Zwölf
「ふはぁ!」
河の流れを遮って跳ねる水飛沫を浴びながら、少女はなんとか空気を肺に送ることができた。
対岸をもう一度視界に捉えて、抵抗をかき分けながら進んでいく。一歩間違えば足元をすくわれそうな流れに抗いながら。
冷たさに身体が慣れ始めたころ、少女は水深が浅くなるのを足で感じていた。ほどなくして、少女は木々が鬱蒼と茂る対岸に立っていた。
全身の水滴が気化熱を奪っていく。肩で息をしていた彼女は思わず身震いした。
身体を温め直すために、もとい目的地に向かって、少女は森に入った。
森を横切るように、河に沿って歩いてきた方角へ戻った。少女にとって、そのほうが分かりやすかったのだろう。その途中で目に入った木の実をときおり掴み取っては口に運んだ。そのたびに、なぜだか無性にお腹が空いていった。
やがて、河を渡ろうと決めた辺りまで戻ってきた。ここまで戻ってくれば、今度は森の奥へ向かって歩くだけだ。
少女はもういちど地図を確認しようと懐に手を入れて愕然とした。紙の感触がなくなっていたのだ。慌てて体中をまさぐったが、やはり紙はない。探しに戻ろうにも、陽は傾き始めていて、今からでは間に合いそうもなかった。
仕方なく、森の奥に目をやる。恐る恐る目的地があるであろう方角に足を踏み出した少女は、誘われるようにゆっくりと奥へ入って行った。
※次回は、8月24日に公開予定です。




