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26.私は信じてるから!

「力を貸すってどういうことだよ? これは個人のランキングだろ?」


 蓮のその疑問には答えず、俺は話を続ける。


「……今から言うことはただの提案だからさ、怒らないで聞いてほしいんだ」


「ああ」


「実はこのランキング。総合ランキングだけは『ポイントの増加数』じゃなくて、今の『ポイントの所持数』で決まるんだよ」


「……ッ!」


 ここで蓮だけ一足先に反応を示した。やはりこいつは鋭いな。


「だから集計前に、みんなのポイントを俺に移してくれたら。そのポイントでランキングに乗るかもしれないんだ」


「まさかお前……僕らのポイントを全部渡せって言いたいのか!?」


「うん、そういうこと。もちろん集計後は返すし、何なら増やして返したいって思っているよ」


 我ながらなんて詐欺チックな言葉だろう……でもそうやって言うしかないんだよなぁ。


「でっ、でもそれって! シュウイチがボクらのポイントを持ち逃げする可能性だってあるだろ!」


 透子ちゃんが横から会話に割り込んでくる。そしてそれを聞いた俺は、逆にホッとしてしまったんだ。


「透子ちゃんが人を疑えるようになってて、俺は嬉しいよ……うん、透子ちゃんの言った通り、その可能性は捨てきれないね」


「えっ! それって、ボクらにメリットが全く無いじゃんか!」


「そうだよ。だからこうやって必死に頼んでいるんだ」


「……」


 透子ちゃんは黙ってしまう。その代わりに口を開いたのは蓮だった。


「神谷……どうしてそこまでお前はランキング1位に固執しているんだ? まさか『モテたいから』何て言わないよな?」


「正直に言えばそれもあるよ……いや、それが1番かもしれない」


「お前なぁ……」


 蓮は呆れ顔を見せる。この顔も見慣れたものだ。


「……だけどね。ランキング上位に入ればボーナスポイントだって貰える。それにこの時期に大量のポイントで1位を取れば、高学年にも強いプレッシャーを与えることだって出来るんだ」


「……」


「ここで名前を載せられたら、後々大きなアドバンテージとなると俺は確信している。学園最強を目指すには、絶対に必要な過程なんだと考えているんだ……だから頼むよ、蓮」


「いや、でもな……」


 蓮もそこから喋らなくなってしまった。


 そしてこの場に重い静寂が訪れたのだったのだが……


「……私、やるよ」


 その空気をブチ壊したのは、藤野ちゃんだった。


「ええっ!? 結菜、嘘でしょ!?」


「おい止めとけって! 神谷の言うこと聞いてたら、大変なことになるぞ!」


 ……何だその言い草は。いや、まぁ分かるけどさ。


「……」


 だけど。藤野ちゃんは2人の声には耳を貸さずに、真っ直ぐ覚悟を決めた目をして……こう言ったんだ。


「実は私ね。元々この学園に入る資格すら無かったんだよ。でも神谷君のおかげで、チャンスが与えられて、入学することが出来たの! ……だから! 私は神谷君に恩返しをしたい! 私に出来ることを手伝いたいの!」


「ふっ、藤野ちゃん……!」


「それで騙されたって別に構わないけど……私は信じているから。私を何度も助けてくれた、優しい神谷君を信じているから!」


 何だか泣きそうになってきた。


 藤野ちゃんはここまで俺を信じてくれている……だから。そんな彼女のためにも、俺は1位を取らなくちゃいけないんだ……!


「うっ……ううっ! ふ、藤野ちゃーん!! ありがとう!! 大好きだよ!! 俺とハグしよう!!!」


「も、もう! ここではダメだってば!」


 ……この時、神谷に電撃が走る。


 ここ以外でならハグしても良いのか……?


 そしてそんなビリビリ状態の俺に向かって。


「……分かった。結菜がやるのなら、ボクもやるよ」


 透子ちゃんも覚悟を決めたのか、俺のお願いを飲んでくれたんだ。


「透子ちゃん……!」


「えっ、嘘だろ!?」


 蓮は透子ちゃんの行動までは読めていなかったのか、大きな動揺を見せていた。そして透子ちゃんは小さな声で。


「一応ボクだってシュウイチに助けてもらった身だし……ホントはオマエのことはキライだけど。大っキライだけど。結菜だけにやらせるのも、イヤだからな」


 素っ気なさそうに言ったんだ……透子ちゃんの照れ隠しがあからさま過ぎて、何だか微笑ましくなってしまうな。


「そっか。ありがとね、透子ちゃん! 俺、透子ちゃんも大好きだよ!」


 そしたら透子ちゃんは顔を真っ赤に変えて。


「……っッ!! ば、バカっ!! ボクはオマエなんか、全然好きなんかじゃないんだからなっ!!!!」


 そう言って、フォークを俺に向かって投げてきたんだ……全く、素直じゃないんだから。あははは。


「か、神谷君、大丈夫? 右腕にフォーク刺さったでしょ……?」


「安いもんだ。腕の二本くらい」


「安くないってば!」


 まぁ血とかは出てないし大丈夫だろう……それよりも気になるのは。


「残ったのは僕、だけか……はぁ。ホント冗談キツいっての」


 蓮の行動だ。俺は蓮の方を向いて、答えを求める……そしたらその圧に耐え切れなくなったのか、蓮は目を逸らして。


「……はぁ。分かったよ。やればいいんだろ?」


 ぶっきらぼうにそう言ったんだ。


「本当か! ありがとう蓮!」


「でもお前。もしも逃げたりしたらどうなるか……分かっているよな?」


「ああ。もしもそんなことがあったら、存分に俺を殴ってくれ!」


「拳だけで済むと思ってるのか?」


「ひえっ……」


 ま、まぁとにかく。みんな協力してくれるらしい。これは本当に助かるよ……! やっぱり持つべきものは友だね!


「それで集計のある最終日に、神谷君へポイントを渡すってことは分かったけど……それまで私達は何をしていたらいいんだろう?」


「普通にゲームしてたら良いんだよ! ボク、稼げる場所知っているもん!」


「えっ? 本当に? それってどこなの?」


「うん! カジノ!」


 アカン。それは増やすどころか、ガンガン減っていく一方だよ。


「えっと……申し訳ないけれど、この四月中のみんなの行動は、俺が全て決めさせてもらうよ」


「ええーっ!? そんなの聞いてないぞ!」


 透子ちゃんは納得出来ないらしく、不満の声を上げる。でもそうやってしないと、少なくとも透子ちゃんは破産すること間違いなしなんだよなぁ。


「後出しみたいになったのは謝るよ……でも。俺が今から教えるのは、現時点で考えうる限りの、最高に効率の良いポイントの稼ぎ方だ。知りたくない?」


「そ、それは……」


「……とりあえず聞くだけ聞こう。聞いた後に返事を変えたっていいはずだ」


 ひとまず蓮がこの場を治め、話を聞いてくれるような状態に戻してくれた。


「ありがとう蓮」


「フン……早く言え」


 そういや蓮もツンデレみたいな所あるよなぁ……とかなんとか思いつつ。俺はみんなに向かって、こうやって言ったんだ。




「とりあえず君たちは……今月は一度もゲームをプレイしないでほしいんだ!」




「……えっ?」「……はっ?」「……あ?」

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