第42話 【巡礼】フィーナ、怪しげな廃教会を訪れる!【しなぷす】
フィーナの配信回です。
ふわっと脳内にあったゲームなので、特に深く考えず読んでいただけると幸いです。
「こんふぃな! しなぷす4期生のフィーナでーす! 今日はホラーゲームやっていくよ!」
『出たわね』
『はじまりわっしょーい』
『こんふぃな!』
リスナーのテンションも中々高いようで、ありがたい限りである。
「はいはい、どーもどーも! というわけでね、SNSでも告知した通り『巡礼』というゲームをやっていくわけなんだけど、このゲーム知ってる人はいる?」
『知らんなぁ』
『知らない人だ』
『他のライバーがやってたから、流石に知ってるんだよなぁ』
そう、空前絶後のホラゲーブーム……というよりは密かに『しなぷす』のライバーの中で流行っているもの、それが『巡礼』というゲームである。
「そ、確か尾卓先輩とかルナ先輩とか、色んな先輩がやっていたと思うけど、私も流行りに乗っていこうかと、思っております!」
流行り物には乗っかりたいからね! やっぱり、こういうのをやることで新規さんが来やすいからね……! 私も色々考えておるのですよ。
「では、早速スタート! ぽちっとな」
『きちゃー』
『始まったわね』
『巡礼していかなきゃ』
『驚くと思うから、こちらとしては助かる!』
「お、そうなの? 私、このゲームの事前情報、ほとんど仕入れてないから、全くわかんなくて。気を引き締めないといけないね!」
『気を引き締めると逆にびっくりする説はある』
『どんな悲鳴が出るか楽しみ……デュフ』
「ふむ? ……とりあえずどんなものかっていうと、タイトルの通り『巡礼』をするのが、このゲームの目的みたい。私が操作するキャラは聖職者で、今回は廃れた教会を訪れた……というのが大まかなストーリーなのかな?」
『その通りやな』
『ジャパニーズホラーとはまた雰囲気が違うのに、最初じわじわと怖いの、いやらしいよなぁ』
主人公が、廃れた教会を訪れた理由はよくわからないが、この教会で何かを成すことが目的のようだ。そこら辺も想像を掻き立ててきて良いですね! 無限のイデアを想像させてくる!
話しながらも、操作をしてずんずんと教会の中に入っていくこととする。
「教会ってことは、宗教ちっくなホラーなのかな? 早速入ってみるけど……わ、なんかすごくジメジメしてるね。扉もきいきい音鳴るし、雰囲気あるわぁ!」
扉を押し開けると、老朽化を感じる音がする。諸行無常の響きがある。こういう音は馴染みがあるので、懐かしい気持ちにもなるけども。
『あれ、喜んでない?』
『ちょっとは怖がるところでは?』
「えー、まだここは怖くないでしょ? 薄暗いとはいえ、ランタンと月光でそれなりに中がわかるわけだし。あ、誰かおる! こんばんはー、立ち退きをお願いしてたはずなんですけど〜!」
『悪徳業者やないかい!』
『人影、そんなすぐに近寄って大丈夫か……?』
人影を確認すると、小柄であることが窺えるが、黒のフードを被っており、闇夜で紛れているためか、後ろ姿からではその全容を把握するのは難しい。
「うーん? お爺さん、かな? もしもーし、聞こえますかー? 私の声が聞こえるように、調整お願いしまーす!」
メンテナンスチェックのように戯けて声をかけてみるも、反応は無し。
その人物に近づいてみても、無反応。
「回り込んでみるか……あ、ムービーになった。え、あ、うわっ!」
私はそのフードの人を見て驚きの声をあげる。
『うわって』
『まだレベル1だね』
『僕は上に行くよ』
回り込んで、顔でも拝んでやろうと思っていたのだけど、そこにいたのは──
「──骸骨、スケルトン先輩じゃないですか……なにこれ、模型?」
『理科室じゃないんだからさぁ』
模型くらいでしかみたことないし! オセアニアじゃ有名よ?
ともかくスケルトンをよくよく観察してみることにする。
「んー、何か抱えてるね。これは、本? ……あー、なるほど、これ聖書だ! あれ、なにか書いてある……?」
流石宗教っぽい! と感嘆の声をあげるも、さらに調べてみるとメモ書きを発見する。では、読んでみよう。
[女神像から深淵へと続く]
「……深淵、覗かれちゃったかぁ」
『覗くとき、我々もまた覗かれているのだ。つまり、女子更衣室は至高』
◇レイン・ドロップ:『◯ね!』
『あァァァァァァァァ!!!!』
『馬鹿な奴だったよ……』
またレイン劇場始まってるよ……!
