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拝啓 大人になりたかった私へ  作者: ミテラ
拝啓 子供のままだった君へ
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2

短めです。

 彼女の唇が、言葉を紡ぐ。


「ねえエド、私ね。来月から、王都の学校行きが、決まったの。だから、たぶんもう…」

ーーたぶんもう、会えない。



 言葉が、出なかった。世界が沈黙に包まれる。海だけが音を発する世界。

 遅れて思ったのは、ただ。

 ただ、いやだと。行かないで、と。

 頑是ない子供のように君にすがりついて、ただここにいてと、言ってしまいたかった。



 僕は今、どんな顔をしているだろうか。



 潮騒が、耳にうるさい。

 僕も彼女も、口をつぐんだままだった。時ばかりが過ぎていく。ああ、この沈黙は、好きじゃない。

 

 太陽は分厚い雲に隠されていて、何の光も映さない海は灰色に見えた。僕の髪と、同じ色。

 風が吹いた。いつもより塩辛い空気が僕の髪を弄んで、吹き抜けていった。



 分かっていた。一生続かないことぐらい。


 それでも、信じてさえいなかった神を、無性に呪いたくなった。






 それから、彼女がここにくることは、ついぞなかった。











 押しては引く波。陽光に反射して光る水面。潮風が吹く。髪が風に靡いて乱れる。

 昼下がりの、少しだけ温度が上がった砂を蹴って遊ぶ。



 あれから幾年かたった今でも、ここでただ何かを待っている僕はたぶん、とんでもない阿呆だ。


 

あと1話で最後です。

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