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自分で読みたい悪役令嬢を書いてみたく、拙いですが書いていけたらと思っています。

前世で、読み飽きる位に読んだ転生悪役令嬢もの。

まさか自分の身に起こるなんて、誰も想像しないだろう。




毎朝、侍女に起こされるより先に目が覚める。

高い天井を眺め、息を深く吸い、指先、足の先の感覚を確かめる。

大丈夫、私は今日も生きている。


「アンナ様、起床のお時間でございます」

控えめなノックの後、侍女が寝室へ静かに私を起こしにやって来る。


「…おはよう」

ベットからゆるりと背を起こし、侍女へ微笑む。

アンナ=ウィンストン、この世界の、私の名前。



齢3歳で前世の記憶を夢に見るようになった。

断片的な内容だったからか、最初は不思議な夢だと思っていた。

何となく夢の中のストーリーが続いている感覚はあったけれど、特に気にしていなかった。

だってただの不思議で面白い夢だったから。

今の日常とかけ離れた生活、習慣が幼いながらに新しい絵本を読んでいるようで、夢を見るのが楽しみな位、遠い世界のお話だった。


死ぬ瞬間を夢見るまでは。


その日の朝は、飛び起きた。

身体中がじっとりと汗ばみ、心臓は早鐘を打っていた。


私は、死んだんだ


そう私の全てで実感し、そして、これが現実であったことも、実感した。


とはいえ、今の私は生きていた。

それを信じられるまでは泣いて泣いて両親や侍女達を大層困らせたが、駆け付けてくれた今は亡きお祖母様の「遠い遠い昔の、アンナになる前の、貴方の思い出かもしれないわね」、この言葉で今までの恐怖が嘘だった様に私は落ち着いたのだ。



(そう、落ち着いたわ。でも恐怖を忘れられる訳ではない)


侍女に手際よく身支度を整えられながら、鏡の中の自分を見つめる。

灰色がかった青色の髪。エメラルドグリーンの瞳。


夢で見る「私」は黒い髪に黒い瞳。


私になる前の私の、夢を見た朝は殊更自分の姿に不思議な気持ちになってしまう。

生きて、成長して、死ぬまでを繰り返し夢に見るのだから尚の事。


(今日はまた小さな画面で物語を読んでいたけれど、なんだか今の私に似た部分も多くて…夢の中で私が登場している様な、なんだか不思議な気持ちになるのよね)


でも、夢の中の「私」が読む物語の世界と私が生きる世界は似ているけれど、登場人物達と私は大きく異なっている。


私は物語のヒロインの様に美しくはない。


「アンナ様、お支度が整いました」

「ありがとう」

侍女の声にぼんやりと自身を眺めていた意識を引き戻し、鏡越しではあるが彼女の目を見て礼を言う。

彼女が勤め始めた頃には驚かれたが、今は微笑んで目礼を返してくれるようになった。


夢の中の私は、誰にでも礼を伝えていた。

その姿を幾度となく見ていたら自然と私もそうなっていたのだが、今の私がいる世界では身分の上下がある者同士では稀有な行為でもあった。

けれども、礼を伝えることでお互い穏やかな関係でいられる気がしているので私としては気に入っているし、既に違和感も無く自然な行為でしかなかった。


「おはよう、アンナ」

「おはようございます。姉様」

「おはようございます、お兄様、ロイド」

朝食の席に着くと、先に食事を取っていた兄と弟と挨拶を交わす。

二人は剣の鍛練の為、私より朝が早い。またその為、朝食も早く始めている。

「お父様は?」

「今朝早く登城されたよ。なんだか随分慌てていたな」

質問への兄からの回答に、一人寝坊をしてしまったかの様な、恥ずかしさが滲む。

「姉様、頬が赤い。体調が悪いのですか?」

「…アンナ、君はきちんと睡眠を取ることが何より大事なんだから、そんな事を気にする必要は無いだろう」

私を心配する弟と頬を羞恥に染めた私に、兄が優しく微笑む。

「はい…。ありがとうございます」


私は夢で死を体験してから、眠るのを酷く怖がっていた。

今はマシになってはいるが、その夢に近づくとやはり眠りづらくなる。


「でも、私も春からは王立学園へ入学いたしますし、もっとしっかりしなくてはダメですわよね」


今朝の夢で私が読んでいた物語が頭に浮かび、私はなんとも言い難い気持ちになりつつも、兄と弟にしっかりと微笑みを返した。

お読みいただきありがとうございます。

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