スタンピートって何?
ダンジョンの入口で一息つく。
「なんか注目されてないかしら??」
ダンジョンの入口、たくさんの冒険者パーティーがいる。
皆、マリーゴールド達を注視している
「不躾な視線失礼です。なにかあるならはっきり言いなさい!」
メアリーが進み出て大きな声で威嚇する
皆が固唾を飲むが
おずおずと一人が進み出て
「ケリーってやつに会わなかったか?4人組の男のパーティーなんだけど、ケリーは金髪で剣士・・」
「会っておりません」
食い気味で答えるメアリー
「えっ?そんなはずは・・」
「会っておりません」
そう答えるとそそくさとマリーローズのところに帰ってきた。
ケリー達がたちの悪い新人狩りをしているのはみんな知っている。
今日も新人が餌食になるのかと思っていたら。何事もなく新人がダンジョンから出てきた。
みんな驚いてマリーゴールド達に注目していたのだ。
黒い鎧の戦士とメイドと侍従のようなへんてこなパーティーだがBランクのケリーを退けるとなるとなかなかの実力だろう。
その時、
「スタンピード発生!場所はB206地点!Cランク以上の者は至急向かわれたし!繰り返す!スタンピード発生!」
冒険者ギルドからの連絡役が緊急事態を告げる
「スタンピードって何かしら?」
冒険者がギョッとして鎧の戦士を見る
「魔物の大量発生です。どうもゴブリンの村の討伐失敗みたいですね、こういうときにはたいていオークが絡んでいます」
皆、斥候から詳しく情報をもらおうと斥候に問いかける。スタンピードの魔物の種類、数、武装、情報が多いほど対応策がたてられ生存率が上がるからだ。
「話を聞いてきましょうか?」
パスカルが問い掛けるが
「必要ないわ」
「確かにスタンピード討伐に行かない人には情報いらないものね、Dランクとランクなしですもの」
他のパーティーのメンバーがバカにしてくる
多分魔法使いっぽい
「いえ、救出には向かうけど、敵を倒すだけだから、相手が何であろうと関係ないもの。」
「はぁぁぁ???何言ってるの?素人すぎでしょ?」
「パスカル、スタンピードの方角はこっちであってる??」
「はい、北西ですね。」
「魔法使いさん、また会いましょう、お先に行ってるわね」
そう言うとパスカルとメアリーを荷台車に載せ
荷台車を担いで北西の方角へ飛び立った
「えっ?荷台車担ぐ?!飛んだ??」
魔法使いは眼の前で起こったことが信じられずしばらく呆然としていた。
「空を飛んでる!これはすごい!」
パスカルがはしゃぐ。
北西の方角に明るい場所が、森が燃えている、スタンピードだ!冒険者達は押されているように見える
「メアリー、パスカル現地についたら貴方達にしてほしいことがあるの」
〜~~~~~~~~~
現場は混乱していた。
まさかゴブリンの村にオークだけでなくオークジェネラル、までいてるなんて!
討伐依頼を受けたパーティーは絶望的、駆けつけた冒険者たちもAランク複数でないと厳しい。
そんな中、最前線で押し返すほどの力を見せつける魔法剣士がいた。
「みんな!隊列を崩さぬよう!Aランク冒険者であるわたくしセフィリアがいます!!」
セフィリア・ユーティリス
Aランク冒険者であり、辺境伯家の令嬢。いずれSランクに届くと言われる傑物だ。
冒険者をまとめて鼓舞し
隊列を組み魔獣を倒していく。
しかし数が多すぎる。皆疲れが出てくる、
そんなときだ
セフィリアたちにいつくもの火炎が襲いかかった。
「爺や!」
セフィリアは叫ぶと氷で盾を作り炎から皆を防御した。
爺やと呼ばれた老騎士も氷で盾を作る
オークメイジがいてると想定していたセフィリアは流石と言えるだろう
しかし、さらにオークメイジが現れる、さらに、さらにオークメイジ6体!
だめだ、防ぎきれない
「爺、皆を連れて逃げなさい!ここは私が命に変えても足止めするわ!」
「お嬢様、足止めはこの老いぼれの役目、次期辺境伯様のために命を使う最後の誉れを奪わんでください!」
そんなやり取りをしているとそこに
巨大なオークが複数現れる
「嘘!オークジェネラル!オークキングまで!!」
オークキングがオークジェネラルを率いて出現したのだ
これは王国一の武力を誇る辺境伯家の手練れを数十人投入するほどの脅威だ。しかもオーク達は連携を取っている、この戦力では持ちこたえられない。
オークキングが合図を出すと
オークメイジが一斉に火炎を放った!
盾にありったけの魔力を送るが思わず目をつぶる
さよならお父様、お母様、私は先に逝きます
しかしいくら待っても焼き殺されない、不思議に思い
目を開けるとそこには、
漆黒の鎧を着た戦士、剣士、そしてメイドが立っていた。え?メイド??
