為、足を向かわせなければならないのだが気が重たく足が前へ出ない。

 緊張感による胃痛に侵される。


 大理石で舗装されたフロアタイルから発する足音がコツコツとこちらへ向かって来る。


「あ、マサムネさんこんな所にいた。終わったら受付に来て下さいって言ったじゃないですか」


 受付にいた女性であった。


「すいません、ちょっと胃痛があれで」


「大丈夫ですか? あ、あとこちら冒険者登録が済みましたので冒険者カードの方お渡ししますね」


 俺は冒険者として認められたのか。


「はぁ、なんか疲れた」


「ふふっ、待合室でお連れ様がお待ちですよ」


 笑顔でそう言い放ち彼女は去っていった。


 待合室へ足を運ぶと、そわそわしたシャルロットの姿があった。

 何故彼女が緊張を催しているのだろう。


 俺の姿を見つけると表情を明るくさせ、走り寄ってくる。


「遅かったですね、何かありましたか?」


 喜怒哀楽がハッキリした子なんだと再認識する。

 不安そうに凝視する彼女を見て肩に乗っていた重荷が退(しりぞ)いたような感覚がした。


「いえ、何でもありません。これでやっと仕事ができます、さっそくどんな依頼があるのか見に行きましょう」


 もじもじとした彼女が何か言いた気にしている。


「あっ。先にご飯を食べてから行きましょうか」


「っ! はいっ!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 冒険者カードに記載された俺のステータスは殆どが底辺並の数値で魔力に至っては0と記載されていた。

 だが俺の適正ランクを示した枠にはどういう理由か、冒険者ランクBと記載されていた。

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