魔道具を作ろう
「よく来てくれたわ」
マリーゴールドがメイド達を出迎えた。
とりあえずタウンハウスに入る
「一応座れるように軽くは掃除したのよ、さあとりあえず座って。」
「恐れ入ります、お嬢様のお許しが出たわ、腰掛けなさい」
メアリーがメイド達を促す
「かしこまりました」
皆が座るのを待ってからマリーゴールドは話し出す
「しばらく忙しくなると思うの。まずいちばんにしなくてはいけないのが新製品のアイデアを工房で作ってもらうこと。何点かあるのだけどね。それから商会に赤い皮の芋を探してもらいたいの。でも商会になめられないためにも魔道具を作ってからになるかしら?」
「お嬢様、ガルシア工房にて鎧と剣は無事発注してきました。」
「ありがとう。」
「メアリーさんがガルシアさんに気に入られてました!」
ルナが報告すると
「あら!私のメアリーが取られてしまうのかしら?たしかにメアリーはキリッとして美人だものね」
「私は生涯マリーゴールド様にお使えします!」
「ふふ、でもメアリーの幸せも願っているのよ」
そこで一呼吸おいて
「さて、これから何が起こるか皆に教えようと思うわ。」
皆がマリーゴールドの言葉を待つ
「まずこのタウンハウスに刺客が来るはずよ、そうね、3日後〜1週間後といったところかしら?」
皆が驚きで目を見開く
「お嬢様それは・・・」
「刺客を放つのはお父様、現公爵代理のグリーズ・エリンシュタインよ。」
「なぜ?と思うかしら?、継母達は決して私を外に出してはいけなかったの。なぜならできが悪くて表に出せない気狂い令嬢でなければ正当な後継者である私を廃嫡できないから。そんなこともわかってないと今頃お父様は頭を抱えて覚悟を決めている頃でしょう。」
「私が外の人と接触したのも良くなかったでしょうね。マダムは私がまともである事を証言するでしょうから。そうなると私を殺すしか選択肢はないのではないかしら。」
マリーゴールドは更に続ける
「ただ私を殺しても公爵家の血を一滴も有さない異母妹は公爵家継げないのだけど、親戚のところが後継者に選ばれるはずよ」
「お嬢様、貴族の後継者に刺客を放ったのがバレたら極刑ですよね?その親戚筋というのがグリーズを操っている可能性が高いかと」
「メアリー。あなた言う通りね、それが可能性高いわ。継母と異母妹は何も考えてないと思うもの」
「というわけで襲撃に備えて魔道具を作ります」
「作るのですか??」
「そうね、若くて小回りがきいてこれから伸びてきそうな工房そこに作ってもらいたいわ。作りは単純なものだから見た目にこだわらなければすぐできるはずよ」
〜~~~~~~~~~
メイド達が駆けずり回って情報を集めてきてくれた。
「お嬢様、こちらの工房は大手商会からのマージンが低すぎるからと最近契約を破棄されたそうです。腕も確かで今仕事は立て込んでないと予想されます。」
名前はリーンサウス工房。
「ごめんください。誰かいらっしゃいますか?」
メアリーが扉を開けて呼びかける
「はーい。少々お待ちをーー!」
そう言って奥から青年が出てきた。
「こちらの工房は腕がいいと評判ですのでマリーゴールドお嬢様が魔道具の作成を依頼したいとおおせです。」
「え?貴族様??、ちょっと!お兄ちゃん!ちょっと来て!大変!」
青年はアタフタしたが少し落ち着いたのか顔を真っ赤にして
「・・少々お待ち下さいませ、制作担当のものをお呼びいたします」
奥からいかにも今も作業してきたといった格好で青年が現れた。
「貴族様だって?」
「はじめまして、私はマリーゴールド・エリンシュタインと申します。これから羽ばたく若き工房と出会えて光栄ですわ」
そうマリーゴールドはお辞儀をした。
青年二人はぽかーんとして言葉を失っている。
あとから来た青年が我に返り
「失礼した、俺が工房長のリーンサウスだ、こっちは制作、販売、交渉なんでも担当のリーンハルト。礼儀は勘弁してくれ。」
「先程は失礼しました、リーンハルトと申します。どのような魔道具をお望みでしょうか?」
