普通の日々を送りたいのにほうっておけないこともある
かつて、戦国時代に東北の大名がいた。その名は、伊達政宗。
奥州の覇王であり、独眼竜という異名を持っていた。その後、伊達家は江戸時代から明治、昭和、平成へと続いたのだった。
そして現在……、時代は令和。伊達家は今、小町市という街にて普通の日々を過ごしていた。
小町市には大きな武家屋敷、その家はアパート4棟分と同じ広さだった。看板には「竜組」という名があった。そして、二階には、一人の少年が布団で寝ていた。
「……」
すると、声が聞こえた。
「若様ー、起きてください!今日から、学校ですよー」
「う、うぅ~……」
一人の少年は目を覚まし、大きなあくびをした。
「もう朝か…。ついに高校生活の始まりか……」
布団をたたみ、制服を着替えた。そして、彼の右目を眼帯につけた。
彼の名前は、伊達政春。伊達政宗の子孫でもあり、伊達家竜組の次期当主であり、この物語の主人公である。
眠たそうに、食事部屋に入ると組兵や部下などいた。
「おぉ、来たか政春。今日から、高校生だそうだな」
「親父か……」
政春の父の名は、伊達 輝夫。竜組の組長であり、当主である。
「なにやってんだよ、政春。俺はもう飯食ったぞ」
「成三、すまない……。つい寝てしまって…」
「お前なあ……」
ため息をしている彼、政春の従弟・伊達 成三である。
「まあまあ、若様はおそらく緊張していたのでしょう」
政春の側近であり、伊達の親戚でもある片倉 小三郎が、入ってきた。政春、成三、小三郎、この三人が今日から高校生である。
「全く、それでも次期当主かよ」
「そんなこと言われてもな……」
輝夫は言った。
「お前たちは、今日から高校生だからなぁ。緊張するのも当たり前だな」
と、笑っていた。
「叔父御……」
成三は、やれやれとした。
するとそこへ…。
「春ちゃ~ん」
「……って、この声は……」
やってきたのは、ツインテールをした女の子だった。
「愛か……」
彼女の名前は、田村 愛。政春の幼馴染である。ちなみに、「春ちゃん」とは政春のことであった。
「そういう名前で呼ぶなよ……。恥ずかしいだろ……」
「あ、ごめん。つい、いつものことを……」
「で、何しに来たんだ?」
愛は、理由を言った。
「今日は、高校生活が始まるのよ。だから、一緒に行こうと誘ってきたの。」
「それはいいが……、あまりそういうのはちょっと……」
政春はあまり、気が乗らなかった。
「?どうして?」
愛は首を傾けた。
「うちの組が見ているだろ……」
竜組の組兵は、ニヤニヤしていた。幼馴染といっても、昔からの付き合い。組兵は二人のことにて、知っているのだった。
すると……。
「政春、そろそろ急いだほうがいいのではないのかね」
「あ、ヤバ……!」
政春は、急いで朝食をとった。
政春達は、学校へと向かった。
「それにしても、すごいところの学校に入学するんだっけ?」
「あぁ、確か……、奥ノ原高校だったな」
成三が言う、奥ノ原高校は有名な学校のエリートの約半分、さらに個性な人も多かった。
「そこに入学するのか……、面倒なことがなければいいけど」
だが、それは早速だった。
政春は、ドンッと誰かとぶつかった。
「うわっ」
「ん?」
「す、すみません……!」
生徒は急いでいった。
「なんだったんだ、今のは?」
「わかりませんが…。それより若様、学校に急がないと」
「あぁ、そうだな」
さっきの生徒のことは気になるが、今は学校に向かうことを優先にした。
そして、入学式が終わり政春達は、1-Aのクラスに入った。
「同じクラスだな、政春」
成三は言った。
「そうだな。……?あれは……」
そこに、さっきの政春とぶつかった生徒がいた。
彼は、どこかへと教室から出て行った。
「あいつは、あの時の……」
「どうした?」
「若様、なにかあったのですか?」
「……」
裏の校舎。そこに不良の3人がいた。
「ちっ、あいつおっせぇなあ……」
