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Zehn

 あくる日、小鳥の囀りで目が覚めた少女は眠い目を体を起こす。上体を支える手に昨日よりも力が入っている気がした。

 昨日の手紙を手に取って、もう一度、目的地を確認する。それから、あの脈打つような表紙から異様な空気を放つ本に目をやる。

 そして、力強く頷くと本をひっつかんで小屋を飛び出した。昇りきっていない太陽の光が眩しい。心なしか痛みを感じて、目の上でひさしをつくって逃れようとする。

 少し冷える空気は澄んでいて、少女は緊張をほぐそうとして肺いっぱいに吸い込んだ。初めて呼吸したような慣れない感覚が彼女の身体を襲う。とっさに刺すような痛みを覚えて、治まるまで胸を強く抑えて屈み込んでしまった。

 ようやく冴えた頭で、河の方へ向かって歩き始めた。希望が出てきたからか、昨日までよりもいくらか視界が広がった気がしていた。いつも見慣れているはずの色とりどりの菌類。大小さまざまは食虫植物。ときおり頭上を通り過ぎる鳴き声のした方を見ると、極彩色の尾羽が視界をかすめた。

 河の周りにはマングローブ植物のような樹木が立ち並んでいた。土壌は非常に柔らかく一歩間違えれば足の付け根まで埋まってしまう危険な場所だった。いつもは足元に気を付けながら水を汲んでいたが、今はここを渡って行かなければならない。

 しかし、鬱蒼と茂った植物でによって対岸がどこにあるのか分かりづらかった。本を抱えて泳ぐわけにもいかない。少女は仕方なく、河沿いに渡れるところを探して歩いた。

※次回は、8月10日に公開予定です。

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