24.助けて……蓮……! 藤野ちゃん……!
それから俺は学園にある様々なゲームをプレイしたり、いつものように初心者狩りが行われていないかをパトロールしたり……はたまた学園にある娯楽施設で遊んだりして、仮入学中の日々を過ごしていた。
まぁまぁ充実した日常を送ることは出来たのだが、ずっと1人で行動していたため、時々寂しい気分になったとかなんとか。
……そして今日、ようやく入学式が行われる。試験に合格した一般生も加え、俺達は正式にサイコー学園の生徒となるのだ。
本格的に始まる学園生活。新入生も増え、仮入学中では出来なかったことも解禁される。今よりももっと学園生活が楽しくなると考えた俺は、ドキドキとワクワクが止まらなかったんだ。
「んー。とりあえず在学中の目標は……沢山の可愛い女の子にモテることかなー?」
そう呟きつつ、髪をセットして、制服姿に着替える。そして外へと続く扉に手をかけた。
「遅いぞ、神谷」
そして外には不機嫌そうな表情をした蓮が、ポケットに手を突っ込んで立っていた。その姿は無駄に様になっている……高身長ってホントにズルい。
「いやーごめんごめん。イイ感じに髪をセットしてたから、遅れてしまったよ」
「は?」
「は? って何だよ! これでも俺だって、年頃の男の子だぞ! 蓮もオシャレのひとつくらいしてみれば……」
「興味無い。さっさと行くぞ」
「あっ、おい、待ってってば!」
俺はさっさと入学式会場へと歩いて行く、蓮の後ろ姿を追いかけて行った……その時。
「……ん!」
新しい青春が始まりそうな。心地の良い風が、俺の頬を撫でた気がしたんだ。
──
「……校長の話、すんげー長くなかった? 俺、ホントに倒れそうになったよ」
「どこもそういうモンだろ」
入学式も終わり、俺達はレストランに集まっていた。もちろんその理由は、昼食を取る為であるが……他にも理由があって、みんなをここに呼んでいたんだ。
「神谷君! そんなこと言っちゃダメだよ! 校長先生だってきっと、前日から頑張ってお話を考えたんだと思うからさ!」
「……藤野ちゃんは本当に優しいんだねぇ」
まさか校長側の味方をする人物がいたとはね。こんな子は初めて見たよ……うん、少しイジワルしてみよう。
「んーじゃあ藤野ちゃん。校長先生は一体どんなことを新入生に話していたのか、俺に詳しく教えてよ?」
「えっ? うん、いやあの、えっとね……?」
藤野ちゃんは焦ったように口ごもる。やっぱり藤野ちゃんも、しっかりとは話を聞いてなかったらしい……まぁそんなもんだよね。ドンマイ、校長。
「……それで神谷。これで全員なのか?」
そしたら助け舟を出すように、すかさず蓮が俺に話しかけてきた。何だ、そんなイケメンみたいなこと出来たのかお前!
「えっ? い、いや。あと1人呼んでいるよ」
かなり動揺しつつ、俺は答える。
……まぁ。本当はあと2人呼びたかったんだけども。その内の1人は、アイドル業で忙しいだろうから、呼ぶのは控えておいたんだ。
「ふーん、そうか」
「えっ? 神谷君、あと1人呼んでいるの? それってどんな子なの?」
藤野ちゃんが興味ありげに聞いてくる。ならば教えてあげようかな。
「うーんとね。ツンデレ照れ屋のロリ系、可愛さマシマシのボクっ子ガールかな」
「えっ? なっ、何? 呪文?」
「だからー。小動物みたいでキュートな女の子で……」
そこまで言った所で。俺の座っている通路側の腕……左腕に何か感触がしたんだ。
「へっ?」
思わずそっちの方に首を向けると。
「──あっ」
「ぐっ……ぐぅぅっっ……!!」
顔を真っ赤にした、ボクっ子少女こと……透子ちゃんの姿がそこにはあったんだ。
そして彼女の手は、俺の腕をがっしりと掴んでいた……こ、これは。マズイのでは? どうにか誤魔化さなくては……!
「あっ、あぁ来てくれたんだね! 透子ちゃん!! さぁ座って……」
「ボクを……変な名前で呼ぶなぁ!!!」
俺の誤魔化しも虚しく。透子ちゃんは更に爪を立てて、力を入れ……俺の腕に大ダメージを与えたのだった。
「ああっ!! 痛い痛い痛い!!!! たっ、助けて!! 蓮……! 藤野ちゃん……! 神谷君っ……!」
「じゃあお前誰だよ」