「あ、レイン先輩! どうです、私と一緒にこれやりません? キュートでパワフルな、みんなのアイドルが出てくるゲームなんですけど」
私たちが、パワパ◯ガールズになるんだよ! 私バブ◯スがいいなぁ! キュートだし!
『堂々と嘘つくじゃんw』
『フィーナおまえwwwww』
『ケミカルエックス混入すなww』
◇レイン・ドロップ:『ごめん、むり、またねなの』
ささっと、レイン先輩はコメントを残す。
「あら、逃げられちゃった……むむむ、残念」
『レインちゃんはほら、耐性ないからさ……』
『気絶しちゃうからダメよ……』
「耐性ないのも考えものだね……あ、女神像あった。これを……、うむ? ここからどうすればいいんだ? 深淵ってなんだ……?」
こんれーなってなんだ……?
『深く考えたら負けよ』
【¥500 女神像に祈りを捧げなきゃ】
『人間性を捧げないと、立派な不死者にはなれんぞ!』
ゲームが違うんだよな!? ダークなソウルの話はしてないんじゃ! 火継ぎなんて私はしないぞ!
ふむ、リスナーのコメントを参照するには祈る必要があるみたいだけど……? 女神像に近づけばいいのかな?
「なら女神像の近くに……っきゃぁっ!?」
女神像を観察してたら、目が動いたんですけど!? ズームにしてたから破壊力も2倍だよ!
【¥1,000 悲鳴助かる】
【¥500 悲鳴代】
『びっくりしたw』
『むしろフィーナの悲鳴でびっくりした』
【¥5,000 うむ、綺麗な悲鳴だ】
『悲鳴ソムリエ現れたんだがw』
「なんでなんで!? ええ?? 音とかじゃなくて、背筋ゾッとしたんだけど!?」
ドンっ! とか、そういう音で驚くなら心臓が口から飛び出るくらいで済むんだけど。気づいちゃった気づいちゃったわーいわいだと、ゾクゾクが持続するんですけど!?
『ここ、驚かない先輩も多いんだぞ?』
「まじで? 強靭な精神しすぎでは……? えと、とりあえず祈ればいいんだよね? この女神様に祈るのすごくやなんだけど……ギョロ目の女神様……」
祈るために、目を瞑っている。
自然と視界が遮られ、何も見えなくなる。……え?
「え、ちょっと待ってよ。目瞑るのやばくない? なぜお前は目を閉じることができたんだよ!? 早くあけてあけて! ……待ってなんか音するんだけど、なにこれ!?」
『雨音に何かが這う音、カラカラと軽いものが落ちる音、風の音、色々あるのにほんと、なんでここで祈れるんだよ』
【¥3,000】
「視界がないから、音に集中できるね……じゃないんだよ! だまらっしゃい! あ、ようやく目を開けてくれ……ッッッ!?」
声にならない悲鳴をあげる。
隣にいらっしゃるのは、聖書を抱えていたフードの骸骨。ホラ◯マンさんである。
なんでこんなところにいるんだ骨!? 蝋人形にしてやろうか!?
『骨くん大活躍』
『スケルトン先輩、ちーっす!』
「え、なんで!? さっきまであっちにいたじゃん? は?」
ばかな、残像だったのか……?
『怒るな怒るな』
『もちつけもちつけ』
『骨くん瞬歩できるからさ』
キレてないですけどね!?
餅つくかー、たんたんピタった、もちぺったん!
と台パンも辞さない覚悟でいると、祈りを捧げたことがトリガーとなったのか、ゴゴゴと動きます女神様。あれ、私がやってるのホラーゲームじゃなくてRPGの類いだった?
「え、待って導入だけでこんなに不安なんですけど……? あ、女神像動くんだ? 階段だぁ!」
むしろこれでまだ本編始まってないってマジぃ?
そして発見したのは、地下へと続く階段。なんだこの階段はっ!? この先に、一体何が待っているというんだ……ごくり。
「え、これ降りればいいのかな? じゃあ、レッツゴー……雰囲気あって怖くなってくる……」
流石の私も怖いわ……! にいに、ねぇね助けて!
『むしろここからが本番だからね』
『頑張るんやで』
【¥1,000 鬼ごっこがんばってね】
「……鬼ごっこ? 青い鬼出てくる?」
『それではないww』
『ゲームシステム的には似たようなものだけどww』
ともかく覚悟を決めよう。青◯RTA実況くらい、それくらいのテンションで行こう! 心の中では!
