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―それは、やってきたのだ。
少し大きい籠に入れられて連れてこられたのは、一羽の鳥。全身、白い羽毛で覆われており、目の色は透き通る水色。その気高さは私の心を奪った。
―めっちゃ籠の中で暴れてるけど。
私はその籠に近づいて中に居る鳥を覗き込んだ。
周りが輝いているという錯覚を見せるほどその鳥は魅力的だった。
体の形はスズメのように少し丸っこい形をしている。とはいっても小さいわけではなく、大きさは地球に居た時に見ていた成体のカラスほどだろう。
くちばしは毛の色同様、白く透き通っており、まだ小さく、子供だと見てとれた。首周りの毛はまだ大人になりきれていない証拠が残っておりふさふさしていそうである。しっぽの方はというと、インコのような感じで細い羽が数本生えていて、すっと筋が通っていた。
そして最大の特徴は、なんといっても首のあたりから生えている二本の羽だろう。恐らくこんな羽の生え方をしている鳥は日本にはいなかったと思う。
…あれだ、ドラ〇エ8のレテ〇スみたいな。
この鳥、神鳥とまではいかないだろうけど結構良い部類の鳥なのではないだろうか、ここまで人を魅了できるのだから。
―めっちゃ籠の中で暴れてるけど…。
よくファンタジーとかで見る、グリフォンなどのような、足が四本あって背中から翼が生えている式ではなかったが、これはこれで面白い。
―ぶっちゃけ、めっちゃワクワクするね。
私はその籠に指を突っ込もうとした。すると王子の護衛の人に制されてしまった。そして王子が言う。
「あっ、ごめんね、ミシェー、その鳥は見ての通り少し凶暴でね、触ったら君の綺麗な手を噛んでしまうよ、だから触れられないんだ」
まぁ、そうだな。私が触ろうとしたら排除ロボットのごとく噛もうとしてきたからな、こいつ。
「だから…観賞用にと思ってミシェーにプレゼントしたい。その鳥は普段はそんなに気性が荒くないんだ。お腹をいっぱいにしてやったり、籠の中をいつも綺麗にしていたらそんなにうるさくはならないと思うよ」
―そうということなら話は早い。
「あら!そうなのですか?ではきちんとお世話いたしますわ!!」
―きちんとご飯をあげて、部屋をきれいにしてやったらいいのだ。…まあ普通に考えたら自分の部屋が汚くてご飯も寄越されなかったら誰だってブチギレるだろう。ついでに逃げないように配慮しながら部屋の中だけでも籠から出してあげようか、意外と私の部屋の天井は高いしそれなりに羽は広げられるだろう。
―?
それはそうと、どうしたのだろうか?さっき私が返事をした時から王子がこっちを見てくる。目を向けるとなにやらびっくりしているようだった。
…あっ、しくった。
…実は王子からのプレゼントはこれが初めてではないのだ、生きているものも。
しかしミッシェルはいっつもお世話をメイドに任せていた。王子もそれは分かっていたので今のミッシェルの言動に疑問が浮かんだのだろう。
私は焦らず言葉を発する。
「ね、カノン?」と。
すると、私の側で控えていたカノンさんが、慌てながらも「は、はい」と返事をした。
王子達はその返事を聞いて納得がいったような顔をしたので一安心である。
―ふぅ、危ないあぶない。これで王子達には『カノンさんがお世話係り』というのを分からすことができた。しかしカノンさんも本気でそうなると思っているのか私のお茶を継ぎ足しに来た時に隣で気を引き締めているのが伺えた。
大丈夫だよーカノンさん。自分のことだしちゃんとするから。
…こりゃ後で言わなくちゃな。
―よし、そうとなったら、気を引き締めて今日を一日乗り切ろう。
そう心に決心し、プレゼントを護衛の人から受け取って私は自分の席に戻った。
―――
「ここまで送ってくれてありがとうミッシェル、今日も楽しかったよ」
「いえ、王子。わたくしも楽しかったですわ、今日はありがとうございました」
毎度同じな挨拶を済まし、王子は馬車へと向かう。
「あ、そうだミシェー、プレゼント、それでよかったのかい?」
あの後、王子から他のもあるがそれと交換するか、と聞かれた。
しかし私はせっかくのプレゼントだからこの鳥でいいと答えた。プレゼントは何をもらってもうれしいものだから―。
「―はい、とっても…」
「――!」
「とっても嬉しかったですよ…!!」
―この感謝の気持ちを少しでも伝えるために猫は被らず、私はにっこりと笑って、そう言った。




