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93.透子ちゃんのお願い

 ────


 それから数時間後。


「いやぁ。本当にお疲れ様だよ、透子ちゃん!」


「ああ、シュウイチ、オマエもだぞ!」


 あれから無事……? に大会は終了し、俺達はいつものクランハウスに集まっていた。目の前にあるテーブルにはパーティー用のオードブル、そして優勝賞品として貰った立派なトロフィーが中心に置かれていた。


「しっかし、あんな場面で久之池を煽るとは、中々明智も肝が据わってきたよな」


 蓮は感心したように、腕を組んでそう言う。そしたら透子ちゃんは、わちゃわちゃと身体を動かしながら、顔を赤くして。


「なっ、あっ、アレはホントにそうやって思ったから言っただけなんだ! 別にアイツを煽ろうとしたワケじゃ……」


「いやいや、アレは最高だったよ。久之池のあんな顔、初めて見たもん……あのシーンを思い出すだけで、メロンソーダ十杯は軽くいけるね」


 そんなことを言いつつ、俺は自分のコップにメロンソーダをドポドポと注いだ。


「そんなに飲んだら糖尿病になっちゃうにゃ……」


 花音ちゃんは心配そうに、ジト目でこちらを見る。そういや花音ちゃんは健康志向なんだっけ。何だか意外である。


「えっと、それでは改めまして……本当におめでとうございます、お二人とも! 私、とっても感動しましたよ!」


「私も! 本当に二人とも良かったよ!」


 そして真白ちゃんと藤野ちゃんが笑顔で、俺達に褒めの言葉をくれたんだ。二人は俺らの応援の為に朝から来てくれて、更にこんな嬉しい言葉をくれるなんて。本当に二人は優しいよなぁ。


「うん、ありがとう! ……ただ、今回のMVPは俺じゃなくて、透子ちゃんと蓮の二人に渡されるものだと思うんだ!」


 俺がそう言うと、名前を上げた二人は困惑したような表情を見せて。


「ぼ、ボク?」


「おいおい、僕は一度もダンスなんかしてないぞ?」


 そうやって、否定する素振りを見せたんだ……ただ、当人以外のみんなは俺の言葉に納得しているようで。みんな「うんうん、その通りだよ」と言いたげに、首を縦に振っていたんだ。


「まず透子ちゃんは朱里ちゃんの代役という、とんでもなく荷が重い役をこなしてくれて、更に短時間でダンスも完璧に仕上げてくれたんだ! これは誰にでも出来ることじゃない、とっても凄いことなんだよ!」


「そっ、そんなに褒めるな……!」


 透子ちゃんは手を前にやって、顔を背ける……かわいい。


「そんで蓮。お前はなんか俺の知らない所で、色々とやってくれてたみたいだな。というか、お前がいなかったら俺らは多分……いや、絶対に勝てなかっただろうから、改めてお礼を言うよ。本当にありがとな」


 すると蓮も同じく、そっぽを向いて。


「……別に礼なんかいらねぇ。ただ僕は不正をしてまで、神谷を潰そうとしたアイツが気に入らなかっただけだ」


 と言ったのだった……ちょっとお前までかわいいの止めろ。


「んー? その割にはレンレン、めちゃくちゃ情報集め頑張ってたけどねー? 自分のポイント使ってまで集めてたのは、ウチ驚いちゃった……」


 そこで蓮の手伝いをしていたであろう花音ちゃんが、俺に裏話を教えてくれたのだが……


「……鳥咲。少しお喋りが過ぎるようだな?」


「ひ、ひぃー!! お命だけは!!」


 どうやら喋ってはいけないことまで、口を滑らせたらしい。花音ちゃんは両手を上げながら、別の部屋まで逃げて行ったようだ。


「あははっ……うん。後ここに足りないのは、朱里ちゃんだけだね。今度はみんな揃ってお見舞いに行って……そして復活したら、温かく迎えてあげようね!」


「はいっ!」「もちろんです!」


「さー。それじゃあ今日もお祝いパーティを開催しますか! かんぱーい!」


「「かんぱーい!」」


 そうして俺の合図でグラスを合わせ、今日もパーティーが開催されたのだった……何か今日もって言うと、毎日やってるみたいなニュアンスに聞こえるけれど、全然そんなことは無くて。先月の水鉄砲大会以来である。


