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第47話  インタビュー後、ライブ前。そして幕は上がる

 出演者へのインタビューが終わり、私の出番もおおよそ終了した! おつかれさぁしたぁ!


 【D'ream】やアンジェラ&皇るうの【天使と悪魔】、祈里先輩に花奏先輩と、かなり豪華な面々に囲まれて、戦々恐々ではあったものの、なんとか使命を果たすことができた。トークがどこいくねーんになった時は流石に焦りましたけども!


 そして何より、私が驚いたのはフレイア先輩のことだ。



 まさか、フレイア先輩が。

 あんなに可愛らしい男の子だったなんて。違う、()()()だったなんて!



『……あの……ボク……男です……』


 と、もじもじしながら話してくれたフレイア先輩、めちゃ可愛かった!


 あの可愛さの秘密、教えて欲しいくらいだよ! 少し分けてくれないかなぁ!?


 でも見た目じゃ性別が分かりにくいくらい、中性的で美少女って感じで可愛かった。すこです。ニホンスココドリだわ! すこーっこっこっこ!


 インタビューの時もすごく視線を浴びせてしまいそうになったけど、抑えましたとも!

 なんか、じっと見るのも悪い気がしたので! でも、ちょっとくらいは許されると思うんだ! あやまらないよぉ! スィヤセン!


 あとハンカチは後日返す予定です! 涙拭かせてもらってさんきゅな!



 しかし、目の前で! みなさまが! 動く!


 これがたまらんばい……!



 インタビュー後に少しだけお話しすることができたのだけど、ライブ前の独特の空気感に呑まれて、いつものように話せなかった気もする。本番前とか、異様な雰囲気に包まれるよね。



 ともあれ、私の仕事はほとんど終わり、後はライブを楽しみ、ライブでのオススメ曲を後の『ウラバナシ』でナレーションするという大役も待っている。うへぇ。


 後は比較的気楽にというか、余裕を持って取り組めると思われるので、そこまで持っていきたいという気持ちである。



「しかし、ライブの関係者席で観ることができるとは……ライバー恐るべし」


 これが権利を持つ者の力ッ! 強者にはなぁ、ルールなんて関係ねぇんだよなぁ!!


 なんてね。

 それはまあ、流石に冗談としても。というか、むしろお金を払うことによってファンとして胸を張れるみたいな所もあるので、こういう権力の使い方はあんまり……いや、今後も活用していきたいけどね!


 私は、使える物は使っていくオタクなんだよ!

 グッズも頂いちゃったしな!

 私は今、オタクの最前線に立っている!!


 興奮冷めやらぬままに、ライブ前日は過ぎていく。



 * * *



 というわけで、ライブ当日である。

 時間が過ぎるのは、本当にあっという間。時の流れに身を任せると、置いていかれそうになりますね! IQの向こう側に行ってしまいそう!


 関係者席は、2階付近にある特殊なエリアで、ステージ全体を一望できる上に、その他の観客もいないという、私達だけのアリーナ状態。


 こんな場所でライブを観れるなんて経験、そう何度もあるわけじゃない。楽しまなきゃ損である!


『本日は【D'ream】2nd LIVE 《No-blesse》へのご来場、誠にありがとうございます! ご来場の夢人(ドリーマー)の皆様に、お知らせします──』


 あ、ちょっと待って。私のアナウンスが流れてやがる!?


 や、自分で自分の声を聴くと違和感あるし、少しばかり恥ずかしい気持ちにもなる。最近はアーカイブを観て自分の声に慣れてきてはいるけど、それでもまだ羞恥心が燻るのである。



 しかし、私のアナウンスが流れているということは、ライブ開始まで、まだまだ時間はあるということだ。

 チラホラと【D'ream】のリスナーである夢人達、お客様もご入場されている。こうして観客席の人達を見るだけで、ちょっと優越感。ははは、よきにはからえ。妾こそが第一第二第三皇女である!


 この席から見ても広い会場なのに、これが埋まってしまうのだから、凄まじい。

 私も、いつかステージで歌う時が来るんだろうか? いやぁ、それはちょっときついなぁ。


 これだけの人の前で歌うだなんて、もうやばいですね。京ちゃんなら緊張でショートしてしまうレベルである。


 と、考えてはいても、きっと京ちゃんならこんなステージでも歌い切ってくれるんだろう、という謎の信頼感はあって。


 紆余曲折あるだろうし、山あり谷あり、苦労するだろうけど。

 それでも、最後の最後には自分の足でステージに立って、歌ってくれると、そう思い描けるのは、京ちゃんの意志がそうさせているに違いない。


「まあ、私達にはまだまだ先の話なんだろうけども」


 取らぬ狸のぽんぽこである。

 そもそも、私はトーク中心、ベルさんはストーリー中心と、方向性もバラバラなのだ。


 その点【D'ream】は最初から、ダークアイドルとしてユニット活動することを前提に据えていた節があるので、このような定期的なライブもあり得るというもの。


 私達、みっか組にライブなどという機会が訪れるのか、甚だ疑問である。みんなで歌った曲なんて『すりーでいず☆ファンタジア』だけだしな! 1曲じゃライブは出来ねぇな! はい、この妄想はおしまい! べべん!



