第11話 意外とお茶目なマネージャーさん
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「はいぃぃぃぃ!?」
回想から戻ってきた私は叫んだ。
おりじなる、そんぐってなんだ?
……はっ! 意識が無限のかなたに行くところだった、かなただけに。
ナイスシャレ。いいぞ私、慣れないことはするものじゃないな!
痛みを伴って正気に戻ると、石宮さんが焦った様子で口元に人差し指を持ってきていた。
「静かにしてください、ここ遮音性があるので向こう側まで音が響いたりしないですけど、それでも事務所内なので……」
「あ、ごめんなさい」
ほんとに申し訳ねぇ!
でも、驚いてしまう理由が理由なのだ。
「でも、オリジナルソングってどーいうことなんですか!? そこんとこ、説明プリーズ!」
「……ほんとにフィーナさんなんですね、安心しました」
どーいう意味ですかそれは!?
今はリアルの身体とはいえ、魂はフィーナそのものですが何か!?
私の憤慨ぷんすかぷんを華麗にスルーして、石宮さんは話を続ける。
「はい、オリジナルソングというのはその名の通りです。『みっか組』という名前をより知ってもらえるためのデビューソング、あるいはイメージソングのようなもの、といえばなんとなく分かりますでしょうか?」
みっか組という名前を広めるための爆薬、そのような役割だろうか?
「え、えーっと、それはわかります。わかりますけど、その、イメージソング? を作ってどうするんですか?」
「どうするもなにも、『しなぷす』の公式チャンネルの方で載せます。みっか組の簡単な紹介も含めて、ね」
話を聞く限り、主の目的はみっか組のことを知ってもらうことのようだった。
『しなぷす』の公式チャンネルには、ライバーの面白いシーンを抽出した“切り取り漫画”であったり、記念配信前の広告、新しいライバーの紹介など、その用途は多岐にわたっている。
だからこそ、このタイミングでのオリジナルソングなのだということで、納得はできる。
いやー、でもなぁ……
「安心してください。公式チャンネルの方に載せるのはフルバージョンではなく、ショートバージョンになる予定です。フルバージョンは、みっか組の皆さんと私とで話し合って決めていいそうなので」
「そこを不安に思ってるわけじゃないですよ!? 私のチャンネルで載せたかったなーとか思ってないですからね!?」
「そうですか」
そうなんです!
そもそも私が歌うなんて、全然考えたこともなかったよ。雑談とか、ゲームとか、そういう方面でしかビジョンがありませんでしたが!
歌なんて、カラオケでちょこーっと歌ったくらいで、そんな行く余裕もなかったですし! 付き合いで少し行ったくらいですし!
「フィーナさんは声質も綺麗ですし、歌を出したら視聴数稼げると思いますが?」
「視聴数とか生々しいよ! 企業としては大事やけども!」
大事やけども!! 見られること、新しい顧客を手に入れることは必要なことやけども!! リアルだなぁ……!
「いや、ですか?」
「全然これっぽっちも嫌じゃないです!」
その上目遣いはずるくないですか!?
瞳をうるうるさせるのはやめるんだ!
思わず即答してしまうほどに、何というか、石宮さんのクールな面からのこのあざとい面のギャップがなんとも……たまらないですね、はい!
返事をしてしまってから、石宮さんはニヤリと口角を上げる。騙したなぁぁぁッ!? ひどい! 精霊使いの純情返して!
「はい、では決定ということで」
「えー、でも私、ご存知の通りど素人ですけど……」
「そうですね。なので、ボイストレーニングは受けていただきます」
「うぇぇ、ボイトレって本当にあるんだ……」
しなぷすのみんなが歌上手いのはそういう理由だったのか。だよね、世に出すものだもんね。
ストーリー勢の一部を除いて、しなぷすのライバーは歌ってみた動画に1つは参加している。ライバーみんなで歌う曲もあるし。
私の推しは歌ってくれないけどね! どうしてだお! ぷんぷん!
ともかく、ライバーになった私もそれを受ける必要がある、ということはなんとなく分かった、分かったけれど。
「えーっと、それっていつから?」
心構えくらいはさせてもらえるかなーと思って尋ねると、石宮さんがにっこりと微笑んで。
「今からです」
「え、今から?」
にっこり。
無言でこちらをじっと見てくる石宮さんは、微笑んでいるのに。
「圧が、圧が強い! だから、アポイント取った時に時間かかりますよって言ったんだ!?」
「正解です♡」
「可愛く言うなんてずるいぞ!!」
かわいいは正義だけども!!
わ、私は、そんなエサには……釣られ……クマー!
屈しました。ぐすん。
「はい、それでは近くのスタジオでレッスンしましょうね」
「……あい」
かわいいには……勝てないんだよ……ずるいぞ……!
それから、私はボイトレでこってり絞られました……とほほ。
そのおかげか、歌唱力はぐんぐん伸び、レッスンを重ねていくうちに上達を感じてきて、だんだん楽しくなってきたのはここだけの話。
その間もオリジナルソングの企画は進んでいて、いよいよレコーディングを残すのみとなったのだった。
次回から、レコーディング始まっていきます。
まずは、3人で集合から。