 それにパーティーと言っても、オードブルとお菓子とジュースが並んだ、いわゆるこども会みたいな感じである……って前もこんな説明した気がするわ。


 ……とか何とか、一人でボケーっと考えながら、ジュースを飲んでいると。


「……なぁ、シュウイチ」


 ビスケットのお菓子を片手に、透子ちゃんが俺の隣の席にやって来たんだ。


「ん、どうしたの透子ちゃん?」


 言いつつ俺は透子ちゃんの座れるスペースを作る。すると彼女はそこに座り、いじいじとお菓子のパッケージを弄りながら、小さな声で。


「オマエ……あの約束忘れてないよな?」


「えっ? 約束って……」


「大会が終わったら、何でも言うこと聞くってやつだよ」


「……」


 ……あ。完全に忘れてた。そして今ハッキリと思い出した。


 そう、確かに俺はあの時、透子ちゃんに好きになってもらう代償として、何でもお願いを聞くという約束をしてしまっていたんだよ。


「う、うん。もちろん覚えてるよ!? 大会が終わったら全部なかったことにするのも覚えてるけど!?」


 どんな命令をされるのだろうと、俺はガクガクと身構える……が、透子ちゃんは特に邪悪な笑みを浮かべたりはせず、そのまま落ち着いたような口調で。


「そのことなんだけどな……最初、ボクはひどいことを命令しようとしてたんだ。ポイント全部渡せとか、完全にユイナから手を引けとか……な」


「う、うん……」


「だけど。オマエは……シュウイチは、ボクなんかにも居場所を与えてくれたんだ。温かくて優しくて、とっても居心地のいい場所をな」


「うん」


「それにシュウイチは、ボクを見捨てないでくれた。誉めてくれた。助言してくれた。優しく怒ってくれた。それで…………ずっと好きでいてくれたんだよ」


「うん」


「こんなの……こんな人に出会ったのはボクは初めてで。だから最初はとっても怖かったんだ。全然何考えてるか分からなくて、とっても不安だったんだ。いつかコイツ裏切るんじゃないかって、思ったりもしてたんだ」


「ああ、そうだったんだね」


 確かに初期の透子ちゃんはやけにツンツンしてて、暴力的な感じだったけれど……あれは恐怖心から出てしまっていたものだったのかな。だったら色々と悪いことしたかもしれない。


「……でも、そんな心配する必要もなくて。ただ、こいつはゲームが上手なただの女好きって、途中で気が付いたんだ」


「はは……まぁ、間違ってはないけどさ……」


 何かそれはそれで、語弊があるような気がするが……まぁいいっか!


「だからそれで……えっと、とにかく! ボクはオマエにとっても感謝してるんだ! ありがとな!!!」


 それで長々と語っているのが恥ずかしくなったのか、透子ちゃんは大声で、無理やり話を締めたんだ。


 ……だけどなんだか、それが俺にはとってもおかしくて。とっても可愛くて。俺は微笑みながらお礼を返したんだ。


「ふふっ。うん、こちらこそ、俺の仲間になってくれてありがとうだよ!」


 すると透子ちゃんは、声にならない声を発し……


「~~っ!! あーもー調子狂うなぁっ!!」


「あははっ、それで結局お願いはどうするの? あ、もちろん俺の出来る範囲でだけど……」


 そう聞くと、また透子ちゃんは呟くような口調で。


「あ、えっとな……まず、大会期間中にあったことは忘れないで欲しいんだ」


「えっ、透子ちゃんはそれでいいの?」


「うん。だって、このシュウイチと練習した期間はかけがえのないものだし……それを全部なかったことにするなんて、ボクは嫌なんだよ! ちゃんとオマエにも覚えて欲しいんだよ!」


 そうやって、両腕を振り下ろしながら言ったんだ。


「うん、そっか。それは俺もとっても嬉しいよ! ……でも、透子ちゃんが抱き着いて着たり、俺に惚れてるとか言ったりしたことも、覚えてていいってことだよね?」


「そ、それは……」


 そして透子ちゃんは、しばらく考えた後に。また顔を赤色に染めて。


「……好きにすればいいだろ! それに別にあれは、オマエに好きになるよう言われたから言ったワケじゃないんだ!」


「そうなの? ってことは全部本心だったってことなの?」


「……」


「そんな、無言で睨まないでよ……」


 透子ちゃんは、餌を突然奪われた子犬みたいな目つきで俺を見てくる……いやまぁ、そのお顔もかわいいんだけどさ。


「……まぁそれは置いといて。お願いはどうするのさ?」


 そう聞くと透子ちゃんは睨むのを止めて、たどたどしく。


「え、えっと、それはな……なんて言うか……ボクはずっとオマエのことを勘違いしててさ。でもこの大会で、ちゃんとオマエの……シュウイチの優しさに気づいたんだよ。だから……」


「だから?」


「もっとシュウイチのことが知りたいというか、もっとボクに構ってほしいというか……!!」


「もっと一緒に遊んで欲しいってこと?」


「違う!! だから……だから……!!ボクだってシュウイチの特別になりたいんだよ!!」


「……えーと、つまり?」


 ──ここで俺の察しの悪さに呆れ、怒りが溜まってしまったのか。透子ちゃんは持ってたビスケットを投げ捨て、俺の胸元をグッと掴み、半分泣いたような表情で。こうやって言い放ったのだった。







「……だからっ!! ボクのことだって彼女にしてみせろって言ってるんだよ、バカっ!!!!!」

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