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ずっとあなたのそばに  作者: しょうの
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6.青月の深藍

一日おきの更新がせいっぱいになってきました。

やっと回想が終わります。

引き続き、お付き合いくださいませ。

 「少しだけ、わたくしとお話ししましょうか、エリュナ様。」


 微笑みをたたえた聖爵様が祭壇前からゆっくりと、私のほうへと歩みを進め、大きな円の中で跪いたままの私のそばまで来ると、すっと手を差し出された。

 ためらいがちに手をのせると、私を立ち上がらせ、祭壇の手前、左側にある木製の扉のほうへといざなった。扉を開けると、部屋の中がぽわわんと明るくなった。私を先に中へと通し、奥側にあるベンチ椅子へと座るように示し、聖爵様は手前の一人掛けの椅子に座った。

 この部屋はとってもこぢんまりとしていて、先ほどの祈りの間とはかなり趣が違う。壁のところどころに月のような柔らかな光を纏ったランプがあり、これに光が入ったことで部屋が明るくなったことが分かった。今まで見たこともない光であり、興味深く、少しきょろきょろしてしまった。


 「この光が珍しいですか?」


 私はこくりと頷いた。


 「これは、聖なる月の光です。我々聖爵は、神聖力を宿しているため、魔術は扱うことができません。そのため、神殿の中は、神聖力により創り出されたものが数多くあります。これもその一つです。王都で見る魔術の光とは少し異なりますでしょう?」


 その通りだ。魔術の光は、火に近い感じだ。おそらく、火系魔術から生まれているのだと思う。

 そして、神聖力を宿している聖爵様が魔術を使わないということは驚きだった。

 

 「聖爵様は魔術を使わないのですか?」


 聖爵様はにこりと笑い、私の質問に詳しく答えてくれた。


 「使わないのではなく、使えないのです。神聖力と魔力は異なる力となるからです。その反発すらする二つを一つの身に宿すことは、人ではもち得ないほどの非常に大きな精神力が必要でしょうね。・・・神のような。

 そして、神聖力は神からこの王国を守護する存在のみに宿されているため、神聖力を持っているものは魔力を持つものに比べて、さらに少ないというもあります。」


 六人の聖爵様以外の神官たちは神聖力を持たないから、洗礼式を執り行えないんだものね。そう考えると、確かに神聖力を持っている人はとっても少ない。

 ふんふんと頷いて納得していると、聖爵様がふふふときれいに笑った。

 

 「エリュナ様。洗礼名は、エリュナ様の真のカタチを現すものとなります。

 この御名は、創造の神より、真のカタチであるあなた様に授けられ、神とあなた様をつないでくれます。神は、あなた様の洗礼を心待ちにしていたと思います。」


 そうですよね。11歳まで魔力発現しないなんて、せっかくの魔力を無駄にポイっとすることになったかも、だものね。

 あれ?洗礼名が神様と私をつなぐということは・・・・


 「聖爵様。神様とつながっているのだから、この名前でいっぱい神様にお祈りしたら、ご加護たっぷりになって、私の魔力もふえますよね!!」


 繋がってるんだもの。そうだよね、お願い、そうだと言って。

 すると、聖爵様は少し困ったような顔をされた。


 「エリュナ様は魔力を増やしたいのですか?」


 「はい、とってもふやしたいです。・・・私の魔力、ほんのちょっぴりなんです。

  みんなみたいに体全体から魔力がにじみでなくて・・・・。」


 「御名を授かることで、ご加護を受け、それにより、真のカタチがはっきりしてくるので、魔力が増えているように見えるかもしれませんが、真のカタチが定まるのも人それぞれです。エリュナ様は、エリュナ様にあったカタチがあります。お祈りにたくさんこられれば、神もお喜びになると思いますが、エリュナ様が望むようなカタチになるかは分からないですね。」


 え、ご加護って魔力増幅アイテムじゃなかったの!?

 なんかちょっと難しかったけど、とりあえず、私のご加護たっぷり、魔力ばっちり計画はしゅるしゅるしゅると膨らむ前に萎んでしまった。


 すると、聖爵様が椅子から立ち上がり、私のそばに来られると、目線を合わせるように膝を折ってかがんだ。


 「エリュナ様に祝福を与えてもよろしいですか。」


 「祝福ですか?」


 それは何?という意味を込めて、首を傾げた。


 「エリュナ様のお望みが叶いますようにと、私の神聖力を贈らせていただくことです。

 ・・・・エリュナ様に青の月の祝福を。」


 青いきらきらした光が聖爵様からあふれ出し、私の頭上から体全体を包んだ。

 洗礼式の金の光はあったかい気持ちになり、この青い光はとても穏やかな気持ちになった。


 「本当のあなた様にお会いできた、この私の記憶の中の初めての経験に、私は望外の喜びを得ました。

 ・・・・また、祝福をさせてくださいね。エリュナ様。」


 初めての経験?

 それで、はっと気が付いた。

 そうだよね、みんな5歳くらいまでの小さいときに洗礼式に来るのだから、聖爵様とこんな風にお話することなんてできないよね。

 私の遅すぎる魔力発現は、聖爵様に初めての経験をさせるほどだったんだぁ。

少し頭を抱えたくなったけど、みんなが経験できない、聖爵様との語らいを経験できた、私、貴重な体験した!と前向きに考えることにしよう、うん。


 その後、聖爵様は、青月の季節は本神殿にいるので、祝福を受けに来てください、と何度も繰り返された。

 きっと、魔力がほんのちょっぴりで残念な私をかわいそうに思ってくれたのだと思う。聖爵様はとってもお優しい。


 お話した部屋を出るときに、聖爵様は私のほうを振り返り、右の人差し指を口元で立てた。


 「このお部屋の中の出来事は、私とエリュナ様の秘密ですよ。」


 私は大きく、こっくりと頷いた。

 もちろんです!私の魔力発現が遅かったことで聖爵様に初めての経験をさせたなんて、恥ずかしくって言えません!!


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