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第45話 フィーナ、【D'ream】にインタビューするってよ!

今回も前半フィーナ、後半第三者視点です。

「んん……涙抑えるの無理だったわ〜キマシタワー」


 泣いているのか、フィーナぁ!


 やっぱり初期から知ってるライバーさんだからかな、こういうのに弱いのよ……!


 なんて涙を流したリハーサルも終わり、観客席で少しだけ涙を乾かす。このまま行ったら恥ずかしいからね。


 この後は【D'ream(ドリーム)】の方々へのインタビューが待っている。リハーサル後に休憩を挟んだ後に行われるということで、私も休憩する余裕があるんですね! お茶を飲みますっ! どらとも?


「…………あの……」


「ん?」


 声をかけられて、振り返るとそこにはパーカーを被った人影。その子は、おどおどしながら私に話しかけてくる。


「…………これ……どうぞ……」


「あ、ありがとう?」


 見知らぬ子に差し出されたハンカチをありがたく受け取る。


 そのままパタパタと走って行ってしまうその子は、身長も小さかったけど、たぶん男の子だと思われる。


 にしても、私が泣いていたのを見られてたとすると、ちょっと恥ずかしい。お化粧直ししてないのに!


 しかしそれにしても。


「聞き覚えのある声……うーむ?」


 もしかしてという予想が頭をよぎる。

 いやいや、ソンナバカナ。


 頭によぎりかけた妄想を振り払って、私は涙を拭った。ハンカチありがとねー!



 ***



 グッズの紹介を撮り終えて、続いてはインタビューである。これにはさしもの私でも緊張してしまいそうになる。していないけど。なんでや!


 緊張よりも好奇心、興奮が勝っているだけかもしれない、それある!


 ともかく、今回のインタビューの形式だけども、私は2Dのアバターで画面の左端くらいに表示されて、インタビューさせてもらう出演者の方々は3Dモデルでお話をするというものである。ポジションとしては、天の声みたいな感じかな?


 そんなわけで、遂にご対面となるわけだけども。


「では、フィーナさん。後はお願いしますね」


「りょーかいです!」


 私の2Dは動かないので、対面でインタビューを敢行することが可能。つまり、インタビュー対象である【D'ream(ドリーム)】や他のVtuberさんとのご対面を果たすことができるのである。この裏側、我々でしか味わえまい。羨ましかろう!


 オタク代表として、きっちりお話したいと思いますよ!



 * * *



『【D'ream(ドリーム)】2nd LIVE 《No-blesse(ノブレス)》現場リポート! インタビュー編!』



 モニターには、【D'ream(ドリーム)】の3人。ルナ・ブライト、レイン・ドロップ、フレイア・ナイトメアが映し出されていて、左端に小さくワイプでフィーナ・アストライアが映し出されている。


 【D'ream(ドリーム)】の面々は、画面に向かって手を振ったり、サムズアップしたりしている。

 それを横目に見つつ、フィーナは進行していく。



『それではご挨拶からお願いします!』


「はぁい。信徒の皆様、神の御心のままに。しなぷす所属バーチャルライバー、ルナ・ブライトよ」


「……フレイア……ナイトメア…………」


「どうもなの。【D'ream(ドリーム)】のレインなの」


『はい、ありがとうございます! わー本物だ! って……あれ?』


 3Dの身体を持つ【D'ream(ドリーム)】の3人が各々挨拶をすると、感激したように声を上げるフィーナ。……かと思いきや、不思議そうに彼女達を見つめている。


 その様子を訝しげに見るのは、レインだ。


「フィーナ、どうかしたの? オッケーなの?」


『あっ、なんでもないです! なんでもない……』


 慌てて取り繕って、進行を続ける。


『しなぷす所属、4期生のフィーナ・アストライアだよーということで。はい、私がインタビューをしていきたいと思います!』


「フィーナさんとは、はじめましてよね?」


『あっ、そうですね! ルナ先輩とフレイア先輩ははじめまして、レイン先輩は配信でお世話になってますけど、こう対面するのは初めてなので、実質はじめましてになりますね!』


