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11/10あげれないので今日あげときます。
―惚れたよなぁ。多分だけど。
うん、まぁそれよりも。今はこの鳥、キレジューバ、だったっけ?さすがにこの籠だけじゃ狭いから私の部屋に新しいおっきい方の籠を置いてあげよう。そしたら少しだけだけど広くなるのではないだろうか。
新しい籠は、私がカノンさん以外のメイドさんに言って今、調達してきてもらっている。
まずはそうだな、できるだけ大きい方がいいと言っておいたので十分に籠を置けるスペースを確保せねば。
よしっ、そしたらまずは荷物の配置アンド移動だな。
んで、部屋の事が終わったら鳥用の部屋を自分で組み立てよう。
そうそう、この時代にもペットを飼う習慣がある、だから同様にペットの籠も当然売られているのだ。そしてそれは組み立て式である。王子からもらったペットの取扱説明書みたいなものを読むと、どうやら値段によるらしいが魔法が施されている籠とかもあるんだとか。
機能は多種多様で、私が頼んだのは温度調節機能がついているもの。
この鳥、キレジューバは適温が24度、湿度は45ぐらいだという。日本の鳥もこんな感じだった気がするが如何せん、これからあっついあっつい夏になる。
私のこの春休みが終わったら私は学校に行かなければならなくなるだろう。周りの子が慣れるまでミッシェルしないといけないだろうし。態度は徐々に変えていくつもりではあるが。そういうことで行きたくないけど絶対に親は許してくれない。できれば魔法の事とか世界探検とかしてみたいけど、でもまぁ異世界の学校にもめちゃくちゃ関心はあったのでそこは上手いこと頑張ろう、私。
っと、そんな話は今は置いておいて。
とりあえず、ネイビスさんに手伝ってもらおう。
「ん?どうしました?ミッシェル様」
ネイビスさん、カモンぬ。
――――――
―よーし、とりあえず部屋の片づけアンド配置、ついでに掃除もしておいた。カノンさんに頼んでおいたプレゼントちゃん達、…言い方が少し嫌だが仕方ない、今はそう呼ばせてもらう。略してプレちゃん達だ。
プレちゃん達のこともある。『ミッシェル』が覚えている限りでは、ウサギのような形をしていたが背中から天使の羽のようなものが生えていたプレちゃんと、王子が何故か爬虫類系をプレちゃんしてきた角が生えてたトカゲと、めっちゃ綺麗なひまわり系の花、あと羊とアルパカをヒュージョンしたのようなフォルムの雪国に生息している頭から黒い角が生えてた何かよく分かんないもふもふしていた動物と、あ、あと、ここ最近だと体に電気を帯びていたモモンガみたいだけれど少ししっぽが長い動物をもらった。
これ以上にまだまだ植物動物関係なく貰っていたけど、ミッシェルもまだ小さい時だったし、そこからは記憶が朧気だ。
そして、カノンさんは私が今日から三年以上前にもらったプレちゃん達は野に返したと言っていた。ので残っているのは精々モモンガもどきちゃんだけだろう。
…私がこういうのもなんだが、野に帰ったみんなは元気に生きてほしいものである。
―すると私の部屋のドアがノックされる。入室の許可をするとメリさんとグラジューノさん、その他のメイドさんが私の部屋の前に居た。
え、多くね?と思ったのも束の間、グラジューノさんをリーダーに私がお願いして買ってきてもらった籠の設置をしてくれるのだという。
―お’’ぉ’’ーん’’。…ここは甘えることにしようかな?
私が命令口調でお願いすると速やかに立て付けを始めてくれた。
しかし私が半ティー半ズボンの格好でいることが珍しいのかメリさんが時々こちらをチラ見していた。が、気にしなーい。私はみんなの邪魔にならない所に移動し、気配を穏やか~にして見ていることしかできないのでむしろ安いものである。ミッシェルは嫌がるだろうが今は考えないでおこう。
―物の数分で立て付けが終わる。キレジューバが今入っている円形状の籠は綺麗にしたいし、自分で後でつけることにしよう。
そしてお礼をメイドさんたちに言って部屋を出て行ってもらった。
―さて、さっきから籠の中でギェギェ言っているキレジューバを大きい方に移そう。
私は、籠の扉を開けた。
そして案の定指を噛まれた。
扉を開けて手を伸ばした時点で威嚇してきていたしこうなることは分かっていた。むしろきちんと威嚇していたのでこのキレジューバは悪くない。手が怪我をするのは残念だが、今はそんなことより、なるべくストレスを与えないように早く移した方がいい。
指に集中しているキレジューバを、あまり驚かさないように後ろに手を伸ばし抱え込むようにして掴んだ。
が―。
「うおっ!?」
キレジューバは羽を広げ抵抗した。
ふわふわとした羽を傷つけいまいとしていたためか腕からどんどん体が抜けていく。
(や、やべぇやべぇ…!)
まだ幼い体を潰さないように力を加減しながらぐっと力を込めたが時はすでに遅く…。
「あっ!!!」
キレジューバは私の腕を抜けて飛ぶ、というか飛んで行った。
―飛んで行った?
「―飛んでった!?」
そう、さきほどメイドさんが来た時に少し室内の温度が上がり暑かったので窓開けていたのだ。小窓だがカラスほどの大きさのキレジューバならば問題はなかったのだろう。キレジューバは現在進行形で空に飛んでいっている。
(つ、捕まえるしかないよな!?これ!!)
―私は瞬時にテレポートの詠唱に入る。ネイビスさんには部屋の家具の設置を頼んでいた。二つ離れている部屋だからこっちの騒動は聞こえていないだろう。
(やるしかないっ、頑張れ私っ!!)
―空に飛んだ。
イメージしたのはキレジューバの前の風景。
そして、テレポートは成功した。が。
(くそっ落ちる!)
距離が少し長かったらしく重力に従って落ちていった。
(もうちょい短くっ)
再度詠唱、そしてキレジューバの前に飛んだ。
(いっけ…!!)
そして足を掴んだ。
体が地面に近くなる。
しかしテレポートしてなんとか寝室に帰ることができた。
「あれミッシェル様?心臓の音がすごいですが…、どうしたんですか…外、出ました?何か匂いが―」
状況の把握をしようとするネイビスさん。それを余所に私は己を落ち着かせる事に精いっぱいだった。
―深呼吸、しーはーはー。
心臓の音がうるさい。
握っているのキレジューバはなおも抵抗しているが、もう絶対離さない。
「―――――し、死ぬかと思った……」
そのまま、後ろにあるベッドに背をついて、私はもう一呼吸したのであった。




