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ずっとあなたのそばに  作者: しょうの
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3.六月(むつき)

ブックマークいただきありがとうございます。

目標は毎日、遅くても1日おきには続きを投稿しますので、

お付き合いいただければ、幸いです。

 お母様が言った『間に合わない』というのは、聖爵様の名前が出てきたことから、洗礼式であることは間違いない。


 ワーデンファルス王国では、魔力発現すると、神殿で洗礼名を受ける、いわゆる洗礼式を行う。洗礼名を受けることで、加護を受けやすくなるといわれているため、魔力発現した魔力もちにとってこの洗礼名は非常に重要なのだ。


 「今はちょうど青月あおつきの時期だから、深藍せいらんの聖爵は、本神殿にいらっしゃるはずだ。タイミングとしてはよかったといえるが、果たしてすぐに執り行っていただけるか。」


 お父様は、リュディガーがいなくなったエントランス入口をちらりと見た。そして、私を抱いたまま歩き出し、応接間へと入っていった。

 その後をお母様、お兄様達、お姉様が続いた。お父様は、私をソファに座らせ、自身もその隣に座ってくれた。

 いつもは一人掛けにお座りになるお父様が、お隣に!

 さっきまでのしょんぼり項垂れからむくむく気持ちが上向きになってきた。

 むふぅ、お誕生日特典かな。


 「そうですわね。青月がだいぶ傾いてきていますもの。聖爵猊下がお忙しくなければよろしいのだけれど。」


 お母様が頬に手をおき、軽く嘆息しながら、夜空に輝く、かなり西に傾いている青月を眺めた。


 確かに、青月の時期はもう終わりに近い。


 創造の神は、加護を与えた少女の王国を守護する存在として六月むつきを生み出した。そして、夜空には六つの色の異なる月が浮かんだ。この月は必ず一つずつ東の空から浮かびあがり、二月かけて西の空に沈んでいく。

 新年から、黄月きつき、  赤月あかつき、  緑月りょくつき、  白月しろつき、  青月あおつき、  黒月こくつきと順に変わっていくのだが、生まれ時に浮かぶ月が自身の守護月となる。

 つまり、今日が誕生日の私は青月の生まれだ。

 そして、魔術学院の入学は12歳になる年の黄月から。つまり、入学まで、あと2カ月しかない。

 お父様とお母様が焦る気持ちになるのも当然だ。


 「僕の学年にいる子が、魔力発現から洗礼式まで半年近くかかったって言ってたよ。

  聖爵猊下がちょうど分神殿に行かれたばかりだったっていうのもあったみたいだけど。」


 リュイお兄様が、話しながら私の向かいの席に座った。


 聖爵様とは、この六月に宿る神聖力を司っている方である。六月それぞれに聖爵様がいるので、六人聖爵様がいることになる。

 そして、洗礼式は守護月の聖爵様に執り行ってもらわなければならない。

 聖爵様は、王都にある本神殿、各地域にある分神殿など転々と場所を移動される。私たちのような王都に住む者は、本神殿で洗礼式を行うことになるが、生まれ月の聖爵様が本神殿にいるとは限らない。また、本神殿にいたとしても、洗礼式をいつ行ってもらえるかは、聖爵様次第となる。

 ただ、聖爵様は自身の月が浮かんでいる間は、必ず本神殿に留まっているということなので、お父様の言う通り、タイミングがよいとは言える。


 私としては、ただでさえ、魔力がちょっぴりしかなさそうなので、早く、洗礼式を終わらせて、加護で少しは魔力の上乗せがしたいところだ。

 そしたら、私も、お父様みたいにしゅぱーんと氷の矢とか放てるようになるかも。

 一度だけ、王国魔術師の演武場で魔術行使しているところを見たことがある。

 王国内で魔物の異常発生?とかなんとかが起きていたみたいで、お父様は王宮内に詰めていた。お母様が私を連れて、お父様のところまで差し入れに行く途中の出来事だった。

 お父様の体から魔力がほとばしったかと思うと、それが手のひらに凝縮されていった。手をひらりと的に向かって動かすと、凝縮された魔力が氷の矢になり、真っ直ぐ飛んでいった。


 あまりにも流麗な動きに、心ときめき、ぽわんっとなってしまった。

 お母様も、ほんのり頬をそめ、瞳はうるるんとしていた。

 お母様の心だけでなく、娘の心も奪うなんて、私のお父様、素敵でかっこいい!



 気持ちが盛り上がってきた私は、隣に座るお父様の膝に軽く手をのせ、身を乗り出した。


 「早く洗礼式うけたい!

  私も洗礼名を受けたら、お父様みたいな魔術師になれるかなぁ。」


 ないと思っていた魔力が発現したということでちょっと有頂天になっていた私は、満面の笑みでお父様を見つめた。

 お父様がアイスブルーの瞳を少し細めて、しなやかで長い指で軽く頭を撫でてから、私のハニーブロンドの髪を梳いてくれた。

 向かいの席に座ったリュイお兄様はほんわりと微笑んでいた。


 「きっとなれるよ。

  ・・・・・エリュナはお父様のことが本当に好きだね。

  僕もエリュナに憧れてもらえるように、頑張らないとだね。」


 私のオアシス、リュイお兄様の微笑みが心に染みる。

 にっこり笑って、こてりと首を傾けた。


 「今でもいっぱい大好きで憧れるわよ。

  でも、頑張るリュイお兄様はきっと、さらに素敵だから、もっと見たいな。」


 ちょっぴり頭の中がお花畑になっていた私は、リュイお兄様がさらにほんわりと微笑む前に、目を見張って自分の胸元をぎゅっと押さえていたことに気づいていなかった。


 シャルルお兄様がやれやれという感じで、そんな和やかな雰囲気に突如割り込んできた。


 「リュイ、お前ちょっと落ち着いたほうがいいぞ。

  エリュナは尻に魔力のクルーランだ。クルーラン、クルーラン。

  あ。なんかさっきのエリュナ思い出してきた。・・・・ぶふっ」


 シャルルお兄様め!

 だから、もう、それを蒸し返すのはやめて。間違いなく、みんな、さっきのことは忘れていたのに。

 思わずお父様の服をきゅっと握り、くぅっと恨みがましい目でシャルルお兄様を見た。

 シャルルお兄様は、ぷいっと私から視線を外した。

 すると、さっきまで皆のやり取りを見ていただけだったお姉様が、お兄様達に冷ややかな目を向けた。その視線のあまりの冷ややかさに、見られてもいない私の方がぞぞぞっとしたくらいだ。

 お姉様、ルディア・ランベルトは、髪も瞳の色もお父様と同じで、さらに、お父様そっくりの美貌の持ち主。お姉様の冷ややかな視線を浴びたら、ほんと、体どころか心まで凍りそう。いや、実際、今私は凍った。

 お姉様はすでに魔術学院を卒業した19歳。昨年まではお父様と同じく王国魔術師をしていたが、婚約が決まったのと同時に辞めている。


「エリュナはもう既に魔力を一か所に凝集しきれているかもしれなくてよ。

 凝集下手なシャルルくん。お姉様が、個別指導してあげましょうか?そんな口きけなくなるくらいじっくりね。」

 

 ふふふと、お姉様は笑ったが、目が、目が、冷ややかなんです。怖いんです。

 

 「・・・ほんと二人とも、リュイは気持ち悪いし、シャルルは見ていてあきれてしまうわ。」

 

 リュイお兄様が気持ち悪い?はて、なんでだろう?

 一部わからないこともあったが、シャルルお兄様はもっと懲らしめてもよいと思います。お姉様、もっとやっちゃってくださいませ!



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