「……たしかに。レインはもう会った気分でいたけど、初対面ではあるの」


「……はじめ…………まして」


 もはや馴染みのレインに続いて、おずおずとフレイアが挨拶をしてくれる。


『あ、はい。よろしくお願いします! では、インタビューをしていこうと思います。まずは、2nd LIVEが実際に行われるとなった際の心境を聞いていこうと思います!』


「そうねぇ、1st LIVEの時も似たような気持ちではあったけど、2回目でも慣れるものではないわね。足がすくむような気持ちもあるけれど、2人がいれば大丈夫、かなと思うのよね」


 ルナの瞳には、2人への信頼が滲んでいる。これも1年と関係を築いた成果なのだろう。


 その信頼の眼差しに対して、自信満々に胸を張るレイン。堂々たるドヤ顔である。レィィィィィンッ!


「それはそうなの。レインにドーンと任せるといいの」


「……うん……レインに頼る……」


「……こういうところは心配なのよねぇ」


 甘えん坊の妹と心配性のお母さんのような構図である。夢家族(ドリーム)てぇてぇである。


 そんな場面にほっこりしつつ、フィーナは質問を投げる。


『レイン先輩は頼り甲斐ありますもんね。では、1st LIVEの時と心境の変化はありました?』


「前の時より緊張するの」


「あら、そうなの?」


「……わかる……前より……応援してもらってるから……プレッシャーも……ある」


『あー、以前と比べると観てくれる人も増えたですもんね……フレイア先輩は特に人前とか苦手な印象がありますし』


 特にプレッシャーを感じていそうなフレイアである。キャラクターというよりは、素でこの喋り方なのを聞いて察していただきたい。


 そう、極度の人見知りなのである。


 これでもだいぶお話ができるようになった状態で、初期を知る人からすれば「成長したね……」と涙を飲むに違いない。


 それこそ初めての人と会話ができるなんて、とてつもない進歩なのだろう。


 そんな人見知りフレイアちゃんは、もじもじしている。


「……知られてる……恥ずかしい」


「あら、私達のことよく知ってるのね?」


 ルナの大人の微笑みに、照れながらもフィーナは答える。


『あ、まー、ファンですからね! 1st LIVEも生で観てましたし! ……その話はまた後で! レイン先輩は、2回目で変わったこととかありますか?』


「フィーナがインタビューに来たの」


『私のこと以外で!』


 すかさずツッコミを入れると、むむむっと眉を下げてしまうレイン。そして少し考えてから口を開いた。


「……曲が増えたから、ダンスが大変。覚えるの難しいの」


『あー、そうですね。セットリストにできる曲数は限られてますけど、新しい曲の振り付けもありますからね。ダンスが激しい曲もあったり?』


「あるわね。『monster festa』って曲なのだけど、これが今までで1番難易度が高かったわね」


「あれ、歌は好きだけど、ダンス苦手なの。だから、あんまり踊りたくないの」


 いやいやと首を振るレイン。

 この3人の中では、ダントツで運動ベタなのはレインだと思われるので、その言も納得である。執行人、それでいいのか!


『アップテンポの曲ですもんね。歌自体は公開されてますけど、だからこそダンスも伴って激しくなる、と』


「……ボク……体力ないから……あれはアンコールされても……難しい」


 次点で、フレイア。運動は下手ではないが、いかんせん体力の無さが目立つ。しかし、ユニットとして活動していく上で、トレーニングもこなしているので、少しずつ改善はみられている。


 そんなフレイアでも難しい曲なのだから、よほど激しいダンスなのだろうと、想像を掻き立てられる。


『そうですねぇ、私もダンスを観させてもらったんですけど、体全体で踊ってたので、ふぇぇ、すごいなぁって感じで』


「すごく曖昧な表現ね?」


 うふふ、と蠱惑的に笑うルナ。


『あ、その、アレです! 自分口下手なもんで! で、では次! ……今回のライブでお気に入りの曲はありますか?』


 フィーナの問いににんまりと笑うのはレインだ。その様子は、さながらクリスマスプレゼントを友達に自慢したがる子供である。かわいい。


「もち。『星降る夜(エトワール)』って曲がお気に入りなの。レインのソロ曲でもあるし、思い入れもあるの」


『いいですね! あの曲は夜の儚さと星の美しさがマッチしててすごくいい曲だと思うんです! しかもレイン先輩の待望のソロ曲ってことですごくファンも注目してましたよね!』