「じ、じゃあ、いきます……」
『逝ってらっしゃい』
『デッドチェイスが始まってしまう……』
『巡礼って逃げながらやるものだったんだよ』
怪物に見つからないように、地下を探索するということのようだ。
捕まったら即ゲームオーバー。
……なんか死に覚えゲーの様相を呈してきたんだけど!?
恐る恐る先に進んでいく。命がかかっているからね、慎重に行こう!
レンガ造りの中世らしい構造をした地下となっている。
「……うわぁ、血文字がある。血を塗料にするなんてよくないんだよなぁ。絵画世界を生もうとしてない?」
壁にはびっしりと、ダイイングメッセージのように血で文字がしたためられている。はい、SAN値チェックです。
「なんて書いてあるんだろ……うーん、ごちゃごちゃで全然わからないけど、書き手の必死さが伝わってくるんよねぇ」
書き手の拘り、熱い情熱、ビシバシ伝わってくるよ。恐らく海外の言葉ではあろうと思うが、英語ではないし、フランス語などの有名どころの字ではない気がする。これ翻訳できるニキとかいるんだろうか、いるんだろうなぁ、世界は広いから。
[『真実への手がかり1』を手に入れた]
なんて考えてると、ピロンと音がなる。
あ、なんか手に入れた? なにこれ?
この真実ってやつを明かせばいいのかな?
よーし、光明が見えてきた!
そう思ったのも束の間、なにやら恐ろしい音楽が流れ始める。フェードインしろ!
「っ!? なに!? 音楽変わった。……きゃぁっ! なにあれ!?」
目の前に現れたのは、シュルシュルと身を這う大蛇のごとき化け物である。え、逃げなきゃ、私で隠さなきゃ!
【¥5,000 ないす悲鳴】
『さあさあ、逃げるんだよ!』
「いや、いやだ! あんなのに殺されるくらいなら、私は生きる! なんで蛇なの!? 嫌いなんだけど!? やめてもらっていいですか!?」
『音楽おどろおどろしくて怖い』
【¥1,000 フィーナの怖がってるの、なかなかレアで良い】
『あわてておるw』
『蛇嫌いなんか』
「昔、蛇に噛まれたことがあってね! その時からこういう輩は嫌いです! 悪霊退散!! どこにいけばいいの、いつまでついてくるのこのストーカー!? いい加減にしてよ、私は幸せになるんだからね!?」
『蛇に村を焼かれたんかww』
『ストーカーてw』
『この蛇なかなかしつこいからなぁ……』
ほんとしつこいよ! そんなんじゃ女の子にモテないんだからね!?
「……はぁ、はぁ、なんとか逃げ切れた、かな?」
ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせたことで、臆したのか、撒くことができたようだ。いやぁ、気持ち悪かった!
息も絶え絶え、ぎりぎり逃げ切れたというところ。私が長女でなかったら耐えられなかった!
「武器とかないのこれ……あんなん命がいくつあっても足りないんだけど」
『ないね』
『我々にできるのは逃げることだけだよ』
逃げるしかないのは、神経すり減らしてしまうので、嫌ですね。それでいいのならご自由にどうぞ、とは言えない!
「くっそー、もう2度と会いたくない……って、またいるぅ!? っっほんと嫌い!!」
『フラグすぐに回収するやんw』
『粘着質だなこいつ……』
なんで私の背後取るの!?
やめてよね、背中を狙うなんて、私でなきゃ見逃しちゃうね……!
その後の私のデッドヒートは色々あった。
「ちょっと、道続いてないんだけど!?」
「ねぇ、なんでそっちからくるの!? ずるっこしてない!?」
「いやだぁぁぁぁぁぁ!!」
「嫌い嫌い嫌い!! 大嫌いだから、どっか行ってよ!?」
なんて大騒ぎもして。途中、あまりの騒音に、しずくちゃんも怒りにきたりして。
ちなみにゲームクリアまではなんとか、いけましたとさ。
喉からからだよ。しずくちゃーん、お水〜!
あーん、まだ怒ってるのー! マジの空気を醸し出すのがうまい……悪魔のすごろく恐ろしいよ……!
その後、なんやかんやしずくちゃんが最後には用意してくれました! ツンデレだな〜! そんなところもかわいいんだけど!
そして、ホラーゲームはもうちょいグレード落としたやつからやろう! そう心に誓っておきました!
* * *
フィーナ・アストライア
@Fina_astlaia_
おつふぃなでした……
あの蛇とは2度と会いたくない……!
#巡礼 #蛇は許さん、慈悲はない
次回は【D'ream】の3人の記念配信にフィーナがお邪魔します。




