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109.実にお前らしい答えだ

 ────


「……みんな集まってくれてありがとう。今から緊急会議を開きたいと思うよ」


 次の日。俺は花音ちゃんを除いた、仲間全員をクランハウスに呼び出していた。もちろんその理由は……花音ちゃんのことを話し合うためである。


「まーた急に呼んで……何だ、今度は鳥咲と喧嘩でもしたのか?」


「そんなんじゃないってば! 花音ちゃんは……今、とっても悩んでいるんだよ」


「悩んでいるって、どういうことでしょうか?」


「うん。全部説明するよ」


 そこで俺は昨日の出来事をみんなに全て話したんだ。二人でメイドハウスに行ったこと、店長から再びメイドにならないかと誘われていること、そして……泣いて俺の前から姿を消したことを。


「彼女は自信を失っている。前々から自分の中で思っていたのかもしれないけど……店長から明確な言葉で言われて、自分は役に立たないと思い込んでしまったんだよ」


「そんな……! でも、神谷君はそんなこと絶対に思ってないでしょ?」


「当たり前だよ! 花音ちゃんは絶対にこのクランに必要な仲間なんだよ! もちろんみんなだって……誰一人欠けちゃいけない存在なんだよ!」


 そうやって俺はみんなに力説した。この考えは、クランを立ち上げた時からずっと変わっていない……もちろんこれからも変わることはないんだ。


「まぁ……それは僕も同じ意見だが。だが当の本人である鳥咲は、そうとは思っていないんだろ?」


「えっ?」


「鳥咲はこの場所に居てはいけないと思っている。神谷の説得も通じていない。なのに無理やり引き留めて、この場に残そうとするのはお前のエゴなんじゃないのか?」


「そっ、それは……!!」


 ここで透子ちゃんも口を開いて。


「……ボクも同じだよ。カノンは面白いし、ゼッタイここに居た方が楽しいのは分かるけど……でもカノンがここに居るのがツライなら。またメイドをやりたいって言うのなら、温かく送り出してやるのもボクらの役目なんじゃないのか?」


「…………」


 蓮と透子ちゃんにそう言われ、俺は何も言えなくなる。これは……本当に俺のエゴなのか? 俺は更に花音ちゃんを苦しめようとしているのか? そんな筈は……!!


「んー。こればっかりは難しい問題だね。まぁ私もどちらかと言うと透子の考えに近いけど……でも。花音は助けを求めている気がするんだよね?」


「助け……?」


「うん。修一に助けてもらいたい。でも何も信じられない。だから怖くて、私らの前から逃げているんだと思うんだよ……まぁ、これは何の根拠もないけどねー」


 朱里ちゃんはそうやって、ちょっとだけ笑って言ってみせたんだ。そしてここで真白ちゃんも口を開いてくれて。


「……わ、私は。王子様と同じ意見ですよ! 花音さんが居なくなるのはとても寂しいですよ!」


「うんっ、私もだよ! ちょっとわがままかもしれないけど……でも、それでも花音ちゃんが離れていくなんて、やっぱり私は嫌だもん!」


 藤野ちゃんも真白ちゃんの意見に賛同するよう、頷きながら大きな声で言ってくれたんだ。


「おー。これは綺麗に半分に分かれちゃったねー?」


「まぁ、僕らの意見なんかあまり意味なんか無いさ。最後に決めるのは……このリーダーなんだからな」


 そう言って蓮は俺の方を見る。そして蓮に続けて、全員の視線が俺の方へと向いてきたんだ。


「神谷君……!」「シュウイチ……!」


 そして彼女らは期待の眼差しで、俺の答えを待っていたんだ。


「……」


 俺は息を吸う……そして。俺が頭に浮かんだこと全てを口にするのだった。


「俺は……俺は! やっぱり花音ちゃんが居なくなるのは耐えられない!! エゴだって言われてもいい! 嫌われたっていい!! 殴られたっていい!! ……それでも本当に俺らが嫌なら、抜けてもいいよ…………でも!! その前にもう一度花音ちゃんと会って話がしたい!! みんなと会って欲しいんだよ!!」


 そうやって俺は言い切ったんだ。そして俺はみんなの顔を見ると……全員、納得したような表情を見せてくれたんだ。


「ああ、そうだな。実にお前らしい答えだ」


「それでこそ王子様ですよ!」


 そうやってみんな、俺の意見を受け入れてくれた……その事実が、とっても嬉しかったんだ。


 そして続けて俺は言う。


「ありがとうみんな! それじゃあ早速、花音ちゃんの捜索を開始しよう! みんな外に出る準備をしてくれ!」


「うんっ!」


 ここでまた一つ、仲間同士の絆が深まった気がしたんだ。

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