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第8話 初配信を終えてwith妹

妹ちゃんとの語らいです。

 私、望月かなたは配信がちゃんと終えたのを確認してから、ふぅと息を吐いた。


 配信の際に座っていた椅子の背もたれに、ぐぐーっと伸びながらもたれかかる。


 長時間座りっぱなしだというのに疲れが全くないのは、Vtuberとして本格的にスタートしたことで発生した気合いによるものなのか。


 ……うん、多分それなりに良い椅子を使ってるからだね。座り心地最高! ふっかふかやで!



「いやぁ、大成功だったなぁ」


 私としても、多少の失敗はするかなーと思っていたのだが、Vtuberというものはそれすらもプラスに転じてしまうのだから恐ろしい。


 ゴミカスと叫んでも、切り抜き動画が作られて爆笑されるように、エンターテインメントの1つとして失敗も笑いの種になる。


 凸配信に誰も凸しにこない事態でも、偉業としてクスリと微笑を誘うこともある。


 京ちゃんが緊張で言葉を発せなくなってしまったことも、その後の歌とのギャップにより良いフリとして消化されたように思う。


 ベルさんは……あまり失敗してなかったけど。これからしたとしても持ち前のアドリブ力でなんとかしてしまいそうな気がする。


 私はちょっと想定とは違う反応も多くあったけど、概ね盛況だったと思われる。うん、たぶん。あんまり客観視できないからあれだけど!


 自分のことって自分じゃわからないもんだと思うんだよね。


 後でアーカイブを見て、自分の配信どうだったか確認したいお年頃である。


「お姉ちゃん、お疲れ様!」


 どたどたと扉を開け放ち、部屋に入ってきたのは愛しき妹であるしずく。

 しずくはそのまま、私にてとてと寄ってくる。


「どうだった? 初めてのフィーナちゃんは」


「うーん、緊張しなかったのはよかったんだけどねぇ。あんなに人が来るなんて思ってなかったし……途中から何喋ってるか定かじゃなかったよ……」


「あー、無我夢中だったんだねアレ」


 呆れたようなそんな声音。

 アレってなんじゃい!


「アレはアレだよ、美少女〜とかそこら辺の」


「だって美少女だったでしょ! フィーナちゃんは!」


「そうだけど、でもアレはないよお姉ちゃん。自画自賛すごかったもん。リスナーさんも置いてきぼりだったよ」


 えーそうかなぁ。置いていってたかなぁ?

 めっちゃ爆走で並走してなかった? ウチの精霊さん達。


「納得いってないって顔だ……」


 そりゃ納得もしないよ!

 4期生として恥ずかしくないビジュアルだと自負してますよ私は!


「それはそれとして、手応えはどうだった? ……ってその顔を見れば一目瞭然だね」


「え、私どんな顔してる?」


「ニヤニヤが抑えきれないって顔してるよ」


 口角上がっちゃってるぅ?

 いや、もう満足って顔に書いてあるよね!! 知ってる!!


 それほどまでに、初配信は手応えバッチリだった。


「いやー私って天才だからさーたはは!」


「それ自分で言うのはちょっと……ないわー引くわー」


 うわぁと体と声で、引いてますしずくちゃん。ぷるるん、しずくちゃん。

 SNSで呟いたら、似たような反応されたけどね、京ちゃんに。え、もしかして私が変?


「……で、次の配信はどうするかとか決まってるの?」


「うーん、そうさなぁ。ゲーム配信は、3,4回目の配信からしようかなぁと思ってるから、次は雑談配信かな」


 ベルさんのリサーチによると、最初に雑談配信を2回ほど挟むのが主流のようだ。


 最初は(フィーナ)を知ってもらわなきゃいけないから、リスナーとの会話からどんなキャラなのかを理解してもらう必要がある。そこから、ゲーム配信や企画を通して、新たな魅力を伝えていく、というのが配信者としては大切らしい。


 ちなみに、これは全てベルさんの受け売りなので悪しからず。

 ベルさんはこの定石を知った上で、新たな試みをしようとしてるっぽいので、わくわくが止まりませんねぇ!


「お姉ちゃん、雑談力あるもんね」


「えー、そうかなぁ! えへへ」


「社会人経験が生きてるよね、まあ、今のお姉ちゃんはかなり素がでてると思うけど」


「あの頃は、外面作りまくってたからね……社会で私の素を出したら死ねるよ」


 学生を終えて、すぐさま就職しなければならなかった私にとって、社会は気を遣わなければ生きていけない場所だった。


 先輩、同僚、後輩に至るまで、取り繕って弱みを見せないようにしていた。学生上がりで舐められてしまわないように、そして喰い物にされるのがわかっていたからだ。


 そんな環境でも頑張ったのは、給料が良かったからなんだけどね。おかげで、妹も無事学生を卒業し、手に職をつけた。



 そして、私が頑張る理由もなくなったというわけなのさ! そしてニートに至る……!



 その時のスキルが生かされているのなら、無理をした甲斐もあったのだと、そう思える。


 はい、回想終了!


「だからこそ、私は家でのんびりと過ごすのだよ、しずくちゃん」


「……まあ、今はのんびりしててもいいけど、こんなお姉ちゃんを他の人が見たら幻滅するよ?」


「そんなことないでしょ! いや、そんなことあるかな? あるかも」


 実際、ベルさんには驚かれたからね。


 謎のキャラXちゃんのアフレコをした際には、アフレコスタジオにて収録をしていたので、ベルさんと初のリア凸となった。


 実際のベルさんは大和撫子のような、和製美人さんだったことをここに付け加えておきたい。めっちゃ可愛かった!


 あれで演技もできるんだから、ほんとやってらんねぇよなぁ!?


 こほん。

 ともかく、そうして初めてベルさんにお会いしたのだが、すごく驚かれたというのが冒頭の話。


 私の喋りと見た目のギャップに驚いたんだとか。

 そんなギャップとかないですよ!? 女の子の嗜みです!


 ……あれほんとなんで驚かれたんだぁ?

 理由がわかってるのに、ビタイチ納得できない。むむむ。


「私は妹だし、家族だから、長いことお姉ちゃんを見てきたし知ってるけど、他の人はそうじゃないからね? そりゃびっくりもするし戸惑いもするよ」


「えー」


 しずくが力説するくらいだ。

 そうなのかもしれない。納得はできるものではないけど。


「そりゃそうだよ。お姉ちゃん、自覚持たないとだめだよ? 誰彼構わずだらけきった姿を見せちゃだめだからね」


「しずくちゃんがお母さんみたいなこと言ってる……やだ、成長してる」


「アホなこと言わないで、誰が保護者なの」


 これからしずくちゃんに養ってもらうことを考えれば、あながち間違いではないよね!


 それにしてもあれほど小さかった、と言っても歳はそれほど離れてなかったんだけど。

 それでも可愛い妹がたくましく育っちゃって……お姉ちゃん感激!!


「はぁ……これは先が思いやられるよ……」


 これから私どうなっちゃうの〜〜!?


 なんて、ね。


 しずくは私のことを心配してくれているのはわかってる。でもね、私もお姉ちゃんなの。


 少しはいいところを見せちゃうよ!


 というわけで、次の配信に向けて頑張るぞー! えいえいおー!



 * * *



 フィーナ・アストライア

 @Fina_astlaia_


 今日は17時から配信してくよ〜!

 みんなからもらったましゅまろ食べまくってやるんだからな!!


 #精霊交信局

次回、間話です。

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