 今頃、裏側では出演者やスタッフが、バタバタしているのだろうと思う。

 そこに私がいないのは、皆さんの緊張を助長しないようにと配慮をした結果である。あと、そんな場所に部外者がいてもやりづらかろうしな!


 フレイア先輩はガチガチに緊張してないかな? レイン先輩は疲れてないかな? ルナ先輩は……うん、心配する要素がない。あの人は誰よりもアイドル向きだし!


 私ごときが心配する必要もないのである。

 はてさて、どうなることかと楽しみに待つとして。



「フィーナ」


「はい? って、レイン先輩!?」


 声をかけられて振り返ると、そこにはインタビューでお顔を拝見したレイン先輩が、にぱっと笑顔を見せてくれる。想像よりも小さくてかわいい。


 レイン先輩は、本番前だからか非常に動きやすいジャージ姿で、ペールイエローの長髪がゆらゆらと揺れる。ゆらりゆら透明って感じ。


 顔立ちから西洋っぽさがあるので、ハーフか何かですかね? お人形さん+美少女って感じでかわいい。私もなりたい美少女に!


「ん、きたの」


「いいんですか? 本番前なのに」


 本番まであと少しといったところ。それなのに、ここに足を運んできたのは一体……?


 私のそんな疑問について、レイン先輩は答えてくれる。


「まだ時間あるの。それに、ちゃんと本番前に会っておきたかったの」


 ドキッ!


「えと、それはまたどうして?」


 慌てながら問いかけるも、レイン先輩は答えてはくれず、その代わりに。


「……ん、フィーナは不思議なの。懐に入りやすい……美人だからなの?」


「や、やぁ、どうでしょう?」


 ……び、美人て! やだなぁ、そんなわけないじゃないですかぁ! きゅるるーん!


「ん、ちょっと失礼するの」


「え、えー! えっと、あの、え?」


 軽くて柔らかい感触。


 なぜだ、なぜ私は抱きつかれているんだ!? あ、シトラスのいい香りが……じゃなくて!


 すんすんと匂いを嗅ぐんじゃない! 先輩も私と同じ思考してませんこれ!?


「あ、あのー?」


「じっとしてるの。ちょっとだけなの」


 反論する機会をいただけないでしょうか!?


 暖かい……かわいい……くぅ!

 人肌ってやっぱり癒し効果絶大なんよね……!


 そしてなされるがまま味わいながら、じっとしていると、満足したのか離れてくれる。よかった、これ以上は私の精神がもたねぇ!


「ん、元気チャージ完了なの……私の方が歳下だろうし、レインでいいの。敬語もいらないの」


 うぇっ、それはまたなんというか。

 でもリースちゃんの例もあるし、問題ない、のか? いいのか? そんな嬉し恥ずかし楽しいこと許されるのか!?


 でも本人が許してるんだから、セーフだよね!?


「え、えー、それは……じゃあ、レインちゃんで」


「ん、よろしい」


 どやぁって顔をするレインちゃん。

 それデフォルトで搭載してるんだね? かわいいねぇ、飴ちゃんいるかい? レインだけにね! かこん、ハンバァァーグ!!


「じゃ、レイン達のライブをしっかり観ておくの!」


「もちろん!」


 とてててーっと去っていくレインちゃん。先輩なのに驕らないいい子である。すくすく育つんだぞ。


「……これが人気者ってやつですかっ!」


 もうすでにファンである私を籠絡しようとはやりますねぇ! 二つ名『すき』にしちゃうぞ!



 レイン先輩もとい、レインちゃんとのハートフルな交流が終わり、いよいよライブが始まる。


 そうこうして開幕するのは、幻惑とメルヘンに彩られた悪夢のショー。奇妙で感動的な一夜の夢。魅了され、侵され、甘く蕩けるような幸福体験、その幕が上がる。



 振り返って。


 こんな時が永遠に続きますように。

 夢が醒めなければいいのに。


 そう願わずにはいられなかったほどに、彼女達は私達に魅せてくれた。


 間違いなく、最高のライブであった。

次回は、また別の人の視点になるかと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] アキくんすき
[一言] その扱いはもうアキくんなのよ。
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