「さっそくですけど、例えば・・・」
説明するマリーゴールド。
「簡単にできるが離れたところで音を鳴らすとなると少し工夫がいるな。それにしてもこんなもの何に使うんだ??」
不思議な顔をするリーンサウス
「試作品ができたら説明するわ。見た目は整えなくてもいいのですぐ作って欲しいの。自宅用に10セットほどね。とりあえず依頼料は金貨5枚でどうかしら?」
「それでお願いします!お兄ちゃん!貴族様の気が変わらないうちにすぐ作って!」
「それとリーンハルト様。この商品を見た目も洗練させたうえで商品登録して売り出そうと思ってるのですけど、この工房でお作りいただけるかしら?」
少し考えるリーンハルト
「うちの利益がいかほどにのるかにもよりますがこんなの売れますか??」
「ええ、とてもたくさん売れるはずよ、特に貴族に。」
こんなものがねぇといった顔のリーンハルト。
「そうそう、もう3つほど作って欲しいものがあるの。紙で試作してきたわ。これを作れるかしら??」
「こっちはここから熱風が出るように熱風と言っても髪に当たるものだから熱はそこそこの温度ね、熱風と普通の風が出るならなおいいわ」
紙の模型を手に取ると
「作りは単純ですね、お兄ちゃんならすぐにでも作れそうです。」
「こっちはこの部分が熱を持つの、これも熱が上がりすぎないよう、そしてここで髪を挟んで巻いていくの。」
リーンハルトがメモを取りながら話を聞く。
「もう一つはここが高速で回転するように。」
「こちらはまた変わったものですね。出力によりますが魔石は小さなものでも行けそうですね」
皆さんわかるかと思うが、防犯装置、ドライヤー、ヘアアイロン、そしてハンドミキサー。
本当は化粧品とかシャンプーとかリンスとかハンドクリームとか作りたいんだけど、前世普通の人だったし、どうやって作るかなんてわからないもの!
ハンドクリームは尿素がいいらしいけど尿素って何?って感じ。
私の拙い模型を見て説明を聞きながらリーンハルトさんは設計図を書いていく。
「試作品ができたら連絡いたします。」
「リーンハルトさん、お金の話しなくていいのかしら?そうね、私が頼んだものはすべて商品登録する予定なの、正式な商品になると1つにつき金貨10枚、できた商品は全て買いとるわ。原価プラスいくらが妥当なのかしら?でも貴方たちに莫大なお金を約束するわ。」
リーンハルトは考える。騙されてないか?搾取されていないか?いつだって貴族や商人は強欲だ。
そこにリーンサウスがやってきて、
「とりあえず1つ作ってきた、これでいいなら残りはすぐ作るぜ」
そう言って商品を机において使い方を説明しだした
「とりあえず何に使うか説明してくれ」
「そうね、とりあえずどう使うか見せるわ」
そう言ってマリーゴールドはメアリーとともに外に出ていった。
「メアリーはそこで少し待ってて、そうね私が工房にはいって10数えてから戻ってきて。」
そう言ってマリーゴールドは戻っていった。
マリーゴールドとリーンサウス、リーンハルトは机の上のブザーを無言で見つめる。
ブザーが鳴ってすぐにメアリーが工房に入ってきた。
「まず、ブザーを切るスイッチがほしいわね。それと外の装置のオン・オフをこのブザーからできるようにしたいわ。リーンサウスさんできるかしら?」
「それくらいならできるぞ」
リーンハルトが恐る恐るといった感じで
「これは来客を伝える装置でしょうか?」
「いいえ、これは侵入者を知らせる装置よ」
マリーゴールドが答える
「ここにたくさんのお金があるとして、賊が侵入したときに知らせてくれたら対応しやすいでしょ?これがあると被害は減るはず、貴族や商人に売れると思わない?」
リーンハルトが手を叩いて
「なるほど!これはすごい商品になりますね!」
「そうね、例えばこのブザーをもっと大きくして、どこから侵入してきたかわかるようできたら商品価値はすごく高くなると思うの。そうね王城で使うほどのものになるわ」
その日マリーゴールドとリーンハルトはたくさん話をして試作品をつくつくってもらうこととなった