「ありがとうなの。レインとしても作詞は初めてだったし、舞台で披露するのも初めてのことだから、上手く歌えればいいと思うの」


 全肯定の鬼、フィーナである。


『ですね! ソロ曲と言えばルナ先輩も今回のライブ用に、新たに書き起こされた楽曲があるとのことですが……えっと、先行で販売しているシングルCDにはすでに収録されているんですよね?』


 シングルCD──『ユメミゴコチ』は、『しなぷす』ショップや、各CDショップですでに売られている代物で、その中に、ルナのソロ新曲が入っている。

 これはライブ前に販売されていて、意訳すると『予習してきてね?♡』である。するに決まってるよなぁ!


「そうね……今回のライブでも歌う曲が入ってるわね」


『ルナ先輩のソロ曲っていうと……』


「ええ、私の曲『Het E Ro(ヘテロ)d Ox(ドックス)』はかなり攻撃的な曲になってると思うわね。アイドルとしてはどうかなと思うけれど、【D'ream(ドリーム)】としてこの曲を入れるのは"異端"でありながら、個性が出てるから気に入ってるわね」


 タイトルの元の単語である『heterodox(異端)』を掛けた、お洒落なルナである。


『わかります! 歌詞に強めの言葉が多いですからね。でも、それでもルナ先輩の声とマッチしてカッコいい曲になってると思うので、ファンの心は鷲掴みですよ!』


 いちファンの言葉、剣よりも強し。


「あら、ありがとう」


『いえいえ! では次はフレイア先輩に聞いていこうと思うんですが、お気に入りの曲はありますか?』


「……全部……はだめ?」


『できれば、1つに絞っていただけると!』


 懇願するフィーナの声に、悩みながらも答える。


「……それなら……カバー曲だけど『べるべっと☆voice』……アニメの曲だけど……いい意味でボク達らしくなくて……好き」


 フレイアが出した曲は、シングルなどには収録されておらず、歌ってみた動画として投稿されている曲だ。これを、今回のライブで披露することとなる。


 合いの手もあるので、観客との一体感もバッチリで、盛り上がる曲である。


「あの曲ね。確かに私達のキャラクターからは出てこないフレーズばかりだものね」


『うんうん、でも不思議な化学反応でマッチしてるんですよね。暖かい春のような明るい曲なんですけど、意外にもというか、先輩方の声にすごくぴったりで』


 不思議な、と形容するのがぴったりな感じで、【D'ream(ドリーム)】の特徴として、『落ち着いた』『静かな』『独特な雰囲気の』曲が多いのだが、そのどれにも当てはまらない曲である。


 それでもマッチするのは、彼女達の技術や空気感、真摯な気持ちが観客に伝わるからなのかもしれない。


 ちなみに、ルナも不思議そうにしている。なんでや!


「そうなのよね、どうしてかしら……それにしてもフィーナさん、しっかり私達の曲聴いてくれてるのね」


『もちろんですよ! 初回特典付きCDも買いましたし! 特典についてた曲もすごく良かったですし! あれはライブで歌わないんですか!?』


 少し興奮した様子のフィーナに、魅惑の笑みを浮かべ、ルナは人差し指を立てながら。


「それは……ひ・み・つ♡」


 笑顔で言ってのける。


『えぇー、そんなぁ!』


「うふふ、でも期待してもいいかもね?」


「楽しみにしてるといいの」


『え、え、それはどういうことなんです? 教えてくださいーぃーぃーぃー!』


 フィーナの声にエコーがかけられて、ちょっと虚しい。



『気になる方は、ぜひライブまでお待ちください。いやぁ、ワクワクしてきますね!』


 結局、フィーナが教えてもらえることはなかったが、このナレーションが挟まることで期待は高まったのであった。

次回、フレイアの視点です。

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