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102.拍手喝采?

「ふぅー。大量大量……この格好だったら最悪出禁になっても、ノーダメだから助かるなぁ」


 そう呟きつつ俺は、取ったぬいぐるみを全て袋に詰めていた……何だかゲーセンの袋って透明な物が多いような気がするけれど、これって店側の策略なのだろうか? 見た人が『アイツが取れてるなら、俺も取れる筈だ!!』みたいな感覚に陥ってしまうのだろうか。詳しい人、詳細キボンヌ。


「本当に凄いね、シューちゃん! シューちゃんなら取った景品だけで、普通に生活出来るんじゃないの?」


 俺の横で、朱里ちゃんは目をキラキラ輝かせて言う。確かに俺も小学生くらいの頃は、朱里ちゃんと同じこと考えてた気がするけどね……


「まぁ出来るとは思うけど……やらないよ?」


「どうして?」


「色々と面倒だからね」


 まず食べ物類は、お菓子やカップ麺ばかりですぐに飽きそうだし……それにぶっちゃけると、ゲーセンの食べ物って箱がデカいだけで、中身はかなりスカスカなんだよね。


 だから俺ぐらいの腕があっても、プラスになるかどうか危ういくらいの景品だから……他の人がやるくらいなら、普通に買うことをお勧めするよ。……何か夢の無いこと言ってごめんな。


 そんで他の景品……フィギュアやぬいぐるみ類は、売れば稼げるんだろうけれど、普通に面倒だし。そもそも俺は転売が嫌いなんだよね。だからそれは論外。


「んー、時間がかかるってこと?」


「もちろんそれもあるけどね。敵はクレーンゲームだけじゃないんだよ」


 そして俺は横目で店員さんの姿を見た……そう。クレーンゲーマーの最大の敵は、設定を変えてくる店員さんなのだ。


 それで朱里ちゃんは察してくれたのか「ああー」と一言呟いたのだった。


 ……ま、俺だって普通に遊ぶ分には、クレーンゲームはそんなに嫌いじゃないんだけどさ。店員にマークされたり、ギャラリーに囲まれたり、ヤンキーに絡まれたりで、良い思い出があんまりないんだよ。


 だから俺はたまーにしか、ゲーセンに遊びに行かないんだよね。


「それじゃあみんなの分取ったし、そろそろ出ようか?」


 そう言うと朱里ちゃんは、慌てるように俺を引き留めてきて。


「あっ、待って待って。まだ終わってないよ?」


「え?」


「ほら、シューちゃんの分のぬいぐるみ取ってないじゃん?」


「ああ、そっか」


 自分の分のことをすっかり忘れていたよ。まぁ別に、自分の分は要らないんだけどな……なんて思っていたのだが。


「じゃあここは私に任せてよ。シューちゃんの取ってあげるからさー」


 その朱里ちゃんの言葉で、俺は一気に考えを改めるのだった。


「えっ、ホントに? それじゃあお願いしてみようかな?」


「ふふー任せてよー。シューちゃんはどんなのが欲しい?」


 朱里ちゃんはそうやって聞いてくる。うーむ、ここは誰とも被っていない種類の物を選ぶべきだよな……


「……」


「ん、どしたの、シューちゃん?」


 ……いや、違う! そんなんじゃない! 俺が本当に欲しいぬいぐるみは……!!


「……猫。俺も朱里ちゃんとお揃いの、猫のぬいぐるみが欲しいな!」


 そう言うと朱里ちゃんは、堪えきれなかったのだろうか。嬉しそうに口元を綻ばせて。


「んふふっ。分かった。やってみせるよ!」


「うん、お願いするよ」


 そして俺らはまた、猫の景品が置かれている場所にまで戻って来たんだ。


「全く同じのを取るのは流石にアレだから、色違いの白猫のにしよっか?」


「うん、任せるよ」


「分かったー」


 そう言って朱里ちゃんは、白猫のぬいぐるみが置いてある方でプレイを始めたのだが……当然、タグかけなどは出来る筈もなく。掴んだと見せかけたアームは、次第に力を失っていき、頂点付近でぬいぐるみを離すのだった。


「うーん、おしいなぁ?」


「……」


 ……まぁこれはただの演出なんだけど。野暮なことは口に出さない方が良いかもな。


「あーまた失敗!」


「……」


「もっ、もう一度だよ!」


「……」


「こ、今度こそっ!!」


 次第に朱里ちゃんは熱くなっていき、ノータイムでポイントを投入していく。ここまで必死な朱里ちゃんは、初めて見たかもしれない。


「……ん?」


 それで朱里ちゃんが熱くなるにつれて、ギャラリーがどんどん増えていっているような気がするんだが……何だ、ハイエナか?


 ……いや、違う。まさかこれは……!!


「いけっ、あかりん!」


「あー惜しい! 頑張れ!」


 ファンだ。ファンが朱里ちゃんがプレイしているのに気が付いて、それでゲーセンに居た人らが続々とこの周辺に集まって来ているんだ。本当にこの子は人気者なんだなぁ……


「みんな、ありがとう! 私、絶対に取るからねっ!」


 朱里ちゃんは一度振り返ってそう言い、またガラスの中の白猫と格闘を始めていった。


「……」


 朱里ちゃんがレバーを動かす後ろ姿を、ファン達は固唾を飲んで見守っている。そして掴んでアームが力を緩めるのと同時に、朱里ちゃんと同じように、ギャラリーは落胆の声を上げるのだった。


 最初の方は傍観していただけの俺も、ファンの熱に感化されたのか。いつしかその一員に加わっていたんだ。


「ああ、もう一回っ……!!」


 ……そして遂にその時はやって来て。ぬいぐるみを掴んだアームは、いつものように緩まることなく、落とし口まで運んで行き……


「えっ……!?」


 ドサッと落ちたかと思えば、景品獲得を知らせる鐘の音が鳴ったんだ。


「と、取れたの……!?」


 その後、一気に歓声が上がる。ハッと周りを見てみると、もう二十人近くのファンが、まるで自分のことのように朱里ちゃんの景品獲得を祝っていたんだ。


 そして朱里ちゃんはたどたどしく景品を取り出し、俺に向かって。とっても嬉しそうな表情をしながら、こうやって言ったんだ。


「やっ、やったよ、シューちゃん!! 私の力で取れたよ!!」


「うん! 本当に凄いよ! おめでとう!!」


 既に大量のぬいぐるみが入った袋を抱えた俺が言うのもアレだが……まぁ細かいことは気にしちゃダメだぞ!


 そして朱里ちゃんは、それを俺に手渡してくる。


「はいっ、じゃあこれはシューちゃんの! この子のこと大切にしてあげてね?」


「うん、ありがとう!」


 そして俺が受け取るなり、辺りにいたファン達はパチパチと拍手をしてくれたのだった……本当にこんなことあるんだね。何だか映画のワンシーンみたいだよ。

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