鎧の戦士が近寄ってきて
「貴女が指揮してくれてたのね、もう大丈夫。私が来たから。」
え?女の子?声女の子だよね?
オークメイジがさらに火炎を放つ、
しかし届かない
消えるのだ!なぜなのかさっぱりわからない。
真空の断裂、空気がなければ炎は燃えない。
そして無骨な剣でオークメイジを切り潰す!切り潰す!
オークジェネラルが戦士に殺到する!
手練れのAランク冒険者5人で対処するほどの魔物。それがオークジェネラル
鎧の戦士は空を飛ぶように跳躍し、次の瞬間オークジェネラル達の首が落ちた
何をしたのか全くわからなかった。
驚きはまだ続く
私は目を疑った。
オークキングが宙に浮いてもがいているのだ。
そして鎧の戦士は空高く飛び上がり!オークキングを空から一刀両断したのだ。
その威力は立っていられないほどの衝撃だ!
メイドと剣士は鎧の戦士が倒した敵に触ってから鎧の戦士についていく。
去り際に皆に向かって恭しく礼をして
「お騒がせいたしました、後はお嬢様にお任せください」
メイドがお辞儀をして鎧の戦士についていった。
呆けていたが、まだ戦いは終わっていない。オークキングを討ち取ったから魔物たちは総崩れだ
今がチャンスだ
「頭を失った魔物は浮足立っている!狩れ!」
私は皆に命令して自らも魔物に突っ込んでいった。
さて、最前線のマリーゴールド。
ゴブリンやオークを殺しながら
「あのさ、メアリー、私のことお嬢様って呼ばれたら私女だってバレるよね?貴族って疑われるかも」
「なんの問題もありません。お嬢様の功績を隠すなどとんでもありません」
「その、なんていうか、正体不明な戦士ってかっこよくない?」
「では主様とお呼びします、よろしいでしょうか?」
「今更だけどね、それでいこう、声も変えたいなーそんな魔道具あるのかな?」
話しているうちに敵を全滅させた。オークキング以上の魔物はいなかったわ。拍子抜けだわ
「オークキングはSランクの魔物ですよ。単独で討伐とか普通できませんから。それだけでSSランク冒険者認定されてもおかしくないですから!」
パスカルが呆れたように話す。
「主様、帰りましょう」
「そうね、そうだ!帰るときパフォーマンスしましょう!」
そう言って討伐した魔物を集めて・・
〜~~~~~~
「我らの勝利だ!!」
Aランク冒険者であり貴族令嬢セフィリアが叫ぶ!
「「おーーー!!!」」
皆生き残ったことに安堵する
あの三人はどうなったのだろうか?
あれ程の実力者、不覚を取ることはないと思うが。
その時
「あれは何だ!!!」
声をした方を見ると山?巨大ななにかがこちらにやってくる。
「戦闘態勢とって待機!」
セフィリアはそう叫んで
こちらに向かってくる山を警戒した。
山はゆっくりと動いてくる
警戒しながらセフィリアが近づいていくとなんと
あのメイドを発見した
「これはこれは?何かございましたか?」
メイドが言う
「先程は助かった。それで後ろの山は??」
「主様でございます。」
「鎧の戦士になにかあったのか??」
「主様が倒した魔獣を運んでいるだけです」
「なんだって???」
〜~~~~
広場に魔物の山を下ろす。
周りの冒険者達は唖然としている。
セフィリアが小さなテントにマリーゴールドを案内する
「まずは命を救っていただいて感謝する。」
セフィリアが頭を下げる
「ユーフィリス家からも感謝の意を!お嬢様の命を・・
うぅ」
爺と呼ばれた先代から仕える老騎士クロフォードが涙を流しながら跪く。
鎧の騎士は頷くと
メアリーが告げる
「主様は気にしないでよいとの仰せです」
「戦士殿は喉を痛められたのか?」
「おじょ、主様は声で性別がばれるのを防ぎたく・・」
あれ?メアリー、ポンコツになってるんだけど??
「私にはもう女性とバレてるのですが」
そういえばそうだった!会話したわ!
「失礼しました。セフィリア様、正体を隠している事をまず、お詫びいたしますわ」
「貴族のご令嬢かと推察いたしますが、これほど強い方なら噂になりそうですけど。このお礼をしたいのですけど連絡はどちらにすればよろしいでしょうか?」
「御礼や連絡は不要と言いたいところですが、隠せば調べますわよね。内密にしてくださるなら連絡先も私の名前も教えますわ」
パスカルが冒険者登録をしているので、本気で調べに来たら私の存在を知ることは難しくないだろう。
マリーゴールドは兜を外し
「初めましてセフィリア様、私はマリーゴールド・エリンシュタインと申します」
そう言ってカーテシーを披露した。