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目の前には大きくて、なんとも若々しい大きくそびえたつ木があった。
てかもうこれは大樹といっていいほどの大きさだろう。
屋敷の二階のベランダから見たときの木は、そこまで大きく感じなかったが、小さい私が根元に立てばすごく印象が変わるというもの。
そして足元には、若々しく生え、風に揺られながらさわさわという音を出している若草があった。
屋敷の中に居た時には味わえなかった、この開放感が妙に心地がいい。
空気を吸うと、これまた、前世では感じられなかった 『おいしい空気』というものが皮膚や私を構成している細胞で感じられた。
そしてとうとう、異世界を肌身で感じることができた私のテンションはマックスに達して、
野原を翔った。
「-はっははははは!!!」
段々と笑いがこみあげてきて、声を出す。
―今の私にはすべてが輝いて見えた。
「ああああぁ面白い…!なんだこれ…!!」
ここには草や木しかないけれど、心の底から何故だか『楽しい』という気持ちがあふれてくる。
(前世では絶対味わえなかったこの開放感!高揚感!!)
「そしてきらめくこの、目の前に広がる自然!!!!」
私は嬉しさのあまり、大きく手を広げそれを示した。
―過去のことはもう考えたくもないが、今はいいような気がしてきた。
もともと私は前世の方ではあまり自由がなかった。
(親の拘束はひどいし、教育家族だったし、習いたくもないことを何年もやらされていた)
―ああ、だけどだけど、もう、あんなクソな感情は抱かなくていいのか。
(まあ、親も、うちの家系が代々金持ちで、プレッシャーがかかっていたのは分かるんだけど…)
―愛情は、欲しかったなぁ…っと。
―うわくっせ!!!!!!
なんつー事言っちまったんだ!わっちは!!!!!
ふん!!!!!気分転換でもしよう!!!
(テレポートの練習でもすっかな、まだ成功させたの一回だけだし)
――――――
ふと、テレポートの技術が向上しているとき、思った。
時は夕暮れで、もう屋敷に帰らないといけない頃。
そこの大樹の一番上に登って、辺りを見渡したら町が見えるのではないかと。
―やってみる価値はありそうだ。
もし万が一落ちそうになったとしてもテレポートで回避すればいいだろう、詠唱したらもう使えるレベルにはなったし。
私は詠唱を始めた。
すると体の魔力がそれに反応し、働きを始める。
詠唱が終わった私は、一番ここから遠くて、なおかつ私が木の枝が見えるぎりぎりのラインをイメージした。
「第28魔法、『テレポート』!!」
私の体が魔力によって包まれ運ばれていく。
―よし無事に着地することが出来た。
これを後、四回ぐらい繰り返していればいいかな?
そのくらいの距離である。
―一回。
―二回。
―三回。と繰り返していくうちに、私は油断していたんだろう。
四回目に差し掛かり転移したその時、私は足を滑らせてしまった。
(あ、足、滑った…!!!)
「ふんぬっ!!!」
しかし私は、足の甲を木の枝に引っ掛けて耐えた。
鉄棒で鍛えたこの技、今もこのが体に染みついていてよかった。
あまり筋肉がついていないこの体を駆使して私は木の枝によじ登った。
「はーっはーーっ!!きっつ!!」
この体、いいとこの令嬢だけあって体に筋肉がない!!!
筋トレしないとこの体いつか死ぬぞ。
私は木の頂上に到達し、顔を上げた。
――そこには中世ヨーロッパのような建物。
人々の活気があふれ満ちている、最高の場所が見えた。