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悪役令嬢に転生した少女は愉快に生きる!  作者: 踊り狂ったピエロ
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6

玄関前に到着し、王太子を迎える準備を始める。


一応王太子が来るということだけあって両親は私の遠く、かつドアの近くに控えていた。父親と正室の方のミッシェルのお母さんがいる。側室の方の奥さんはいない。あいにく兄貴は出かけているらしくこの場にはいない。が、多分それは建前であって本当は私に会いたくないのだと思う、おそらく側室の方の奥さんもそういう理由だろう。



そして、私はメイドのカノンさんから最終チェックを受けていた。



―身なりよし、顔にも何も付いてない。


緊張してそわそわして待っているとかすかだが遠くの方からガラガラと音が聞こえた。


するとドアが開かれる。


そこを見るとなんともまあ、自己主張の激しい、見事に装飾された馬車があった。その中から王太子とその護衛と思われる人が出てくる。


―ふむ、いつもの、『わたくし』の方だったら間違いなくここで王太子に飛びつく勢いであっちに行くのだが、どうしたものか。

あいにくこっちの『私』の方ではみんな初対面も同然なのだ。そんな人に馴れ馴れしくしたくないし、ぶっちゃけ言えばそんなん無理。

すこし、ここは礼儀正しくして反応を見てみるか。


「ようこそ、本日はおいでくだってありがとうございます王太子殿下」


頭を下げ、言葉を放つ。

ちらっと眼だけを上に向けて様子をうかがってみた。


するとまぁなんということでしょう、とってもびっくりされているではありませんか。

…それとも言葉がおかしかったか?すまんな、国語は毎年平均以下を取っていたもんだから、そこらへんは良く知らんのじゃ。


すると王太子は口を動かした。


「どうしたんだい、ミシェー?まだ熱があるのかい?」


っとまあ、まじで心配されてしまった。(ちなみにミシェーは私の愛称である)

同じ空間に居たここの世界の親にまで心配されている、後ろでなんか言っているからな。

そして王太子のすぐ後ろに居る護衛さん二人は、信じられないものを見た、という顔をしていた、まぁそれは護衛という立場からしてあまり褒められる行為ではないのですぐに顔を引き締めたが。

ひとりはおめめをぱちくりと、もう一人はなんというか、そんなことでは騙されないぞ、とかいう顔をしていた。


あーぁ、ここは前の『わたくし』でいった方がいいかな。

ははは、まあいいさ、私は演じることは好きだからな。


「…ふふっ、冗談ですよアイネ様!どうですか驚きました!?」


ばっ!と勢いよく頭を上げる。


ミッシェルの特徴は、とにかく声がでかいこと。

そして公爵という身分を持ちながら品に欠けている。

―そして『地位と権力の塊』のアイネ・クリーフッド・ラウ・ホスカに惚れているということ。


王太子という地位は権力の塊。それはアイネも承知していた。しかし人はそれしか見ていない、本当の自分を見てくれない、と内心ネガティブに陥っていた。そのときに主人公ちゃんに救われる。


つまりは、私はその虜になっている女の子を演じればいいわけで。

あ、簡単だわ、っと。


そんじゃ、よーい、ドン!!!


「アイネ様!早速いつものお部屋へ案内しますわ!!」


そのセリフを吐きながら、王太子のあたりをちょこまかと動き回る。

王太子は、慣れているのでミッシェルの言うがまま。


部屋に行く途中も話題は絶やさない。

天気がいいですね、とか、そんなんくそどうでもいいことを次々に吐く。

顔に、お金王太子、地位と権力の塊、と思い浮かばせるのを忘れずに。


そうしている間に目的の部屋に到着。


次は私ではなく、護衛に人にドアを開けてもらう。いや、開けさせる。

いやだって、これ、ミッシェルが毎回やらせてたことなんだよ、そして開けろという合図の腕組をするのだ。さすがにここまではやらないだろうって?


ふっ、もうやってるんだなこれが!!





