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45.小悪魔チックな朱里ちゃん?

 ──


 そして次の日……俺は朱里ちゃんに連絡を取って、直接会う約束をした。


 もちろんそんな二人で会っているところなどを他の生徒に見られたらマズいので、カラオケボックスで会うことにしたんだ。当然、入店時間も別々にしてね……何だかスパイ同士の密会みたいでかっこいいね!


 それで今、俺は先にカラオケの個室に入って待機中ってワケ。まぁ、一人だと歌う気分にはならないので、ドリンクバーを往復して時間を潰しているが……ドリンクバーの濃さでカラオケのグレードって分からない? そんなことない?


 …………んで。昨日は蓮に説明というか、納得してもらうまでが大変だったよ。「お前の好みでメンバーを決めるんじゃない」って言われて……いやまぁそれはごもっともだけど! 俺の好みで選んだのも、紛れもない事実なんだけども!


 朱里ちゃんを仲間にしなきゃいけない理由だって、しっかりと存在しているんだよ。


 それは昨日言ったように『相手が俺達に攻撃出来ないような状況を作り出す』ってことなんだ。俺の仲間に朱里ちゃん、アイドルのあかりんがいたのならば、あかりんのファンはあかりんの味方に……大きく解釈すれば、俺らのクランの味方に付いてくれるってことになる。


 あかりんのファンは有り得ない程の人数を抱えている。これを一気に相手するのは、相手側だって避けたいはずだろう……ということで、結果的に攻めにくくなるのは目に見えているので、こっちの防御力が上がるのは間違いないのだ。


 まぁこの作戦に問題があるとするのならば……少なからずあかりんのファンの中にも、俺のクランを敵視する者も現れてしまうってことだろうか。


 今までみんなのものだったあかりんが、どこかに所属することになると『奪われた』と感じてしまうのも無理はないのかもしれない。


 まぁ……あれだよ。声優が結婚を発表した時と同じ気分になると思うんだ。ファンとしては「本人が決めたことなら」と「本人が幸せなら」と祝福したい気持ちは山々なんだけれど、どこか少し寂しいような悔しいような……そんな気持ちだって、少なからず持ち合わせていると思うんだ。


 だから、うん……その辺のファンの対応は後々考えておかなきゃな……


 そういったところで、俺の個室の扉がコンコンとノックされて。


「ん?」


「あははー久しぶりだね、修一?」


「あっ! 朱里ちゃん!」


 制服姿で手にジュースを持った朱里ちゃんが現れて、部屋に入ってきた。そして彼女は歩いて、俺の正面の椅子に座るのだった……そんな彼女に向かって俺は。


「いやーごめんね! きっと忙しいだろうに、急に呼び出しちゃってさ。今日もダメもとでお願いしたから……まさか来てくれるなんて思わなかったよ!」


「あーいいよいいよ、全然。ライブや仕事がない時は、私だって暇なんだよ?」


「えっ、そうなんだ! じゃあ気軽に遊びに誘ってもいいの?」


「うん、いいよー。だってそのために連絡先渡したんだし……だから連絡来た時は『おーやっときたわー』って思ったよ」


「そんな感じだったの!?」


 まさか超人気アイドルが俺からの連絡を待ち望んでいたなんて、これはヤフーのトップに載るレベルだぜ……とか一瞬思ったが、よくよく考えたらそう思うのも当然かもしれない。いや、別にうぬぼれてるわけじゃないからな!


 なぜならあかりんじゃなくて、朱里ちゃんの友達は、多分今のところこの学園には俺しかいないんだ。だから俺と話したいと思うのも、ごく自然なことなのだろう……うん、ごめん、やっぱちょっとうぬぼれてるわ。うへへへ!


「それで修一、今日はどんな用事で呼んでくれたの? もしかして……カラオケデートのお誘い?」


「うへぇっ!?」


 すげぇさらっと怖いこと言うなぁ、この子は!!


「い、いやいや、俺はその、朱里ちゃんに話したいことがあってさ!」


「んーなにー? 告白ー?」


「ちちっ、違うってばっ!!」


「あははーそっかー。残念ー」


 朱里ちゃんは俺に向かって、イタズラっぽくケラケラと笑ってみせる……ええっ!? 朱里ちゃんってこんなキャラだったっけ!?


 ……いや、こんな感じだったわ! 朱里ちゃんは一見、あかりんの時より地味に見えるかもしれないけど……本当は朱里ちゃんフォルムの時の方が、何倍も小悪魔的で……何倍も可愛く見えてしまうのだ。


 いっ、いかんいかんいかん! このままじゃ手玉に取られてしまうよ……女の子に主導権を握られて、どろっどろに甘やかされるのも嫌いではないが、今回は交渉というか……お話をしに来たんだ。だから落ち着いていけー神谷ー?


「え、えっと、ほら、朱里ちゃんがさ、俺の本を宣伝してくれたじゃん?」


 俺がそう言うと、朱里ちゃんはポンと、思い出したように手を叩いて。


「あー。あれね。修一が何か面白そうなことをしているのをつい見つけちゃってねー。それでたまたまテレビ出演の日だったから、宣伝してみたんだけど……もしかして迷惑だった?」


「いやいや! 朱里ちゃんのおかげで沢山売れて、めちゃくちゃ助かったんだよ! お礼してもしきれないくらいさ!」


「おーそっかー。修一の力になれたのなら良かったよー」


 そう言って朱里ちゃんは持ってきたジュースを手に取って飲んだ。


「それで……朱里ちゃんにお願いがあるんだけどさ。言ってもいいかな?」


「ん? なあに?」


「実は俺、クランを作ってね。それで、よかったらだけど……そのクランに、朱里ちゃんも入って欲しいって思ってさ!」


「……!」


 そしたら朱里ちゃんは驚いたような表情を見せた後、飲んでいたジュースをテーブルに置いて。そして若干困ったように、俺に言うのだった。



「うーん……ごめんけど、そのお願いにはすぐに『いいよ』とは言えないかも」

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