自分は自分
ハヤタはショーターが語るユーリルについて、ひどく驚いた。
ショーターは続ける。
「人の持つ直感を利用するんだ。AとBで迷う時、直感でAが良いようにおもったとしよう。すると彼女がすぐに『Aにしなさい』と言う。
恋人に欠点がある事をわかっていて、でも好きで付き合っている。ユーリルは欠点を拾い上げて報告する。恋人が自分に有益なら、今度はそれを拾い上げてくる。
良い事悪い事を、心の奥底で知らぬ間に判断し、決着がついている事を突きつけている、それだけのことなんだよ」
「でも、誰もそんな事…」
「言わないよね。私も広めようとは思わない。だってユーリルが結局は自分の判断で話しているって事だろ」
ショーターは俯いた。
「ずっとね、何処かへ行ってしまいたいと思っていたんだ。
そしてユーリルを何処かへやってしまう事にした。これは私の器の小ささかもしれない」
「なぜです」
「ユーリルは精神体だ。人の心の中で姿を作り出す。でも分離されたら、そのユーリルは何処へ行くのだろう?
消えるのかな?別の誰かにつくのかな?」
「わかりません…」
「分離する時、ユーリルの説得に時間はかからなかった。私は既に決心していたから。ユーリルはその決心を拾い上げて、共に決断した事になっている」
「……」
「彼女はおそらく消えてしまった。それは私の罪だ。彼女を消してしまったのだから」
彼は顔を上げた。
空を見ている。
「でも今になってもユーリルと一緒にいたいとは思わないんだ。あれはね…」
ショーターはハヤタの顔をじっと見つめて言った。
「必要ないんだよ」
その言葉にハヤタの瞳から涙が溢れて止まらない。大粒の涙が後から後から溢れてくる。
不適合者と宣告されてから、初めて感じた安堵感。
ショーターはそっとハヤタの肩に手を置いた。
陽の暖かさと彼の手の温もりに、ハヤタは涙が止まらなかった。
完
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