――そして扉が開かれ、私たちはお茶会を開始した。














――ああああああああああぁぁつかれたあああぁぁ。。。。


自分の部屋に戻り、フカフカのベッドにダイブする。

王太子が帰るまで演技をきっちりし通した私の疲労は半端じゃない。

もう着重ねしすぎてゴワゴワするドレスがどうでもよく感じるほどに。


多分、無事にお茶会は終了したと思う。

話したことは主にミッシェルの身近に起こったことぐらいだ。(しかし記憶が戻ったことは言ってない)体調のことは最初らへんに義務的に確認されてそれで終わった。


特に代わり映えのない普通の会話。

しかし、そこには友情も愛情もなかったことが今回で分かった。


そんな思考に陥った私は考え事にふけった。


もう一度どんなキャラクターかをきちんと整理するか。



―アイネ・クリーフッド・ラウ・ホスカ

大人になったら、身長は179センチ。細マッチョというやつで内政の資料整理ばっかりやっている王太子でありながら筋肉はきちんとあるという使用。

髪と目の色はきなり色という色合いで、今日見た感じ髪質もよく透き通っていた。

私はおしゃれに興味がないので、髪型を頑張って細かく言うと、全体的に髪型がぱっつん。髪先が切り揃えられており後ろへ行くごとに毛先が肩から離れて上がっている感じである。


性格は一言でいえば温和で表情は豊かである。

ニコニコと笑うことができ、キャラの性格上、闇もそんなに持っていない。

なんでそんな話になるのかというと、ほかのキャラの闇がとことん深いのである。

石を拾おうとして溺れかける方がマシなくらいだ。


私が思うに、アイネはなんともない無害な人間だ。


――いや、だが一つだけ害があった。

実はこのゲーム〈絆〉とか〈愛〉とかを題材にしているだけあって、最後の最後にとんでも展開をぶち込んできた。

それは私にも超と言っていいほど関係することで。


主人公ちゃんとあるキャラのストーリが終盤に差し掛かった時にそれは起こる。

今回は、せかっくなのでアイネの最高ハッピーエンドを思い出そう。


アイネと主人公ちゃんはいろいろな障害を乗り越え、お互い惹かれあい、とうとうアイネが告白するという場面だ。


『――――そこは海。

砂浜は純白でその上を行き来している水は煌びやかに輝いている。

太陽から降り注ぐ光を受けた、二つの宝石はその美しさを一段と発揮した。


そこには愛し合って見つめあう男女とそれを悲しく見ている女の人がいる。



「こんなに心を奪われたのは初めてだ。僕は君を一生涯、愛する事を誓うよ」』


―ほらここ。

二人はきれいな砂浜で愛を誓いあうんだよ。

そのとき、そんな二人を悲しそうな表情で見ている奴がいるんだ。


お察しの通り、ミッシェル・フォン・グランツェえええええぇぇぇ!!!!!


その直後、ミッシェルは悲しみに溺れ、自分の持っている膨大な魔力を暴走させてしまう。


そうそうこの世界、魔法があるんだよ。まぁ、今はそれは置いといて。


辺りにある水を利用するように、水属性を使用。砂浜は荒れ狂い辺りにあった木々は空に舞い辺りは地獄と化そうとしていた。


しかし、それを止めたのは二人の〈愛〉であった。

最後の選択肢に、[私たちの愛の結晶を放つ]or[怖くて何もできない]が出てくる。

後者を選べば、ノーマルエンドで、前者はざまぁ要素ありのSWEETHAPPYEND。


ミッシェルは甲高い声と共に消えましたとさ。そのあとミッシェルがどうなったとか書かれてなかった。多分消し炭にでもなったと思う。

ある意味主人公ちゃんが怖いと思った瞬間でした。







まぁ、いろいろ言ったけど、問題はそこじゃないんだよなーっと。


―――ぶっちゃけ言って私結婚したくない。

前世の記憶が戻った私はもう前のミッシェルでいれない可能性が高いし、安全に生きていけるとしたらやっぱりこの高い地位に居たほうがいいだろう。


でもなぁ~。


はっきり言ってめんどいんだよ。さっきも言った通り、アイネはいずれこの国の王様になる。

私が妻になれば世継ぎ?というのも必要だろう。

王妃になるんだからセックスしないわけにはいかないだろうし、ほぼ強制でしないという選択肢がない可能性が高い。


で、考えてみろ、その子供世話すんの誰やっちゅー話やん。

いや、私の現状みたいにそれこそメイドさんとかにお世話させればいいんやろうけど、そうはいかんやんっていう話。



はっきり言って


「くそめんどくせー…」


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