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Ep.23 平和な一日 前章

 銅の朝は欠伸から始まる。

 脳が回転し始めるのを待ち、カーテンから覗く太陽バックに伸びをして、のそのそと布団から這い出た。


「なんか、変な夢見た気がする……」


 白黒な空間に男の子が一人で座っていて、なんだか悲しくなった。そんな感覚があっても、夢の内容は思い出せない。


 時間を確認すれば、まだ八時前。

 予定のない日はゆっくりと寝ていたいのに、どうして休日に限って早起きしてしまうのだろうか。銅は常々不思議に思う。


(休みにしちゃあ少し早いけど、二度寝するにしては中途半端な時間だよなー)


 ゆっくりとした動作で、最低限の身だしなみを整えて部屋を出る。部屋に備え付けの洗面台があると、朝は便利でいい。


 リビングには既に美狼以外の四人が揃っていて、彼らは顔を出した銅に挨拶をする。


 女性陣は、大体七時半あたりからリビングに現れ、一路の手伝いや好きなことをして過ごしている。一路は言わずもがな。月輪は毎朝六時半に起きてランニングを済ませ、八時過ぎにリビングへ戻ってくる。


 学生である銅は起きる時間まちまちだが、いつも四番、五番乗りで出遅れ気味になる。それでもビリにならないのは、大抵誰かに起こされないと起きない美狼がいるからだ。


 彼は夜中まで酒を飲み、死んだように眠る。

 あまり飲めない代わり、次の日に支障をきたすことがない、便利な体の作りをしているようだ。

 専ら、人の気配に敏感な質みたいで、誰かが起こそうと部屋を覗いた瞬間、パチリと目を覚ます。


 ここに来て直ぐの頃、銅と遊馬を除いて飲み比べをしていたことがあった。

 千坂と一路は酒豪なのか顔色一つ変えず。月輪は日本酒でノックダウンし、美狼は五杯を超えた段階で寝てしまった。


 あの日から、酒豪二人には少しばかりの畏怖を抱いている。何せ、巨漢と凶暴を飲み負かして尚、平然と酒を煽り続けていたのだから。

 人は見た目によらないのだと、銅はつくづく思い知ったのだ。



 閑話休題。


 朝食は美狼を除いた五人で食べた。終始、たわいもない話で盛り上がりながら。

 相変わらず一路は偵察班の様子を見に行ったり、朝食の後片付けもしたり、と慌ただしかったが。


 今日は特に緊急性のある仕事はないとかで、午前中はそれぞれが好きに過ごしていた。

 十時を過ぎた頃、やっと美狼が自力で起床し、起き抜けにレモンジュースを一気飲みした。それを見た者達が、もれなく口をすぼめたことは言うまでもない。


 銅も例に漏れず、組織から借りた現代タブレットで、気になるアニメを観ていた。

 ……これは後から聞いた話だが、タブレットを含め、部屋にある現代デジタル類は全て、指揮官の世界が私費で購入しているらしい。その他にも、多くのものが世界の私費で賄われているという。


 怒涛のアニメラッシュを迎え、早くも六話目に差し掛かろうとしたところで、誰かがドアを叩いた。


「逸実。W.Rから色々物資が届いたの。興味あるなら見てみませんか?」


 静かに、けれど凛と通る声は遊馬のものだった。概ね、千坂あたりに声を掛けるよう勧められたのだろう。

 一瞬だけ遠慮の二文字が過ぎったが、銅は思い直して了承の言葉を返した。

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