そこへ……。
「お待たせしました……」
「おっせぇぞ、支倉!」
「す、すみません……」
不良は手を出した。
「カネの用意はできてるか?5千円ぐらいのカネ」
「いや、あの……、その……。まだなんです・・・」
「はぁ!?テメェ、ふざけんなよ!」
「俺たちをぶつかって、制服が汚れたんだよ!他人のカネぐらいスってくりゃいいだろ!?」
これに、支倉という生徒は言った。
「で、でもそれは……、犯罪じゃ……」
「そんなのカンケーねぇよ!」
不良は彼を脅すように言った。
「それともなんだ?逆らうってのか?」
「そ、それは……」
その時…。
「何やってるんですか、あんたら?」
政春がやってきた。
「なんだテメェは?」
「!君はあの時の……!」
「一部始終見たんですけど……、早くもカツアゲかよ…」
これに、不良は怒った。
「テメェ、バカにしてんのか!?」
「いや、そうでもないのですけど……、犯罪はよくないですけど?」
政春は、スラッと言った。
「それ馬鹿にされてる一言じゃねぇか!」
「まぁ、それはともかく……、そいつ離してくれませんか?」
「こ、この野郎……!」
怒った不良は、殴ってきた。
すると、政春は首を傾けると、そこに拳が入ってきた。
「ぶはっ!」
「な、なんだ!?」
そこにいたのは、成三達だった。
「いきなり、教室から出て行って様子見たらこうなっていたか」
「この学校、変わっていますね」
これに不良の3人は動揺した。
「なんだお前らは!?」
「ただの通りすがりの者です」
小三郎は、にこにこと笑っていた。
「嘘つけぇぇぇ!お前らも状況見て加勢に来たんだろ!」
「うるっせぇやつだな……。まるでおいでや〇の〇田の声だな」
成三はそういうと、政春は……。
「それ言ったらダメなやつだろ……」
と、ツッコミを入れた。
「くそ……!」
すると、不良はナイフを出した。
「おい、そいつはやばいんじゃ……」
「うるせぇ!こいつで脅してやる!」
不良はそう言っているが、これに政春は不良ににらむ。
「学生がそれ持ったらいけないだろ、何考えてるんだよ……」
「少しは恐怖を味わえ!」
不良は政春に向かってきた。
「春ちゃん!」
「若様!」
「政春!」
その時、ナイフが割れた。
「なっ……!」
政春が持っていたのはシャーペンと同じサイズの懐刀だった。
「お、おい……、あいつが持ってるものって……」
不良は驚愕していた。
「これ、模造刀の愛刀・小竜だけど?」
「う、嘘だろ……。テメェ、いったい何者なんだよ……!」
その時、1人の不良は気づいた。
「おい、もしかして……、あの右目の眼帯……!竜組のトコのやつじゃね!?」
「ま、まじかよ……!」
「く、くそ!お、覚えてろよ!」
不良の3人は逃げて行った。
「……」
支倉という生徒は、呆然した。
「す、すごい……。しかも、あの有名な……」
これに、支倉は思った。
「なんで、それもってんだよ、政春」
「そういわれても……、なんかこれ持っていないと落ち着かないような気がしててな……」
すると……。
「あ、あの!助けてくれてありがとうございます!僕は、支倉常之といいます!」
「そ、そうか……。これからも気を付けて……」
「どうか、お供させてください!アニキ!」
「あ、アニキ……?」
まさかの助けた常之は、政春のことをアニキ呼ばわりだった。
(やっかいな、人が増えたな……)
政春は、ため息をした。
その一方、不良の3人は……。
「そいつに相手して、やられたのか……」
「は、はい……」
「伊達政春……、どんな奴か、会ってみたいもんだな」
一人の男は、フッと笑った。
「それにしても、入学早々こんなこともあるのね……」
「仕方ないことだ……」
政春は言った。
「でも、俺はふつうな日々をしたい。普通な学校生活、普通な日常として……」
「アニキ……」
あたりには、個性な奴が多い。それでも、普通な日々を送りたい。
こうして、政春のドタバタな日々が始まろうとしていた。