表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

150/159

149.くだらないけど愛おしい

 ────


 ……それから俺は全員分のチケットを袋に詰めて、再度リーダーのみんなに頭を下げ、この場を後にしたんだ。


 それでクランハウスに着いた途端、疲れが溜まり過ぎたのか、とんでもない睡魔が俺を襲ってきて……寝室でも何でもないような場所ですぐに寝てしまったんだ。話によると、みんなも同じようにすぐ眠ってしまったらしい……何故か俺を囲むようにして寝てたんだけど。


 そして迎えた次の日。予選の結果の集計ということで、集めたチケットを運営側に持ってって、チケットを回収してもらったんだ。その予選の結果は何日か後に出るらしくて、その間……俺は落ち着いて過ごせなかったんだ。


 それでこのまま何もしないで、ただ結果を待つことが出来なかった俺達は、この時間を使って、行けていなかった蓮のお見舞いに行ったんだ。蓮の意識は未だ戻ってはいなかったけど……彼の顔が見れて、俺はほんの少しだけ安心できたんだ。


「……蓮。俺が絶対に仇を取るからな。だからお前も負けないでくれよ……!」


 そうやって彼に伝え、俺は病室を後にした。次は『優勝した』って報告をしに行くから。それまでには目を覚ましておくんだぞ。蓮。


 ────


 それから、数日経ったクランハウス。


「さて……今日が決勝進出クランの発表の日だけど」


「結果はどうなりますかね?」


 いよいよ今日、決勝進出クランの発表が行われるのだった。それで、例年では大々的な発表が特設ステージで行われていたのだが……何故か今年はそんなものはなく、ネット上での発表だけだと伝えられていたんだ。


 どうしてこんな感じになったのか定かではないが、生徒会が絡んでいたりするのだろうか……? まぁ真相は闇の中だから、考えるだけ無駄なんだけどね。


「おっ、修一出たよ」


 誰よりも先に朱里ちゃんの口が開く。聞いた俺らは一斉に、開いていたパソコンの画面に視線を向けると……そこにはクラン名が大きく載っていて……。


「なっ……!? 二つだけしかないぞ!?」


「ウチら『チーム神谷』と『生徒会』だけ……どういうことだろうね?」


 そこには俺らと生徒会のクラン名しか載っていなかったんだ。ひとまず俺らのクランが載っていたことには安堵したが……これはどういうことだ?


「うーん……分からない。決勝に進むために必要なチケットが予想以上に必要だったのか、元々二つのクランしか決勝に進ませる気がなかったのか……」


「そんなのどうだっていいよ、シュウイチ。これで『決勝参加チケット』を奪った相手が生徒会ってことが確定しただろ? やっとヤツらをボコボコに出来るんだ」


 ……確かにそれは透子ちゃんの言う通り、蓮を怪我させた相手はもう生徒会で間違いはないだろう。だが、チケットも運営に手渡ってしまっているし、もう時間も残ってはいない。生徒会の暴行を暴いて、大会から引きずり下ろすことは難しいだろう。


 だから。


「うん。俺らはゲームで、奴らをめちゃくちゃにぶっ潰す。その後に時間をかけて、奴らの悪事を告発していこう」


 まずはゲームで勝つ必要があるんだ。それに優勝した後で、発言権を持った俺らが告発した方が、きっとそれが成功する確率は高いだろう。だから……この勝負、俺は絶対に負けられないんだよ。


「それで……決勝はどんなゲームが行われるんでしょうか?」


「それがシークレットになっているんだよね。詳しいことは当日にならないと分からないみたい……つっても、決勝は明日行われるらしいんだけどね」


「ええっ! そんなことあるの? それまで何してればいいのさ?」


「あっ、神谷君! ここに何か書いてるよ!」


 ここで藤野ちゃんがトントンと液晶を叩いて、小さく書いてある文章を指したんだ。俺がそこを拡大して、その文を読んでみると。


「なになに……決勝戦は各クランから選ばれた代表一名で行われる、だってさ」


 それを聞いたみんなは一斉に、俺へと視線を向けてきたのだった。


「えーっと。一人だけって……これ、俺が出てもいいの?」


 言うとすぐに返事が返ってきて。


「ええ、当然ですよ!」


「いや、というかオマエじゃなきゃ、誰が出るんだよ」


「そうだよ! 神谷君じゃないと勝てないよ!」


「反対する人なんて、ここには誰もいないよ。思いっきり暴れてきなよ、修一?」


「んんwww神ちゃん以外ありえないwww」


 そんな感じでみんな、俺を推薦してくれたんだ。ここまで俺を信頼してくれてるのなら……断る理由なんか無いよ。


「うん、分かった。俺がみんなの……朱里ちゃんのファンのみんな、チケットを渡してくれた各クランのリーダー。そして君ら仲間、蓮の想いを引っ提げて、俺頑張るからさ!!」


「その意気ですよっ! 王子様!」


 そして真白ちゃんが俺を鼓舞するためか、精一杯背を伸ばして俺の頭をよしよしと撫でてくれたのだった。


「うーーああ~癒される……」


 そんな光景を見ていた藤野ちゃんは、ちょーっとだけ不満そうな表情で。


「……それで、決勝は明日なんだよね? 神谷君は今日、どうやって過ごすの?」


 そうやって俺に聞いてきたんだ……うーん、今日やることね。前にも言ってたと思うけど、レジェンド大会期間中はお祭りみたいな感じで、授業とかは休みになるんだ。だから他の生徒は、普段と違う日常を楽しんでいるんだけど……。


「遊んだりするのも悪くないけどさ。今日は決勝の準備をしようかなって思ってね」


「えっ、でも、どんなゲームが行われるか分からないんじゃ、準備のしようがないんじゃ……?」


「どんなゲームにも対応するのが、真のゲーマーだよ。じゃあそろそろ俺は買い物でも行こうかなって思うけど……ついて来る人いる?」


 俺がみんなに向かってそう聞くと、勢い良く上がる手が複数あって。


「あっ、はいはい! 私行きますよ!」


「あ、じゃあ、またみんなで手を繋いで行くのはどうかな?」


「ふふー。なら次は私が修一の隣ね?」


「ぼ、ボクも隣でイイだろ!? イイって言え、シュウイチ!!」


「え、またウチはお預け食らうんですか!? やっぱり五番目の女にはみんな優しくしてくれないんですかにゃ!?」


「誰もそんなこと言ってないって……じゃあ、花音ちゃんは帰りに手繋ごう」


 そう言うと、花音ちゃんは嬉しそうに両手を振り上げながら。


「ホントに!? わーい、やーったやった、やったったー!」


「GⅠレースにでも勝利したの?」


「えへっ、正解!」


「あははっ……」


 本当に……くだらないけど愛おしい。こんな大切な場所を守る為にも、俺は絶対にヤツに負けられないんだ。そんなことを思いながら俺は、彼女達と手を繋ぎ……準備のためのお買い物へと出かけて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