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78.ハリボテの強さ

『もしもし修一? 話は隣で聞いてたけれどさ、私もよく分かってないよ?』


 通話相手は変わって朱里ちゃん。察しの良い朱里ちゃんならもしかしたら……と思っていたが、流石にピンとはきてなかったみたいだ。


「あれ、そっか。それじゃあ……『あかりんのライブで欠かせないモノ』って言ったら分かってくれるかな?」


 そこで俺は軽いヒントを出してみる。そしたら数秒の沈黙の後……朱里ちゃんは納得したような声の調子で。


『……ああー! なるほどなるほど、確かにそれは私が適任かもねー?』


「でしょでしょー?」


『だから何の話をしてるの、神谷君!』


 ここで藤野ちゃんが会話に割り込んできた。まぁ自分の分からない話でみんなが盛り上がっていたら、なんか嫌だもんね…………でも全部を説明するのもなぁ。


「いや、別に教えても良いんだけどさ。もしも藤野ちゃんが作戦を知って、動きが硬くなって、敵にバレて……ってなるのだけは避けたいからさ、内容はこのままシークレットにしておくよ」


『ええ……? 唯一生き残ってる私が作戦を知ってないと、どうしようもないんじゃないの……?』


 それはごもっともな気がするが。


「それは大丈夫さ! 俺達がちゃんと藤野ちゃんを導いてあげるし……きっといいものが見れるはずだからさ! ほら、女の子ってサプライズ好きでしょ!」


『いいものって……? あと私、そんなにサプライズは好きじゃないよ……?』


 そこで朱里ちゃんがこの流れは良くないと思ったのか、藤野ちゃんの説得に手伝ってくれて。


『そんなに心配しなくても大丈夫だよ、結奈。修一は突飛なことをやろうとはしているけれど、そんな危険なことでもないしー』


『ホントに?』


『ホントホント。だから結奈はどっしりと構えてるだけで大丈夫だよー?』


『そっか……うん、分かった! 朱里ちゃんがそう言うなら信じてみるよ!』


 流石朱里ちゃん。俺よりも話術がある……というか説得力があるんだろうなぁ。俺も見習わなきゃな……


『おー良かったよー。……それで修一、予算はどうするのー?』


「予算? ああ、それはいくらでも好きに、やりたいようにやっちゃっていいよ! ポイントは全部俺が出すから!」


 そしたら朱里ちゃんはゆるゆるーっと笑って。


『あはは、言ったねー? 私は遠慮しないよ?』


「うん! それじゃあ朱里ちゃん、アレの準備をよろしくね……それで藤野ちゃんは、頑張ってエリア内に行こうか!」


『あっ、そこは助言とか無いんだ!』


 ────


 それで藤野ちゃんが安置に向かっている間、俺は生配信が行われているページに飛んで、大会の映像を視聴していたんだけど……ゲームの残りプレイヤーの数が、尋常じゃないスピードで減っているのに気が付いたんだ。


『これ、どうなってんだ……?』


 蓮もそれに気が付いたらしく、困惑の声をこぼしている。


「多分だけど……俺がもうキルされたことを知った生徒会クランが、これ以上長引かせる意味も無いと判断して、さっさとゲームを終わらせようとしているんだろうね」


『どんだけお前中心に回ってんだよ、このゲームは』


「俺と言うか生徒会クラン中心だよ。下手したら参加者の半分は生徒会クランの仲間みたいなものだからさ……」


『じゃあまさか……この減り具合は、わざわざ自分から生徒会に殺されに行ってる奴がいるってことなのか?』


「そうなんじゃないの?」


『滅茶苦茶だな……』


 その蓮の言葉には大きく同意するよ。このゲームは全く平等なんかじゃないんだから。


『神谷君、噴水広場の近くまで来れたよ!』


 藤野ちゃんの声が耳元に届いてきた。どうやら無事に移動が出来たみたいだ。


「おっけー。それじゃあちょっとだけ待機しててね」


『ちょっとって?』


「んー。残り人数が一桁くらいになるまで、かな?」


『そんなに? まだ時間がかかるんじゃないの?』


「心配しなくても、すぐにその時は来るよ……ほーら、元凶のお出ましだ」


 ここで俺の見ている映像の中に、生徒会クランらしきチームが現れた……ちなみに今更だが、生配信の映像は空中に浮いているドローンから撮影されているらしい。


『ん……? アイツはいないのか?』


 蓮が困惑したように言う。蓮の言うアイツとはおそらく、生徒会長の久之池のことだろう。


「奴は基本大会には参加しないんだと。絶対に負けなくてつまらないから……って自分で説明しててなんかイラついてきたわ」


『ああ、そうなのか……って奴らの傍に敵が見えるぞ』


『戦いが始まりそうだねー?』


 朱里ちゃんの言う通り、生徒会クランと別チームが鉢合ったようだ。そして二チームの戦いが始まったのだが…………はぁ、やっぱりな。


「……ダウト。敵のヘルメットにマークが描かれてた」


 一瞬だけ映像に敵チームのヘルメットが写されたが、そこにはちゃーんと生徒会クランのエンブレムが描かれていた。要するにこいつらは、生徒会からポイントを受け取ってる生徒会の犬で間違いないらしい。


『……あ、ホントだ。よく気が付いたね修一』


『じゃあこの戦いは、ただの茶番なのか?』


「そうだよ。みんな生徒会クランが最強って信じてやまないみたいだけど、本当はこんなペラペラな強さに騙されてるだけなのかもね?」


『……』


 それで映像では接戦を演じる努力もせず、生徒会クランが敵チームをなぎ倒していったのが見えた。


『あ、どうやら生徒会が勝ったみたいだねー』


「はぁ……全く、この化けの皮を剝がす瞬間が待ち遠しいよ」


 俺はそうとだけ呟き、来るべき時が来るまで口を閉じていたのだった。

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