1.はじまり
初めて投稿します。
よろしくお願いします。
ずっと、あなたのそばにいたい・・・
たゆたう意識の中でかすかな声を聴いた気がした。そして、それがあたかも当然であるかのように声のする方へ手を伸ばした瞬間、すぅっと体が暗闇の中に吸い込まれそうになった。
ガタンッ
魔術学院に向かう馬車が大きく揺れた。
「うきゃぁ」
侯爵令嬢としてはあるまじき声が出てしまい、自分自身も驚き目が覚める。
周りをきょろきょろし、今、自分がどこにいるかを思い出した。
そう、ここは、魔術学院へ向かう馬車の中だ。
外をそっと覗くと、両脇に美しい木立が続くレンガ敷きの道を通っているところだった。景観はとてもよい場所なのだけれど、実用性がないというか、レンガの継ぎ目で馬車が少しがたつきやすく、先のような突然の揺れに繋がることがよくあるのだ。
揺れにまかせて、ついついうたた寝しちゃったのが、ダメなのだけど、昨夜は、今日からのことを考えるとあまり寝られなかったからなぁ。
ふぅと息を吐きながら、背を馬車の壁にもたせかけ、軽く目を閉じた。
それにしても、お姉様が一緒にいらっしゃらなくて、本当によかった。うたた寝した上にこんな声を出していたと知れたら、淑女としてのうんぬんかんぬん、くどくどくどくどくど・・・・とお小言が永遠に続くところだった。
あぶない、あぶない。
うーん、なんだか、頭に靄がかかったみたいで、すっきりしないな。
何か、胸がきゅぅっとなるようなことがあった気がするのだけど、うたた寝でどんな夢を見ていたのか思い出すことはできず、さらに深く目を閉じてみても、靄は濃くなっていくばかりだった。
ふるっと頭をふり、背筋を伸ばして気分を変えた。
うん、わからないことにこだわっても仕方がないわよね。それよりも、今日、これから行われる魔術学院の加護適性のことを考えないと。
私、エリュナ・ランベルトは、ワーデンファルス王国で代々魔術師を多数輩出するランベルト侯爵家の4番目の末っ子として生まれた。
ワーデンファルス王国というのは、創造の神エメンフレーデが地上の少女を愛し、加護を与えたことにより生まれた、いわゆる、神が造り給いし国。その創世記は王国民なら誰でも知っているお伽噺だ。
この加護は王国にいろいろな変化をもたらしたのだけれど、そのうちの一つが、王国の一部の人が魔力もちとなったことだ。魔力もちは、さほど多くはいないため、かなりしっかりと王国で保護というか管理されている。
どういうことかというと、ほんのわずかでも魔力が発現すると、貴族、平民などの身分や性別を問わず、12歳になると魔術学院へ入学させられる。そして、14歳になるまでの3年間で魔力の扱いから魔術まで、基礎からみっちり、びっちり教育されるわけだ。
この教育の後、加護適正へと進み、最終学年の16歳までの2年間はその加護に合わせた教育がばっちり施されるという仕組みになっている。
そう、加護適性。これが目下の悩みで、私の眠りを妨げる原因である。