第0話 【美少女】フィーナと雑談しましょ【精霊交信局】
──私は今、Vtuber配信の真っ最中だ。
そして終盤に差し掛かっていた。
「そろそろ終わりたいと思います。また明日16時から配信するのでよろしく!」
『もう終わりかぁ。時間経つの早いなぁ』
『耐久配信しないの?』
『お』
『コラボまだ?』
『アスかれー』
『あすかれさま』
『アスかれ』
『また来るね』
たくさんのコメントが流れている。
流れていくコメントの中から、私が話題に出そうと思ったのは、やはりコラボのことかな。
「コラボはまだ許可出てないからなぁ。同期とは……どうかな、できそうな気はする」
『お、みっか組勢揃いか』
『ベル×京×フィーナですか』
『先輩とはまだダメか…』
『耐久配信はかわいそうだねw』
京ちゃんがオッケーしてくれれば、割とできそうな気はするけど、どうだろ?
ベルさんもこういうのゴーサイン出しそうだし。
まあ、そこらへんはマネージャーさんとかと相談しないとね!
「明日はゲーム配信なので、『D-six』やってくよ! たぶん私は死ぬ!」
『流行ってるよねFPS』
『ゲーム弱弱なのに大丈夫か?』
『お前、死ぬのか……?』
「死なないように頑張るから! ……そもそも世界観違いすぎて操作に慣れないんだよねぇ」
小声でボソッと呟いた言葉も、意外と拾われたりする。
『小声ww』
『まあ、サイバーパンクの世界とは相性悪いわなぁww』
『美少女(笑)精霊師だもんね』
「(笑)ってなんだ、美少女だし!」
見た目完全に美少女やろがい!
ママ──この身体を描いてくれた絵師さんは、私を最高の美少女にしてくれた。
透き通るような水色の髪、キラキラ光るグリーンの瞳、プルプルと瑞々しい唇に、整った鼻筋、さらに精霊の巫女を思わせる服飾にと、数え出せばキリがないほどの拘りを持って作ってもらったこの美少女の身体。
名前を──フィーナ・アストライア。
名前も可愛らしいのになぜ、美少女(笑)と言われるのか!
『美少女押しがキツい……』
『見た目は可愛いんだけどなぁ……』
『なんでだろうなぁ(笑)』
「美少女でしょ!? ねぇ!?」
いじられてしまったせいで、さらに配信は長引いてしまう。
どうしてこんなことになったのか。
あの始まりの日に思いを馳せる。
私──望月かなたが、Vtuber──フィーナ・アストライアとなったあの日のことを。