第12話 みっか組、はじめてのリア凸
総合評価400pt超えてました。
ありがとうございます。
みっか組、3人が集合します。
ようやく会えたね。
レコーディング当日を迎えた。
……迎えてしまった。
「ぐぬぬぬ」
あれよあれよという間に、レコーディングまで来てしまった。どうして、なぜこうなった!
わかんねぇ!
このオリジナルソングの企画自体、いつから始まったものなのか……!
気になってマネージャーさんに聞いたところ、前々から構想自体はあったようで、みっか組にお鉢が回ってきたということのようだ。
暖められていた企画というだけあって、スタッフさんの気合いの入りようはすごかった。
ボイストレーナーの人も、熱心に根気強く私に教えてくれたので、お家で練習することもできたわけだし。
そして、曲自体は既に完成している。
デモテープも聞いた。
そも、曲を作るにも、作曲、作詞、編曲などなど多岐にわたるようだ。詳しいことは私にもわからないけど、それだけ時間と手間がかかるということはわかる。
だから、逃げるわけにはいかなかった……!
それに、曲自体はすごく良かった。
デモ音源を聴いた時には震えたし、私達らしい明るく楽しそうな雰囲気に溢れていた。
これを作った人は、私達の配信をよく見ているとしか思えない。リサーチしっかりしてるのプロの鑑かよって感じです!
だからこそ、私でいいのかなぁなんて日和もするわけで。
でも歌っていいと、ボイストレーナーの先生からもマネージャーさんからもお墨付きをもらっているので、そりゃ全力で行きますとも!
しかも今日は『みっか組』でのレコーディングとのことで。
「2人に会えるということですよね……ごくり」
そんなわけで、スタジオ近くの駅にて待ち合わせをしているというわけだった。
目立つ時計の下にて、2人が来るのを待ちつつ、デモ音源を聴いて復習しておく。
途中で、なんかキャッチーの人っぽいチャラついた人が声かけてきたけど、音楽を聴いていてなんて言ってるかよくわからなかったので、スルーしておいた。
デモテープ聴くのに集中してるんだから、話しかけないでほしいよね! 全集中、デモテープの呼吸だ! ……なんじゃそれ。
にしても10分くらい話しかけてきたけど、なんだったんだろ?
暇な人もいたもんだなぁと、デモ音源を聴いていると、ちょこんと肩を叩かれる。
ん?
振り返ってみると。
「あ、ベルさん! どーもどーも」
一度会ってるので、その顔を見間違えることもない、正真正銘ベルさんのリアルの装いだ。
貴族然としてるバーチャルの装いとは異なり、シンプルなワンピーススタイルで登場したベルさん。黒髪の長髪を後ろで括り、とても可愛らしい。
でもやや顔がこわばってるように見えた。かわいい顔が台無しやで!
おずおずとベルさんは尋ねてくる。
「すみません、遅れてしまいましたか?」
「うーん、そんなことないと思うよ? 私もちょっと前に来たところだし、まだ時間までは余裕あるから」
楽しみすぎて30分前くらいからいたけどね! 遠足前の子供の気分である!
「そうですか、よかったです」
ほっとした様子のベルさんだけど、まだ顔は固まっている。ふむ?
にぎにぎしてみるか!
「ふぁの、ふぃーぁ?」
ほっぺたをぷにゅっとしたので、なんて喋ってるかは定かじゃないけど、「あの、フィーナ?」って言ってる気がする!
ベルさんが喋っているので、そっと手を離す。
「うん、ちょっとね。良くなったので安心安心」
強張りも取れたみたいだった。
顔面マッサージにはリラックス効果があると言いますからな! しずくからの受け売りだけど。
「あ……もしかして、緊張してるのバレてました?」
「わかるよ流石に。ガッチガチだったもん」
ベルさんといえど緊張するんだなぁと、私などはより親近感を覚える所存です。
お姉ちゃんは意外とそういうところも見ているものなのです。えへん!
ベルさんはほっぺたを自分でむにむに触る。
あ、痛かった? ごめんよぅ……ごめんねソーリー!
「そう、ですよね。ありがとうございます……」
「いいってことよ! さて、京ちゃんがもうすぐくると思うけど……」
「いや、入れへんて。そんなイチャイチャされたら、困るって」
「ゔぉっ!! 京ちゃん!?」
いつのまに背後に!?
ぴょんと文字通り飛び跳ねて、距離を取り相手を認識すると、やはり京ちゃんだった。人違いじゃなくてよかった。
そして私の背後を取るとは、中々やるね?
京ちゃんは、つり目でカッコ良い。ショートの金髪は目立つが、それよりもボーイッシュな服装での健康的な身体が目を引く。
この時期にショートパンツ、上はワンポイントのニット素材のセーター、黒の帽子が良く似合ってらっしゃる。
けどそんな装備で大丈夫か? 寒くない?
下から上に舐めるように見てごめんなさい、反省してる。だが後悔はしていない!
健康的な御御足が最高です! がはは!
私の内心はよそに、京ちゃんは私が悲鳴を上げたことに驚いているようだった。
「そんな声初めて聞いたんやけど……」
「私もこんな声初めて出したよ!? いるならいるって言ってよ!」
「声かけれへんやん。2人で仲良うしてたし」
それは確かに。
ちょっと、いや、少しイチャイチャパラダイスしていたのは否定できない。
リアルで会うのが2回目ともなると、多少は親しくなれるよね! しょーがない、しょーがない!
ん? なんか京ちゃんがじっとこちらを見ているような。
なに、今日の格好変だった?
しずくのコーディネートで、上にハイネックニット、下にはジーパンというシンプルなものに仕上がっているんだけども。あと、サングラスも渡されたので、一応つけてるけど、似合ってないのかしら?
などと、ファッションチェック失敗を不安に思っていると、京ちゃんが口を開いた。
「にしても……写真で見た時から半信半疑やったけど、ほんまにフィーナなんやなぁ」
「え、半信半疑? なんで?」
「京ちゃん……わかります、その気持ち。でも安心してください、正真正銘のフィーナですよ」
「よな、この感じは完全にフィーナやってわかる。ウチでもわかるよ」
「え、なに、私の存在そんな疑われてるの?」
私の存在バーチャルじゃないよ? 実在するよ? 存在証明要ります?
「いやだって……なぁ」
「ですよねぇ」
「そこ2人で分かりあわないで!? 私にも教えてよ!!」
教えてよ! その仕組みを〜!
2人が仲良くしてくれて嬉しいけど、寂しいのよ。私も入れてよ!!
結局、なんで疑われてたのか教えてくれず。ぐすん。
なんて話して、合流して。
はじめましてが終わる。
どうぞよろしく、そんな気持ちでいっぱいではあった。
「じゃあ、行きましょうか?」
「おけー!」
「りょーかい」
そうして、一行は目的地であるスタジオへと向かうのであった。
フィーナ:緊張しないタイプ
京:本番で緊張するタイプ
ベル:本番直前に緊張するタイプ
次回、レコーディングです。




