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25.力を貸してくれ!

 ──


「……えっ、えーっと。紹介が遅れたね。この子は明智透子ちゃん、です」


 それから本当に蓮と藤野ちゃんの力を借りて、何とか透子ちゃんを俺の腕から引き剥がすことに成功したのだった。


 まぁその代償として、俺の腕は真っ赤になってしまったが……安いもんだ、腕の一本くらい。(ドン!!)


「それで彼女は、小さな身体に、凄まじい、パワーを秘めています。でも、優しい心も、持ち合わせている、とっても良い子です。カジノで遭遇しました」


「……いや、何だ。その〇ケモン図鑑みたいな説明は」


「だって! これ以上変なこと喋ったら、もっと攻撃してきそうだもん! だからとっても真面目に説明しているんだよ!」


 流石にもう一度攻撃を受ける勇気は無いので、怒らせないように細心の注意を払って、透子ちゃんを紹介したつもりだったのだが……


「いや、どこがだよ」


 蓮曰く、これも相当変な説明らしい。


「何だ蓮! 天下の〇ケモン様に喧嘩売るって言うのか!?」


「言ってねぇよ」


 そんな風に男同士でわちゃわちゃしている間に……透子ちゃんは藤野ちゃん側の席に着いたようで、女子同士でも会話が繰り広げられていた。


「キミも神谷君のお友達なんだね! 私も透子ちゃんって呼んでもいいかな?」


「えっ? べっ、別にいいけど……」


「うん、ありがとう! 私は藤野結菜! 私のことは好きに呼んでいいからね!」


「えっ、えっと、じゃあ……結菜……?」


 そしたら藤野ちゃんはキラキラな笑顔を見せながら、両手を叩いて。


「わぁっ! 名前で呼んでくれるの!? えへへっ、嬉しいな!」


「そっ、そうなのか?」


「うんっ! とっても距離が近くなった気がするし! それにやっと女の子の友達が出来て、私嬉しいんだよー! 透子ちゃんはそんなことないかな?」


「えっ……あっ、うん。ぼ、ボクも。嬉しい……かも」


「えへへっ!」


 ……なっ、何だこのてぇてぇ空間はッ!! ここが本当の楽園なのか!? ちょっとそこの空気、吸っても良いですか!?


「……っすぅぅー」


 俺はバレないように小さく深呼吸をしつつ、その光景を眺め続ける……


「ふぅーっ……」


 ……いや、実はね。2人が仲良く出来るかどうか、ちょっとだけ心配していたんだ。でもそれも……俺の杞憂に終わったみたいだ。


 透子ちゃんは人見知りがちな所があるけれど。藤野ちゃんの持ち前の明るさで、それは簡単に無くなるんだよね。


 それに性格は違えど、2人とも良い子であることは間違いないから、きっと良い友達になるだろうな……


「……なに見てんだ、シュウイチ。気色悪い。ヘンタイ」


「どうして俺には厳しいんだよ!?」


 透子ちゃんはジト目で……いや、ゴミを見るような目で俺に言う。藤野ちゃんと話している時と態度が全く違うんだけど!


「……でもまぁ、こんなにツンツンしてるってことは、1番俺に心を開いているってことだから……喜んでもいいよね!」


「どんだけポジティブなんだよお前……」


 蓮が呆れたように言う。そして俺の正面には、手に力を込めてアイアンクローの準備をしている、透子ちゃんの姿が……


「すっ、ストーップ!! じゃあもう早速、本題に入ろうか!!」


 これ以上雑談を続けていたら、俺の身体が持たないと直感した俺は、もう本題に入ることにしたんだ。


「あっ、そういえば神谷君がみんなを集めたんだよね! 何か理由があったの?」


「うん、そうそう。ちょっとみんなに話というか……相談というか……提案があってね」


「煮え切らないヤツだな。早く言えよ」


「はやく言わなきゃブチブチにする」


「ブチブチって何だよ! 物騒だな!」


 もう俺の味方が藤野ちゃんしかいないんだけど! 世界が敵になっても、君だけは味方でいてくれ! パフェあげるから!!


「いや、あのね。俺達も正式に入学してさ、解禁されたことも多いじゃん。そのひとつが……これでさ」


 そう言いながら俺は机の上にタブレットを取り出して、表彰台のイラストが描かれたアプリのアイコンをタップする。


「神谷君、これって?」


「これは『ランキング』さ。誰がどのくらいのポイントを稼いだのかを、学園側が可視化してくれているんだ」


 例として適当に『FPS』のジャンルをタップして、スクロールをさせながらみんなに画面を見せる。


「こんな風にポイントだけでなく、順位も見られるようになっているんだ。そしてジャンルや期間も細かく検索出来るんだよね」


「これがどうしたんだ?」


「うん、実は俺ね。このランキングのトップになって、名前を刻もうって考えているんだ。それも当然、何かのジャンルの1位なんかじゃなくて……この『総合ランキング』の1位をね」


「……」


 それを聞いた3人を一同に顔を見合わせ……「おいおい神谷」と。


「いや、いくらお前がゲーム上手いからと言っても、それは厳しいだろ。それに僕らは新入生で掛けられるポイントも限られている。1位なんか到底無理だ」


 現実主義者の蓮が、そうやって言ってきた。その主張は、ごもっともではあるが。


「それは分かってるよ。それに何も、今すぐに1位を狙うワケじゃない。ひとまず今回は『1年生』の中での月間1位を目指そうと思つているんだ」


 決めた以上、俺は絶対に目標は曲げない主義なんだよ。


「それでも相当難しいと思うけどな……というかどうして月間1位なんだ?」


「ランキングは月に1回の更新だから、結果的に月間1位を狙うことになるんだ」


「へぇ、そうなのか」


 ランキングは新しい月の初日に更新される。これは調べて分かったことだ。


「それで蓮の言った通り、1年生のランキングに絞っても、1位になるのは難しいかもしれない……」


 そこで俺は立ち上がって。


「だから! みんなの……藤野ちゃん、透子ちゃん、蓮の力が必要なんだ! 良かったら俺に力を貸してくれないか!」


 そうやって言いながら、俺はみんなに向かって頭を深く下げたんだ。

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