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ポケ〇ン始めました。
メ〇ソンの名前はパルコ。
私はベッドにもたれ掛かり、大きく深呼吸をした。抱きかかえられているキレジューバは今もなお抵抗しているようだが、もう絶対離さない。キレジューバが苦しまない程度に腕に力を入れる。
「―で、どうしたんですか?ミッシェル様、あんなにも息が上がってましたけど」
私の息が落ち着いてきたのを見計らってネイビスさんは声をかけてきた。
「いやぁ…実は―」
―私は先ほどあった出来事を話した。
―――――――――――――
話した結果ネイビスさんは少しだけ驚いた後、はぁ、そうだったんですね、と言いたげな表情に戻って作業を再開した。
その行動に一瞬びっくりした私は固まってしまう。
えっ?えっ?結構すごいことしたと思ったんだけど、えっ?
そう思っている私を置いて部屋の掃除をしてくれるネイビスさん。
…もしかしたらこの世界では私がしたことなど微塵も誇れないことなのだろうか。
いやいや、まぁまぁ?
私的にはめっちゃ頑張ったし?良い、うん、良いのだ。
―私は自分で自分を褒める。
何より人からもらったプレゼントを一日で無くすなどという事をしなかったから良かったのである。そう納得しよう。おん。
納得した後、私は自分の作業に入ろうと気合を入れた。
―よーっし、そしたらこのキレジューバをもう一回籠に入れなければ。
その前に窓閉めてこないといけないな。
―私はネイビスさんにキレジューバを渡して窓を閉めに行った。
――――――
(はぁ、それにしても飛んでった時はホントに焦ったな…)
そんなことをしみじみ思いながら、私は窓の取っ手を掴む。
―いや、ほんと。心臓が嫌な感じにバクバクなって。あんな気分はもう二度とごめんだ。
それにしても…。
私は空を飛んでいたキレジューバのあの姿を思い返す。
―白い羽が光を浴びてキラキラと輝いていた。
青々とした空がキレジューバを空へ押し上げるように広がっていた。降り注ぐ太陽を受けてキレジューバも嬉々としていた様子だった。
(…一瞬だけどあの光景には心を奪われた)
そうだ、心を奪われた。
私という鎖を潜り抜けて自分の力で羽ばたいて空を翔けていこうとしたあの光景は。
―?
…飛んで行った?
―?
…出て行った?
「――あれ?」
…。
…そうだ。
……そうだよ。
元々私は、アイネルートに入って、そして、あわよくば怒られない程度に金を使って異世界を満喫しよう、そう考えていた。
そう、考えていたのだ。
―だが、私には、まだ確証はないが膨大な魔力がある。
―公爵家の娘というだけあって、本もある。
―さらにネイビスさん(&まだ会っていない愉快な仲間達)という心強い指導者もいる。
私は魔法を使うことはできた。
ストーリー上ではミッシェルが使っていなかった『無属性魔法』をだ。
他の空間魔法や精霊魔法、召喚など使えるかはわからないが、少なくとも私は火、水、風、雷、闇、光の属性を持っている可能性がある。まだ可能性の話だが。
私がストーリー通りに動けば、16歳で主人公ちゃんとミッシェルは対峙する。
…しかし、よく考えてみろ。
私、アイネルートに入る必要あるか?
もう一度言う、誰かと恋愛する意味あるのか?
…ここには冒険者という職業があるのに??
―いやどう考えてもアイネルートじゃなくて良くない!?!?!?!?!?!?!?
これから修行すれば冒険者いけるやん!?!?!?!?!?!?!?!?
そう!!!!冒険者とは人の依頼をこなしてお金をもったり、チームを組んで魔物を倒したり、倒した魔物を素材や食い物にもしていい!!
つまりうまくいけば職にありつけ金が入り寝床も確保できるという事!!
それはつまりつまりつまり――。
逃げるが勝ち―――
「―あ、ミッシェル様?カノンさんがなんか動物連れてきましたけど」
考えることに集中していた私はネイビスさんの声にビクッとしてしまう。
ネイビスさんは心配そうな顔を向けてきたが笑って誤魔化した。
―今は、動物たちのことに集中しよう。
窓のカギをしっかりと閉め、私はネイビスさんの後に続いた。




