クリスマス特別編② ベル・イエリスのクリスマスボイス
クリスマス特別編、2個目です。
誤字脱字報告助かってます。ありがとうございます。
雪が降るくらいの寒いある日のこと。
部屋でのんびりしている貴方とベル。
「……寒く、なってきましたわね」
ぽつりとベルがそう漏らす。
ほうと息を吐く音がして、ベルが近くにいることがわかる。
「向こうでも冷えると暖炉を用意することもあったのですけれど、こちらは便利な道具が多くて助かります」
「えあこん、とか、ひーたー、ですか。科学というものはすごいものですわね」
がさごそとベルは動いて、エアコンのリモコンを押したりして、感触を確かめているようだ。向こうの世界にはない機器に興味は尽きないようだ。
「ほら、毛布も用意しましたので、あったかいですわよ?」
ベルは貴方に毛布を差し出してくる。
貴方は、そんなベルにせっかくならと提案するのだけど。
「外に、ですの? ……これだけ冷えていると、億劫になってしまいますわね。家でまったりの気分なので」
「貴方は、外に出たいですか? 私は、できればこのままのんびりとしたいです」
そこまで念を押されるならと、貴方は家にいることを決める。
「はい、そう言っていただけると思ってましたわ」
にっこりとベルが微笑む。
してやられた、そう貴方は思う。
「ふふっ、してやったり、といったところですわね。普段お勉強にお付き合いしてもらっていますので、リップサービスです」
しんしんと、雪の音がする。
それに釣られて、貴方とベルは窓の外に目を向ける。
「あっ、見てください。雪ですよ雪! リース先輩が降らせているんですってね。とっても綺麗ですわね」
リース・ピュア・スノウは、雪の妖精。雪を降らすのはお手の物というわけらしい。
ただ、その雪を見るベルの表情はあまり良いものではなかった。
「雪には、あまりいい思い出がないのですけれど、それでもこの雪は綺麗ですね。すごく……綺麗ですわ」
遠く遠くに想いを馳せるような、ベルの表情に貴方は言い淀む。
ただ、そんなベルの表情もすぐに切り替えられて変わっていく。
「……いけませんね。いえ、なんでもないのです。ただ、ちょっとだけ感傷に浸ってしまって……ごめんなさい」
貴方は、ベルに優しく言葉を置いていく。
何をわかるわけでもないけれど、それでも力になれればいいと、そんな希望的観測を抱きながら。
「……貴方は優しい言葉をかけてくださるのですね。ありがとうございます」
窓の外を見ながら、貴方はベルに毛布をかけられる。じんわりと暖かい。
──雪の音が聞こえますよ。暖かいから、もう少し、このままで。
ベルの声が近くで聞こえる。
曖昧な距離感のままでも、彼女との時間は、冷たくも暖かい。
雪の音は、まだ止みそうもない。




